中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「産業医」の存在(従業員50人未満の企業)

2021年12月16日 | 情報

最近の当ブログで、労働衛生やストレスチェックの種々の問題点を紹介してきました。
いろいろと検討してみると、やはり、最終的に行きつくところは「産業医」の存在です。

従業員50人以上の事業場では、義務となっている産業医ですが、
当該事業場では、義務感ばかりで、その存在価値を理解していないのではないでしょうか。
それはともかくも、従業員50人未満の企業や、大規模企業の50人未満の事業場において、
産業医が不在による損失は、計り知れないものがあることを理解しましょう。

さて、50人以上の事業場・企業は、産業医の選任義務がありますが、
労働者50人未満の事業場では、安衛法第13条の2の規程により、
産業医の要件を備えた医師等に労働者の健康管理を行わせることが努力義務となっています。

『基発第566号 平成8年9月13日
2 産業医の選任義務のない事業場の労働者の健康管理等(第13条の2関係)
(1) 本条は、すべての事業場において労働者の健康の確保が図られるためには、
産業医の選任義務のない事業場においても産業保健サービスが提供される必要があることから、
事業者は、これらの事業場については、当該事業場の状況に応じ、
必要な場合に、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師
その他労働省令で定める者に、労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう
努めなければならないものとしたものであること。

(2) 「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師」には、
第13条第2項の労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について
労働省令で定める要件を備える者のほか、産業医学振興財団が都道府県医師会に
委託して実施している産業医基本研修の修了者、産業医として選任された経験を
有する者等が含まれるものであること。』

従って、現実的には、もし、産業医の見解や指導が必要になった場合は、
おおむね監督署管轄区域に設置されている、地域産業保健センター(地さんぽ)を
頼ることになります。当ブログでも、再三紹介してきました。

しかし、これには大きな問題点があります。地域産保には、産業医(医師)が
常駐しているわけではないのです。
ですから、地域産保に連絡しても、すぐに産業医を紹介してもらえるわけではありません。
例えば、二次予防対策は「待ったなし」ですから、これでは役に立たないのですね。

また、安衛法では、脳・心臓疾患の発症を予防するため、長時間にわたる労働により
疲労の蓄積した労働者に対して労働者の申出により、
事業者は医師による面接指導を実施することが義務づけられています。

面接指導は、労働者数50人以上の事業場については平成18年4月1日より義務づけられていますが、
労働者数50人未満の小規模事業場においても、平成20年4月1日より適用されています。
ですから、地域産業保健センターを活用して、面接指導又は面接指導に準ずる必要な措置を
講じなければなりません。

以上のことより、労働者50人未満の事業場でも産業医の選任・委嘱は、
従業員に長時間労働を課している以上、マストの要件になるはずです。

さて、以下に「小規模事業場産業医活動助成金」を紹介します。活用してください。

https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/sanpojoseikin/R3/shokibo_sangyoui/seIP_josei_tebiki_R3.pdf

令和 3 年度版「小規模事業場産業医活動助成金」【産業医コース】の手引

小規模事業場が、産業医の要件を備えた医師と職場巡視、健康診断異常所見者に関する意見聴取、
保健指導等、産業医活動の全部又は一部を実施する契約を締結し、
実際に産業医活動が行われた場合に、費用の助成を受けることができる制度です。

従業員の健康管理等のために、是非ご活用ください。
この助成金は、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として行われています。

用語の説明
■事業場
昭和 47 年 9 月 18 日付け発基第 91 号通達「労働安全衛生法の施行について」の
第2の3事業場の範囲で規定する事業場の適用範囲をいう。
■産業医
労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)第 13 条第2項の要件を備えた医師をいう。
■小規模事業場
常時 50 人未満の労働者を使用する事業場をいう。(「常時 50 人未満の労働者」とは、
届出時の人数とする。)
■事業者
労働安全衛生法第2条第1項第3号に規定されている
「事業を行う者で、労働者を使用するもの」をいう

4 助成対象
「産業医活動に係る契約」に基づく実施額

5 助成金額
6 か月以上の継続的な産業医活動契約に基づき実施した産業医活動の費用に対して、
6 か月当たり 100,000 円を上限に支給します。
ただし、1 事業場当たり将来にわたり2回限り助成されます。

6 取組の実施期間
令和2年 11 月~令和4年 3 月

※ 継続する 6 か月の産業医活動実施期間(助成金の支給対象となる6か月間)の初月が
令和2年 11 月以降、最終月が令和4年 3 月以前である必要があります。

 

 

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