中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「腐ったミカン」発言

2020年08月31日 | 情報

社員研修は、どの企業においても日常的に行われていますが、
一歩誤ると、研修のつもりが「研修」ではなくなってしまいます。

「腐ったミカン」発言 追手門学院の職員ら、提訴へ
20.8.20
 朝日

 

職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと人格を否定する言葉で執拗(しつよう)に
退職を迫ったのは違法だとして、学校法人追手門学院(大阪)の男性職員ら3人が近く、
学院理事長や研修を請け負ったコンサルタント会社などに総額約2200万円の
損害賠償などを求める訴えを起こす。

原告代理人の谷真介弁護士によると、3人が求めるのは、
それぞれ慰謝料500万円を含む1564万~998万円の損害賠償など。
うち1人は「休職期間満了で解雇されたのは不当」として、職員の地位確認も求める。

原告側の訴えによると、学院は20168月、「求められる職員像に達していない」として、
3人を含む18人に「自律的キャリア形成研修」(5日間、計40時間)を受講させた。

研修はコンサル会社・ブレインアカデミー(東京)が請け負ったが、
学院側は研修の冒頭、「ブレインアカデミーとの間で研修内容を精査した」と説明。
そのうえで、ブレインアカデミーの講師が「173月末で学院から退いていただきたい」と述べたとされる。

講師はさらに、「あなたのように腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない。
まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」
「あなたにはもうチャンスがない」などと人間性を否定する言動で繰り返し退職を迫った、という。

その後も3人は学院幹部との面談で退職を迫られ、うつ病などを発症
悪化させ、休職を余儀なくされたと主張。
うち1人は川原俊明理事長同席の面談で「退職勧奨をやめていただきたい」と言うと、
川原理事長から「とことん変わってくれへんかったらいらんよ」
「もう今後、退職勧奨をやめてください? あほなこと言わんといてくれ」と告げられたという。

男性はその後の面談で、「視野が狭い」「思考が浅く幼い」などと
書かれた「退職勧告書」を読み上げられた。


19
6月、研修がパワーハラスメントにあたる可能性があると朝日新聞が報じた後、
学院はホームページに「外部講師の発言とはいえ、報道された不適切な発言は決してあってはならないと
認識し、研修を委託した本学院の責任を強く感じております」と掲載した。

学院は今回の取材に、「厳粛に受け止め、二度とこのような事態が起こらぬよう努め、
学校運営全般についても問題点がないか厳しく点検して進んでまいります」と文書で回答。
後日、川原理事長の発言に関する取材には、「個別の案件については、
係争の可能性があることから回答は差し控えさせていただきます」と文書で回答を寄せた。

ブレインアカデミーは文書で「コメントを差し控えさせていただきます」と答えた。

 

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28日(金)は、休載です

2020年08月27日 | 情報

28日(金)は、出張しますので、当ブログは休載です。
再開は、31日(月)です。よろしくお願いします。

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休職・復職問題Q&A①

2020年08月27日 | 情報

今日から、休職・復職問題Q&Aを再開します。
新型コロナ問題が、休職・復職問題を一層複雑化しているように感じます。

 

.現在、嘱託の産業医がいます。その産業医の専門は内科だそうです。
産業医の先生は、精神科分野のことはよくわからないと云います。
精神科専門医の産業医を新たに雇うべきでしょうか?
従業員80人の製造業で、安全衛生は重要と考えています。

 

A.精神科専門医の産業医を委嘱することは「理想」です。
しかし、既に内科の産業医がいるのですから、大変に失礼なことですが、
企業規模から考えてそこまで求めることはないと考えます。

一方で、小職が入手した情報では、産業医が「精神科分野のことは、よくわからない」というのは、
無理もないことだそうです。
ですから、そのようなことを云うのは産業医として問題があるのではと考えてはいけません。
むしろ、分からないことは分からないとはっきり言ってもらえる産業医は、
「優秀で頼れる」産業医と理解して下さい。

それに、法令上、産業医は、診療をするわけではありません。
訪れる従業員の話を聞き、必要であれば然るべき診療機関につなぐことが産業医の役割であることを
理解することが大切です。

 

また、御社クラスの企業であれば、精神科分野の問題が頻発することは、
そうはないでしょう(頻発するようでしたら大問題ですが)
ですから、そういう意味でも精神科専門医の産業医は不要でしょう。
むしろ精神科分野の問題がおきたら、現在委嘱している産業医に、
精神科専門の臨床医を紹介してもらうとよいでしょう。
産業医や臨床医はそれぞれに出身大学やこれまでの勤務先等でできた独自のネットワークを
持っているものです。
こうすることが懸案を速やかに解決できますし、コストも安価に収まることでしょう。

 

最後に、御社の産業保健体制を強化するために、いつでも連絡・相談できる精神科医、外科医を
はじめとする「複数」の専門医のリストをつくることをお勧めします。
問題が発生した、相談したいことができた等の事案に即応できる体制を整えておけば、
御社の産業医をはじめとする安全衛生体制は万全でしょう。

 

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大切なキーワード

2020年08月26日 | 情報

メンタルヘルス対策を進めるうえで、大切なキーワードがいくつかありますので、紹介します。
なお、小職として残念に思うことは、全部「輸入品」であることです。

1.ポジティブ・メンタルヘルス
ポジティブメンタルヘルスとは、働くすべての人が心もからだも健康で、いきいきと充実して働き、
組織を活性化させる取組みです。そして、実践するためは3つの取組みがあります。
① 社員一人ひとりの業務状況・健康状態について理解し、改善するための取組み
② 信頼関係を構築し、組織を高めるための社内コミュニケーションを向上させるための取組み
③ 社員自らやりがいを感じ、仕事から活力を得られる環境づくりを進める取組み

ポジティブ・メンタルヘルスの考え方の1つに「ワーク・エンゲイジメント」があります。

2.ワークエンゲイジメント

これは、ストレスを減らすだけでなく、労働者一人一人の個性を生かし、強みを伸ばし、
意欲を活性化するなど、より活き活きと自律的・効率的に働くことを目的とする
ポジティブなメンタルヘルス対策です。
具体的には、「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、
「仕事から活力を得て生き生きとしている」(活力)の3つがそろった状態をいいます。
ワーク・エンゲイジメントが高まると、働く人の幸福や生活の質が向上すること、
また仕事の生産性が上がることが明らかになっています。

中小規模の企業では、人員に余力がなく、少ない人数で最大の成果を生み出さなければなりません。
そのために、病気にならないだけではなく、その一歩先へ進めるメンタルヘルス対策が重要です。

3.アサーション

アサーションとは、「自分と相手を大切にする表現技法」を意味します。
「NO」と言えない人は、自分よりも他者を常に優先して考える「非主張的」な自己表現をしています。
これを、自分を優先しつつ他者への配慮を忘れない「アサーティブ」な自己表現へ変えていくのが、
アサーションの考え方です。

①攻撃的…他者のことを配慮せず、自分のことだけを主張するタイプ。
  表現の仕方が攻撃的で周囲を不快にしてしまう可能性が高い。
②非主張的…自分よりも他者を常に優先し、自分のことを後回しにするタイプ。
  自分の気持ちや考えを表現できずに、ストレスや負担を溜め込みやすい。
③アサーティブ…自分のことをまず考えるが、他者への配慮もするタイプ。
  気持ちを正直にその場にふさわしい方法で伝えることで、円滑なコミュニケーションにつながる。

実践するために、アサーティブ行動トレーニングがあります。
これは、自己否定的な性格のために自己表現がうまくできない人や
逆に自己主張が強すぎて相手との関係に問題を起こしてしまう言動をする人に、
自己表現や対人関係改善の能力を向上させ、自分の気持ちも相手の気持ちも尊重した上で
自分の気持ちや考えを適切に表現できるようにするものです。

4.コーピング

ストレスを回避する行動を含めて、ストレスへの対処法のことをコーピングといいます。
人によって何がストレスの原因になるかは様々なのですが、コーピングのあり方も様々です。
たとえば、問題解決のために何かを実行する、計画する、別の活動を抑制する、時期がくるまで待つ、
人の援助を求める、積極的な再解釈を行うなどの前向きなコーピングがあります。
一方で、感情の発散、否認、酒などもコーピングに含まれます。
自分でストレスコーピングをより健康的なものにしていく方法として、「自律訓練法」があります。

5.ヘルスリテラシー 

ヘルスリテラシーとは、健康情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力をいいます。
これらによって、日常生活におけるヘルスケア、疾病予防、ヘルスプロモーションについて
判断したり意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができます。
また、情報を「入手」「理解」「評価」「活用」するという4つの力を、
情報リテラシーとも呼ぶことができます。

6.ダイバーシティ

多様な人材を積極的に活用しようという考え方のことです。
もとは、社会的マイノリティの就業機会拡大を意図して使われることが多かったのですが、
現在は性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、
広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントについていいます。
企業がダイバーシティを重視する背景には、有能な人材の発掘、斬新なアイデアの喚起、
社会の多様なニーズへの対応といった狙いがあります。

7.EQ(Emotional Intelligence Quotient)

人の態度や物言いなどのあらゆる言動は、
その場、その場で自分自身の感情の状態に大きく左右されているのです。
従って、このことを意識してうまく利用することができるのは一つの能力なのですが、
大切なのは、この能力は誰にも備わっているものなのです。
ですから、適切な訓練によって、発揮しようとする能力を高めることができます。

8.メンタル タフネス

日本語では、ストレス耐性と訳されています。
プレッシャーやストレスが高まった状態でも、良いパフォーマンスを出せる能力のことです。
アスリートやスポーツ選手と同様に、ビジネスの世界でも
プレッシャーやストレスが高まった状態でもパフォーマンスを出せるようにしなければなりません。

9.レジリエンス

ストレスのある状況や逆境でも、うまく適応し、精神的健康を維持し、
回復へと導く能力、特性のことをいいます。
ス トレスを避けることができない社会において、ストレス状況に正面から向き合い、対処し、
乗り越えていくことができる能力を身に着けることが、成長や成功の基盤となります。

 

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来年3月に0.1%引き上げ

2020年08月25日 | 情報

新型コロナウィルスの影響で、障害のある人の雇用環境が厳しくなっています。
当初計画より、2か月遅れですが、障害者の雇用率が、来年3月に0.1%引き上げられることになりました。
障害のある人には、朗報ですが、一方で対応しなければならない企業側には、負担が増えますが、
一層の努力と工夫をお願いします。

 

障害者雇用率 新型コロナで当初案より遅く 来年3月引き上げへ

2020821日 NHK

 

障害のある人の雇用を増やすために、企業などに義務づけられた障害者の雇用率が、
来年3月に0.1%引き上げられることになりました。厚生労働省の審議会は、
新型コロナウイルスの影響を踏まえ引き上げを、当初の案よりも2か月遅らせることを決めました。

障害者雇用促進法では現在、従業員45.5人以上の企業には2.2%、
職員40人以上の国の機関や地方自治体には2.5%の障害者の雇用を義務づけています。

厚生労働省の審議会では障害のある人の雇用を増やすために、
来年3月に雇用率を現在より0.1%引き上げる案を21日、了承しました。

当初の案では来年1月からとしていましたが、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、
引き上げを2か月遅らせることにしました。

来年3月からの障害者の法定雇用率は企業では2.3%、国の機関や地方自治体では2.6%となります。

厚生労働省によりますと、全国の企業で働く障害者の数は去年6月の時点で56万人余りにのぼり、
これまでで最も多くなっていますが、法定雇用率を達成している企業は48%にとどまっています。

また、新型コロナウイルスの影響で解雇された障害者は、先月までに1300人余りに上っていて、
厚生労働省は再就職や雇用率を達成できるよう、企業の支援などを検討しています。

 

 98回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)

令和2年8月21

(照会先)職業安定局障害者雇用対策課

 

資料1 障害者雇用率の0.1%引上げの時期について(案)

https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000661186.pdf

障害者雇用率

0.1%引上げに向けた今後の対応方針(案)

2頁;障害者雇用率 0.1 %引上げの時期は、原案の令和3年1月1日を後ろ倒し、
令和 3 年3月1日 とする

 

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