前回のマスコミ報道にもあるようにストレスチェック制度には、いろいろと問題点があります。
しかし、多々の問題点があるものの、一方で、制度には多くのメリットもありますので、
前向きな企業や、メンタルヘルス上の問題点を抱えている50人未満の事業場においては、
ストレスチェックの実施を推奨します。
そこで、以下にストレスチェック実施の注意点(安衛法第66条の10、安衛則第52条の9~19)を紹介します。
◎実施から実施後の事後処理まで、時間がかかりますのでスピーディに進めることが必要です。
油断すると、すぐ翌年の実施時期になってしまいます。
・ストレスチェック実施(則52条の9)➡「遅滞なく」(結果出力後速やかに)➡
・本人に結果通知(則52条の12)➡「遅滞なく」(おおむね1か月以内)➡
・本人から面接指導の申出(則52条の16)➡「遅滞なく」(おおむね1か月以内)➡
・医師による面接指導の実施(則52条の16)➡「遅滞なく」(おおむね1か月以内)➡
・医師からの意見聴取(則52条の19)
※緊急に就業上の措置を講ずべき必要がある場合には、可能な限り速やかに
・事後措置の実施(法66条の10)
※「改正安衛法に基づくストレスチェック制度について」を参照。参考通達;基発0501第3号(H27.4.1)
◎ストレスチェックの実施には、関与できる、または、関与できない人がいます。
・実施者(則52条の10、ストレスチェックの実施、面接指導の実施者です)
資格者は、①医師、②保健師、③研修を終了した看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理士
※個人情報を取り扱うため、人事権のある者はなれない。
・実施事務従事者((則52条の10、調査票の回収、データ入力等、実施者の補助)
※個人情報を取り扱うため、人事権のある者はなれない。
・ストレスチェック制度担当者(ストレスチェック指針、実施計画の立案、実施の進度管理)
※個人情報を取り扱わないので、人事権のある者でもなれる。主に人事労務部門の上級管理職が適当でしょう。
なお、小職としては、人事労務部門の上級管理職が責任をとることとすれば、実務は、実施者以外の業務を、
パソコンの扱いに秀でていて、やる気のある若手社員に任せる方法をお勧めします。
当該社員に相当の手当てを支給しても、外部に委託するより安価で短期間に完結させることが可能でしょう。
◎その他注意事項
なお、50人未満の事業場ですから、あくまでも努力義務です。できる範囲内でOKです。
(1) ストレスチェックの目的は、労働者の気づきの促進が目的です。
(2) ストレスチェックは、「1年以内に1回」の実施義務があります。
労働者にとってストレスチェックの受検は義務ではありません。
全ての労働者が受検することが望ましいとされています。
なお、定期健康診断は、全労働者に受診の義務があります。
(3) 制度が効果的に運用されるためには、労働者が自身の状況をありのままに答えることが重要です。
安心して答えられる環境とするためにも、労働者本人の同意がない限り、
事業者へのストレスチェック結果の提供は禁止されています。
(4) 面接の申出は、労働者の意向が尊重されます。申出を理由とする不利益取扱は禁止されています。
◎検査結果の集団分析(則52条の14、50人以上の事業場においても努力義務です)
・一定以上の規模の集団ごとに集計、分析するように努めます(検査指針)。
10人未満の集団の場合、個人が特定される恐れがあるので、分析できないことに留意する必要があります。
・分析の結果を勘案して、適切な措置を講じるように努めます。職場環境改善の手順です。
「判定図」から職場の仕事上のストレスの特徴を読み取る
➡職場巡視を実施して、実際の職場における問題点を調査する
➡職場の上司や労働者にヒアリングを行う
➡具体的な問題点のリストを作成する
➡改善対策の計画を立てる
◎ストレスチェック結果の記録と結果報告
(1)検査の結果の保存(則52条の11)
①労働者の同意がない場合⇒保存の事務が適切に行われるよう必要な措置
②労働者の同意がある場合⇒記録し、5年間保存(安衛則52条の13)
(2)面接指導の結果の保存(安衛則52条の18)
・記録し5年間保存
(3)検査及び面接指導結果の報告(安衛則52条の21)
1年以内ごとに1回検査結果報告を労働基準監督署に報告
※報告書中の
・「在籍労働者」とは、「ストレスチェック対象労働者」を云う
1年以上使用かつ週所定労働時間が通常労働者の3/4以上➡健康診断と同じ
・「報告対象事業場」とは、「ストレスチェック実施義務事業場」を云う
法第13条第1項の事業場(産業医選任義務事業場)(安衛法附則)➡日雇い労働者、パートタイマー等の
臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数(S47.9.18基発第602号)
◎(基本情報)
〇「ストレスチェック指針」(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに
面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000346613.pdf
〇ストレスチェック制度に関する法令
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000544659.pdf
〇労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(改訂 令和3年2月)
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf