中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

毎日4000歩と速歩5分

2019年11月29日 | 情報

毎日のウォーキング4000歩と速歩5分でうつ病予防ができます。
青柳幸利氏の研究によるエビデンスです。

青柳先生は、群馬県中之条町で65歳以上の高齢者を対象に15年間調査し、
運動、身体活動、食生活、睡眠時間、労働時間、病気の有無、体調などを調査し、
さらに機器を使ってその中の500人の平均歩数(1日)と中強度の活動(速歩き)の時間と発病・有病の関係を調べ、
上述のような結論を得たそうです。

 1日あたりの「歩数」と「中強度の活動(速歩き)時間」と「予防(改善)できる病気・病態」

歩数 2000歩  速歩き時間   0分 ねたきり
   4000歩       5分 うつ病
   5000歩       7.5分 要支援・要介護、認知症(血管症認知症、アルツハイマー症)、
                 心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
   7000歩       15分  がん(結腸がん、直腸がん、肺がん、乳がん、子宮内膜がん)、動脈硬化、骨粗しょう症、骨折
   7500歩       17.5分 筋減少症、体力の低下(特に75歳以上の下肢筋力や歩行速度)
   8000歩       20分 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム(75歳以上の場合)
   9000歩       25分 高血圧(正常高値血圧)、高血糖
   10000歩       30分      メタボリックシンドローム(75歳以下の場合)  
   12000歩       40分  肥満          

青柳幸利氏
東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長。医学博士。
群馬県中之条町生まれ。筑波大学卒業。カナダのトロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。
著書『やってはいけないウオーキング』(SB新書)が3カ月で7万部を超えるベストセラーに。「

 

 

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繋がらない権利(続編)

2019年11月28日 | 情報

弁護士・志賀剛一氏の記事を転載します。

休日や深夜に上司からメール これってパワハラなの
11/10(日) 日経

私の上司であるAさんは休日だろうが深夜だろうが、
何か思いつくとすぐに部下複数人を宛先にした一斉送信メールやグループチャットを送ってきます。
すぐに対応する必要のないことばかり送られてきますが、何人かの社員は「忠誠心」からか、直ちに返信しています。
以前、私が何も返事を返さなかったところ、「なぜ無視した」と叱責されたことがあり、休日でも心の休まるときがありません。
本当に緊急事態ならやむをえないとも思えるのですが、こういう行為はパワハラではないのでしょうか。

■いつでもどこでも連絡が取れる環境

日本の古い映画やドラマを観賞していると、深夜、自宅の黒電話が大きな音で鳴り、
妻が「あなた、〇〇さんからお電話です」などと取り次ぎ、
ガウンを着た重役っぽい人が受話器を受け取って仕事の会話をするようなシーンがしばしば見受けられます。
今の時代、深夜や休日に自宅の固定電話に業務の電話がかかってくることはほとんどないでしょうが、
インターネットやスマートフォンの普及に伴い、利便さの半面、いつでもどこでも連絡がとれる環境になってしまい、
自宅どころか旅行やレジャーの最中でも業務の連絡をすることが可能になってしまっています。
これをうまく活用すれば、働き方改革の一環としてテレワークなどを推進することにもなるのですが、
業務時間内は会社で、それ以外は電話やメールで対応ということになると、まさに24時間365日が「ワーク」になってしまいます。
なお、警察などの捜査機関や鉄道・電力などのインフラ系、マスコミなど職種や業種によっては深夜や休日の対応が
不可欠な場合もあると思われますので、ここではあくまでも標準的な事務職を念頭に置いて述べていくことにします。

■時間外労働、会社は残業代を支払う義務

労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を「労働時間」といいます。
電話、メール、グループチャットなどを用いて勤務時間外に連絡をし(以下「時間外メール」といいます。)、
何らかの業務指示をすれば、それは上司の指揮命令に置かれていることになり、その対応に要した時間は「労働時間」となります。
契約上の根拠なく時間外労働をさせれば違法となりますし、時間外労働をさせた時間について会社は残業代を支払う義務が発生します。
これが深夜や休日であれば、通常の労働形態であれば労働基準法上、
時間外労働や休日出勤になり、所定の割増賃金を支払う必要がでてきます。
しかし、こうした時間外メールへの対応に割増賃金が支払われているという話はほとんど聞いたことがありません。
上司は「返信や対応を強要したわけではない」というかもしれませんが、
時間外メールが常態化し、労働者もこれに対応し続けてきたということであるならば、
それは企業側が黙認したものとして労働時間になりうる可能性があります。

■労働者の就業環境を害しているといえるか

 また、終業時刻後や休日のメールなどは「パワハラ」に該当する可能性があります。
今年5月に成立した「改正労働施策総合推進法」(通称パワハラ防止法)では、
パワハラについて(1)優越的な関係を背景とした言動(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3)労働者の就業環境が害されるもの――と定義づけています。
上司と部下という関係で、緊急性を要しない用件であるにもかかわらず、
休日や深夜に業務を行わせることにより就業環境が害されているといえる場合、パワハラになりえます。
このコラムのCase:39「机をたたきながら怒鳴る 『パワハラ』上司を訴えたい」でも紹介した6類型のうち、
(4)過大な要求および(6)個の侵害に該当するものと思われます。
時間外メールや電話により業務時間外に上司からの叱責や顧客から受けたクレームが、
過労死などの原因の一つになることが多いとの指摘もあり、実は深刻な問題なのです。
もちろん、時間外メールがすべてパワハラというわけではありません、
メールやグループチャットの送信の頻度や内容次第で、パワハラとみなされない場合もあります。

■海外は「つながらない権利」が法律で保護

日本の場合、便利さにかこつけて何となく曖昧なまま時間外メールが利用されてきましたが、
海外ではすでに「つながらない権利」(right to disconnect)と呼ばれ、
勤務時間外に仕事関連の連絡を絶つ権利が法律で保護され始めています。
フランスでは従業員50人以上の会社に対し、勤務時間外の従業員の完全ログオフ権(メールなどのアクセスを遮断する権利)を
盛り込んだ定款の策定を企業側に義務付け、イタリアでも同種の法律が制定されています。
また、日本でも、つながらない権利を採り入れている企業も出始めました。
とはいっても、そこまでの日本企業はまだ多くはありません。
このため、個人でできる対応としては、割増賃金の請求ということになります。
企業がこれを拒否するのであれば、それは「業務指示」ではないことになるので、時間外メールは無視して構わないものと解されます。

■時間外メール問題、企業がしっかり認識を

そして、前述したパワハラ防止法では、従業員から企業がパワハラの相談を受けた場合には、
適切に対応できるような体制などを整えておかなければならないこと、
パワハラについて相談した従業員への不利益な取り扱いを禁止していることなどを定めており、
多くの企業がパワハラ相談窓口を設置するはずですので、
これを活用し、パワハラに該当する時間外メールの存在を企業側に認識してもらうことが必要です。
もっとも、私のような者が言葉で言うのは簡単ですが、現場の皆さんにとって、上司から来た時間外メールを無視できるか、
それを窓口に持ち込んで相談できるのか、相談したら即対応してもらえるのか――。
現実論としてなかなか難しい問題であることは理解しているつもりです。
しかし、政府の推進する働き方改革における重要な柱が長時間労働の是正やパワハラ防止であり、
時間外メールもまさにその問題であることを企業側がしっかり認識してもらう必要があります。

志賀剛一 志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。
2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。
難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。
趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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(参考)復職問題Q&A④

2019年11月27日 | 情報

Q;会社の総務のものです。当社にメンタル不調で休職している従業員がおり、
先日主治医から復職の許可が下りたとの連絡がきました。
しかし、復職は初めてのケースで、復職に関する規定も定めておらず、どのように進めたらよいかわからず混乱しています。
従業員の復職に向けて、会社が行うべきことを教えてください。

A;前提を確認しておきましょう。
・「休職している」とあるように、御社には休職規程がある。
・御社は、産業医と契約し、法定業務を委嘱している。

「先日主治医から復職の許可が下りたとの連絡がきました。」という休職者からの連絡だけでは、復職させることはできません。
休職している従業員を復職させるかどうかの判断は、会社の権限だからです。

1.当該従業員が、復職を希望するのであれば、①復職を可とする「診断書」②当該従業員が認めた「復職願い」
③直近2週間の生活記録表(1日の起床、就寝、食事等の時刻等生活実態を記入したもの)を提出させます。

2.産業医、人事労務部門、健康管理部門等で、3点の書類を精査します。
高度な個人情報を取り扱いますので、限られた関係者で対処します。
診療上の不明点は、産業医より主治医に書面で問い合わせ、書面で回答をもらいます。

3.主治医からの追加情報を加味して、復職の可否を決定します。
復職を認める場合には、加えて、職場復帰プランを策定・決定します。

4.人事労務部門は、当該労働者に対し、復職を認める旨、書面をもって案内します。

5.復職を認めない場合には、争いになっても問題とならないように理由を明確にしておきます。
そして当該従業員に速やかに案内します。

以下、注意事項を列記します。
1. 会社が主治医に面談を希望する場合は、当該労働者と同行しましょう、
当該労働者の委任状では、聞き出せない情報もあり得るでしょう。なお、面談には、謝礼金が必要です。

2. ご質問の内容から類推しますと、当該従業員が休職中に、御社が当該従業員の主治医に接触したことはないようです。
従って、主治医の診断書は、会社にとって極めて不満な、受け入れ難い内容でしょう。
今後は、このようなことが起きないように対策を講じることが必要です。

3. 御社には、職場復帰プログラムが規定されていないようですが、復職後にいきなり原職に就かせることは難しいでしょう。
上述した職場復帰プランには、いわゆる「試し出勤、試し出社」レベルからのプラン設計が必要でしょう。

4. または、休職期間に余裕があるのであれば、復職可の条件付きで、
復職前の「試し出勤、試し出社」を命じることも検討してください。

今回のシリーズは、これで終了です。

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(参考)復職問題Q&A③

2019年11月26日 | 情報

Q;先日、部下が職場復帰しました。復職前に総務担当と私、本人で話し合い、当面は短時間勤務で
徐々に戻していくこととしましたが、そのほかは特に決めておりません。
通常勤務に戻すタイミングや必要な社内手続きがあれば教えてください。

A;「復職前に総務担当と私、本人で話し合い」とありました。
即ち、当然に参画しなければならない産業医がいないということは、御社は、従業員50人未満の事業場なのですね。
しかし、通常50人未満の事業場であれば、「総務担当と私、本人で話し合い」というようなことが「復職前」に行われたこと自体、
評価されるべきと考えます。御社の真摯な対応に敬服します。
そこでは、「当面は短時間勤務で 徐々に戻していくこととした」とあります。立派な判断であると評価いたします。

さて、今後のことですが、産業医がいない、事業場の体力にも限界があるということを考慮しなければなりません。
通常であれば、職場復帰プログラムが就業規則に規定されていて、そのプログラムに従って職場復帰プランを
作成するところですが、とてもそのようなことは求めてもできませんし、求めるべきでもありません。

ご質問を拝見すると、業務内容は休職前と同じであると、受け取れます。
ただし、勤務時間だけは通常より短いということですね。
どの程度の休職期間であったのか定かではありませんが、復職してから通常勤務までに戻るには、
休職期間と同期間が必要と云われています。
本人も納得している処置ですから、これを目標にして短時間勤務を続けてもらいましょう。
もし、この短時間業務が辛いようであれば、さらに業務内容を軽減させる措置も検討しましょう。
疾患の再発を防ぐことを第一義としましょう。

さて、ご質問の「通常勤務に戻すタイミング」です。上司である貴職がリーダー役となっていただき、
週1回、または随時、3人でミーティングを行い、通常勤務に戻すタイミングを話し合いましょう。
また、復職後も主治医の診断を受けているのですから、必要に応じて主治医の意見を求めることも必要でしょう。
さらに、地域の医師会単位に地域産業保健センターがありますので、産業医の意見を求めることもできます。
そして、これらの話し合いの中から、通常勤務に戻るタイミングが自然に見つかることと考えます。
必要な社内手続きは、小規模事業場には必要はありません。口頭による対処で十分と考えます。
ただし、今後のために、記録だけは、出来るだけ丁寧に残しておいてください。

大規模事業場のようなシステマティックな対応は出来ませんが、中小規模の事業場でも、
誠意と熱意があれば、目的を達することは可能です。

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過労自殺の再発を防げなかった

2019年11月25日 | 情報

「労務管理は適切だったと考えている」「関係会社の働き方改革に対する指導や支援は適切に実施してきた」
適切ではなかったから起きた事案です。
マスコミ発表にも、社内態勢や社内風土の影響があるように受け止めています。

三菱電機、子会社でも過労自殺 時間外月100時間超も
11/22 朝日

大手電機メーカー、三菱電機の子会社の男性社員が2017年末に過労自殺し、今年10月に労災認定されたことがわかった。
三菱電機では14~17年に男性社員5人が長時間労働が原因で相次いで労災認定され、
うち2人が過労自殺だった
ことが昨年9月の朝日新聞の報道で明らかになっている。
16年度から「働き方改革」を掲げて長時間労働を抑制する方針を打ち出し、子会社への指導も進めていたが、
過労自殺の再発を防げなかった。

複数の関係者によると、過労自殺したのは、半導体製品をつくる三菱電機のパワーデバイス製作所(福岡市)内に本社を置く子会社、
メルコセミコンダクタエンジニアリングの40代(当時)の技術者。
別の子会社メルコパワーデバイスに出向後、豊岡工場(兵庫県豊岡市)で勤務していた15年4月~16年11月の間に
長時間労働による精神障害を発症した。時間外労働が100時間を超えた月もあった。
豊岡工場からメルコパワーデバイスの福岡市の職場に移った後の17年12月に自殺し、
遺族側は長時間労働が原因だとして昨年7月に労災を申請。但馬労働基準監督署(豊岡市)が今年10月4日付で認定した。

メルコパワーは「労務管理は適切だったと考えているが、労災認定は重く受け止めている」(業務部)。
三菱電機は「関係会社の働き方改革に対する指導や支援は適切に実施してきた
亡くなる方が出たことは重く受け止めており、関係会社を含めて適正な労務管理の徹底に引き続き取り組んでいく」(広報)としている。

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