中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

(参考)矛盾した「コロナロス」

2021年01月31日 | 情報

斎藤環先生は、説得力のある情報を発信されているように思います。

精神科領域における専門家として、一般市民に分かりやすい分析、提案があり注目しています。

 

メディアは「共感」や「同調圧力強化」を求めて動くな 

新型コロナワクチンの報道に精神科医が注文

1/30() BuzzFeed Japan

 

新型コロナウイルスの流行が早く収束してほしいという願いと同時に、このまま終わってほしくないという矛盾した「コロナロス」を抱えてしまう心理。

メディアがそれを煽るような報道をしているのはなぜなのか。

筑波大学大学院社会精神保健学分野教授の精神科医、斎藤環さんに分析していただきました。

BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】

 

ウイルスそのものより、ウイルスがついた人を遠ざける「ケガレ」の意識

 

ーー新型コロナウイルスのような災厄をマイナスばかりには捉えないという「適応力」が日本人にはあるという見方を伺いました。一方で、「自粛警察」やマスクをしているかどうかの互いへの監視、コロナに関わる医療者への差別なども広がっています。それはコロナを遠ざけたい、コロナを忌み嫌うという心理の現れに見えますが、そこは矛盾しないのでしょうか?

 

それは「ケガレ(穢れ)」の意識だと思います。

 

穢れ意識では、ケガレそのものではなく、ケガレに触れた人、近づいた人を憎み、自分のテリトリーから排除する。そういう方向に向かいがちです。

 

医療者差別という、他国ではあり得ないような現象が起こったのも、ケガレに近づいた人を排除するという心理ですね。

 

だからこそ、コロナそのものへの警戒心が鈍い人ですら、コロナに近づいた人や染まった人を過敏なほど排除し遠ざけるという矛盾が起こる。

 

ーーそれはコロナが続いてほしいという感情とは矛盾しないのですか?

 

ケガレは遠ざけておけば大丈夫という発想ですから。ケガレを根絶できるとは誰も思っていません。ケガレを遠ざければ、事態はうまく回ると考えるのです。

 

メディアは「共感されたい」を目的に動くな

ーー「コロナロス」ですが、自分をマイナスの状況に置くことで利益を得ようとする心理は、よくみられることなのでしょうか?

 

精神医療の現場ではよくみられる現象です。「疾病利得」という考え方がありますが、例えば思春期のお子さんが、親の注目や愛情を得るために病気であることをやめられず、症状を訴え続けるということはあり得ますね。

 

もちろん意図的なものではなく無意識的な過程ですが。

 

ーー新型コロナでは全員が被害を受ける可能性があって、ほぼ全員が予防のためのワクチンの対象者になると思います。マスコミがそれを阻むようなワクチンについて不安を与える情報を流し、不安を持ち続けることで利益になることはあり得るのでしょうか?

 

日本のマスメディアは、あまり公的な使命を果たすという意識が乏しいのかなと思わざるを得ないです。どちらかと言えば、人々に共感されたいという願いの方が強くて、「共感性」という観点で見ると「反ワクチン」の方が共感を呼ぶ。

 

医療者の怒りを買うといっても、全体から見れば一握りですから、遥かに多くのワクチンに不安を抱いている人の共感の方がずっとマジョリティです。

 

日本のメディアが人々の共感志向という原理で動く限りは、こういう変な報道が続くのかなと思います。これも日本に特異な現象だと言っていいかもしれません。

 

江戸時代に医師の緒方洪庵が種痘を普及させようとした際「種痘をすれば牛になる(牛痘ワクチンだから)」という流言飛語に悩まされましたが、令和の日本もあまり変わらない。マスコミが積極的に「牛になるぞ!」と喧伝するぶん、江戸時代よりも後退しているとも言えます。

 

欧米のメディアの報道を見る限りは、リスク・ベネフィット(利益と不利益)の客観的な評価はしていますが、医師や女子高生へのアンケートに基づいたワクチン批判の報道など、ほぼあり得ません。

 

ワクチンの評価は科学的になされるべきで、「うちたいと思うかどうか」みたいな情緒的反応に情報価値はありません。日本特有の茶番的な現象です。

 

ーーなぜ日本でそういう現象が起こるのでしょう。今回だけでなく、繰り返しています。

 

メディアがどちらの方を向いているかだと思います。一つ言えることは、日本は同調圧力が強い社会です。なぜかわかりませんが、日本のメディアは同調圧力を作り出す側に回りたがる傾向がある。

 

本来であれば、人々の同調圧力を打破するのがメディアの使命であるはずです。「社会の木鐸」というのはそういう意味です。共同体が生み出した誤った同調圧力に対して、誤解を正し、理性的な啓発を行うのがメディアの力だと私は思っています。

 

しかし、ワイドショーが典型的ですが、どちらかというと日本のメディアは同調圧力的な価値観を補強する方に動きますよね。

 

典型的なのは、コロナ禍初期にあったティッシュやトイレットペーパーのパニック買いです。テレビの報道がパニックに火をつけ助長したわけですが、彼らは嬉々として煽り続けたように見えます。

 

空気を作り出し、人々を煽動し、パニックを眺めて自身の影響力を再確認したがっているという見方は悪意が過ぎるでしょうか。マスコミそのものが、ムラ社会的な閉鎖性に自足しているとしか思えません。

 

目に見えない脅威への不安

ーーもう一つ、ウイルスは目に見えないもので、だから感染症は恐怖や不安も伝染しやすいし、増幅しやすいと言われていますがどうでしょうか? 東日本大震災の放射能に対するパニックも近いものがあるかもしれません。

 

「コロナうつ」という言葉も生まれましたが、その要因の一つは目に見えないものへの恐怖や不安がいつまで続くかわからない、ということから来るとも言われています。

 

そういった要因は大きいと思います。放射能の時と同じですが、これはケガレの意識にも同じ影響を与えているだろうと思います。

 

ただ放射能と違って、新型コロナに関してはワクチンという強力な切り札があります。しかもmRNAワクチンという非常に画期的なテクノロジーで立ち向かえる。その開発に至るストーリーも含めて、素晴らしい展開です。

 (小職註;mRNAワクチンの例として、ファイザーの mRNA ワクチンがあります。「あらゆる生物の遺伝情報は二重らせんを形成するDNAという遺伝物質に保存されています。生物を構成する全ての細胞で含まれているDNA分子のセット(「ゲノム」と呼ばれます)は基本的に変わりませんが、それぞれの細胞では異なるタンパク質が作られ、その結果、様々に分化した細胞が生じて、生物の体を形作っていきます。この同じDNAから異なるタンパク質を作るメカニズムに欠かせないのが、mRNAです。」ナノキャリア株式会社HPより)

 

しかし、このmRNAワクチンに関するわかりやすい解説が、新聞にもテレビにもなかなか出ませんね。バランスが取れた解説をもう少し大手メディアが載せてくれたら誤解も解けるのではないかと思います。

 

ーーハンセン病やエイズでもそうでしたが、感染症は不安や恐怖が強く喚起され、その不安に寄り添い、高める方向にメディアが動く状況になっています。

 

不安を増強させていますね。ワクチンに関しても、研究によってわかった効果より、不確実性の方を強調しています。

 

医療にゼロリスクを求めること自体が誤りなのですが、コメンテーターの「長期的に見て何が起こるかわからない」的な発言は、「ゼロリスクを保証しろ」という悪魔の証明じみた有害なコメントでしかないと思います。そういう人に限って抗ウイルス薬に期待していたりするのもおかしな話です。

 

専門家のコミュニケーションはどうか?

ーーただ、HPVワクチンのコミュニケーションでも感じてきて、自分の反省点でもあるのですが、専門家は一般の人の不安に理解する努力が弱い気がします。不安も理解しながら正しい情報を発信するというより、叱りつけ、「お前は反ワクチンだ」「そんなナンセンスなことを言うんじゃない」と馬鹿にしながら上から目線で伝える。その振る舞いが人々を正しい情報から遠ざけているところもあるのではないでしょうか?

 

そこはとても問題で、医療者も反省すべきだと思うのですよね。

 

「ワクチンの副反応は詐病で、心因性のヒステリー反応のようなものだ」と頭ごなしに訴えを否定する医療者は問題があります。

 

やはり起きた反応に対しては、個別に丁寧に対応しケアする姿勢が必要です。苦しんでいる当事者の訴えを頭ごなしに否定する医療者はますます信用されません。こちらは副反応のエビデンスの有無とは関係ありません。

 

医療者の傲慢が人々から信頼されにくい状況を作ってしまっています。非常に高圧的だったり、権威的だったり、すごく偉そうに見えたりして、そこで傷つく人がいっぱいいるわけです。その結果、近藤誠さんのような既存の医療を否定する言説に引き寄せられてしまうのですね。

 

この構図を作っている半分の責任は医療者にもあると思います。私は医療者の傲慢さが「近藤誠」現象をもたらした側面が確実にあると考えています。

 

ただ、近年は若干トーンが変わってきています。ワクチン批判に対する頭ごなしの姿勢は弱まっていて、ワクチンにはこういうメリットがありますよということを丁寧に説明する医療者も増えている気がします。

 

忽那賢志さんの発信などはそうですね。

 (小職註;くつな さとし:山口大学医学部を卒業後、救急医療などの現場で経験を積み、その後、感染症を専門とするようになる。2009年から奈良県立医科大学感染症センターで研修し,2010年には市立奈良病院で勤務。2012年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。診断した珍しい症例として、回帰熱や2013年に国内初となるデング熱に似た熱帯感染症・ジカ熱など。主な著書「感染症診療とダニワールド」(シーニュ、電子書籍)、「みるトレ 感染症」(医学書院)、「Fever 発熱について我々が語るべき幾つかの事柄」(金原出版)、「症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z」(中外医学社)

 

ーー忽那先生は丁寧に優しい言葉で専門的な話を噛み砕き、対立構造を作りませんね。がん医療でも主治医が突き放した結果、優しく不安に寄り添う偽医療に惹かれるという構図はあります。そこを教訓にしないといけないですね。

 

そうだと思います。医学的な正しささえ伝えればいいと思う医療者は、時に患者を突き放して反作用として偽医学に近づけてしまいます。医学的な正当性、専門性を錦の御旗にするような権威的態度には、反省があってしかるべきでしょう。

 

また、知識という点に限って言えば、専門家でもピンポイントでは「よく勉強した素人」にかなわないことは良くあります。そういう謙虚さも必要です。

 

今後、メディアや医療者はどう変わるべきか?

ーー正確な情報を必要な人に届けるために、メディアも医療者もコミュニケーションの問題をどうしていけばいいと思いますか?

 

医療者は今言ったようなバランスの取れた形でリスクコミュニケーションを図るべきでしょうね。偽情報に振り回されて不安の中にいる人に、適切な情報をどう届けていくかを、私の言葉で言えば「精神療法的なアプローチ」「対話的なアプローチ」で考えていく必要があります。

 

「エビデンスに基づいて正しいことを伝えてればいい。それを受け入れられない奴は勝手に死ね」と言わんばかりの態度を続けていたら、この対立構造は変わりません。どうしたら耳を傾けてもらえるか、医療者側も心を砕く必要はあるだろうと思います。

 

メディアの姿勢はもっと変わってほしいです。同調圧力や共感性をねらうのではなく、もう少し公共性を意識した啓発的な報道を心がけてほしい。

 

少なくとも新聞やニュース番組には、もっとそれを意識してほしい。ワイドショーに関してはもう言っても仕方ないので諦めています。

 

ワイドショーは新聞など「まともなメディア」が報じないことをフレームアップして報じるところに存在価値を見出しているので、いくら言っても変わらないでしょう。批判上等、炎上上等でしょうしね。私は引き続き「見ない、出ない、勧めない」の姿勢を貫きますが。

 

新聞やニュース番組には、もう少し正気の報道をしてほしいと思います。

 

自分もかかるかもしれない、死ぬかもしれないという状況をリアルに想像できれば、それを回避できるワクチンの価値を実感できないものでしょうか。

 

医師の中にも「私はうたない」と公言する方がいますが意味がわかりません。うたない自由は尊重しますが、周囲への影響への配慮はないのでしょうか。報道は両論併記でもいいですけれど、ワクチンがコロナ禍を終息させる確かな希望のひとつでもある、ということはきちんと伝えてほしいと思います。

 

政府のリスクコミュニケーションは?

ーー政府のリスクコミュニケーションはどう見ていますか?

 

日本の政府はリスクコミュニケーションが下手すぎると思っています。イタリアやイギリスなどコロナで惨憺たる状況に陥った国ですら、政府の支持率はむしろ上昇しました。

 

上がっている理由は、なんと言っても説明しまくるからですよね。何時間でも記者会見を開いて、すべての質問に率直に答える姿勢を示し続けてきたことはすごく大きかったと思います。

 

誠実に説明をし続ける姿勢があれば、人々の不安もかなり和らぐし、たとえ政策が失敗し感染が拡大しても簡単に支持率は下がらない。むしろ上がるという事例がこれほど世界中にあるのに、日本の政府は真逆の方針をとりました。

 

菅首相はディスコミュニケーションが芸風になっているような人です。それが今回は裏目に出ましたね。生粋の参謀役が総理になったら何が起きるかという「社会実験」はそろそろ答えが出たと言えそうです。

 

遮断することであのポジションに上がってきた人ですから、こういう危機の場面には向かないのですね。説明しないことが信条の人ですから。不安を掻き立てる方向にしか向かっていないと思います。

 

最近は方針を変えたようですがもう手遅れでしょう。

 

ーーワクチン担当相になった河野太郎氏はどう見えますか?

 

河野さんはコミュニケーションという点ではかなりマシかもしれませんが、記者会見の有名な動画のように、質問に答えずに「次の質問どうぞ」のようなことを平気でやるのはリスクコミュニケーションとして最悪です。相手の態度が悪いんだからそれでいいと思っているとしたら、かなりまずいと思います。

 

「ブロック太郎」の悪い側面ですね。せめて「ミュート太郎」くらいにしてほしい。

 

ーーメディアを敵にして、メディアに不満を抱く市民を味方につける戦略に見えます。

 

この状況下ではその姿勢はプラスにならないのではないでしょうか。分断統治っぽいメタゲームにしか見えません。とにかく平場に降りてきて、今起きている事実をあたうかぎり説明しつくす姿勢が大事です。いいことも悪いことも透明化を目指すことが重要です。

 

受けて側はバランスの取れた情報の摂取を

ーーこれから「コロナロス」は強まりそうですか?

 

「コロナロス」はあくまでも裏側の感情です。表に出ることはまずないと思いますが、そういう感情が存在し得るということを否認せずに認識しておくことは非常に大事だと思っています。

 

もちろん私自身の中にもないとは言い切れません。それを認識した上で、あくまでもコロナ終息にむけた情報発信をしていくことが大事です。その中でもワクチンは切り札中の切り札ですから、足を引っ張ってどうするのかとは思います。

 

ーー情報の受け手は何に気をつけるべきだと思いますか?

 

複数の情報源を確保して、バランスを考えながら情報を取り入れてほしいです。

 

そして、対立を煽らない、信頼できるニュースソースを頼ってほしい。忽那さんのような人を何人か定期的にチェックして、バランスを崩さないでほしいです。

 

人間は感情で動く動物です。自分の中に不安や怒りがあったりすると、Qアノンのような陰謀論もそうですが情報収集がどうしても偏ります。そこには気をつけてほしいと思います。

 

ーー対面でのコミュニケーションが取りづらくなっています。人の情報摂取の仕方に影響を与えているのでしょうか?

 

対面が減ったことによる影響の最大の問題は自殺の増加だと思っています。特に女性の増加率が大きいのは、これまで対面で愚痴をこぼすなどの援助を求める行動が取れていたのに、その機会が激減したからでしょう。些細なことなのですが、対面でしかできないことはたくさんあるのです。

 

それが激減したことで女性の孤立が進みました。男性は元々孤立しやすいのですが、コロナの女性への影響は大きいです。孤立や不安は人の心のバランスを崩しやすいし、冷静さを失わせやすいです。それが情報摂取の偏りの原因になっている可能性はあります。

 

依存症や引きこもりの自助グループもリモートの会合を開きながら対面機会を補い始めています。会議ばかりではなく、リモートの雑談会や愚痴をこぼし合う場面がもっとあると、少しは補えるかもしれません。

 

最近急速に盛り上がっている「clubhouse」なども、対面機会への渇望がブームにつながっているように思います。顔を見て、声をかわす機会をITが後押ししてくれることを期待しています。

 

【斎藤環(さいとう・たまき)】筑波大学大学院社会精神保健学分野教授

1961年、岩手県生まれ。精神科医。筑波大学医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院等を経て、20134月から現職。

 

専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動。著書は『世界が土曜の夜の夢なら』(角川財団学芸賞)、『心を病んだらいけないの?うつ病社会の処方箋』(新潮選書)など多数。

岩永直子

 

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緊急事態下、2割うつ状態

2021年01月29日 | 情報

20年春の緊急事態下、2割うつ状態 コロナで1万人調査
2021/1/27 日経・共同

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた2020年春の緊急事態宣言の期間中、
18%の人が治療の必要なうつ状態にあり、48%がストレスを感じていたとする
約1万1千人へのオンライン調査結果を、徳島大の山本哲也准教授(臨床心理学)らのチームが27日までに、
発表した。

単純比較はできないが、コロナ流行以前の別の研究や調査に比べ割合は増加。
欧州のように強制的でなく、自粛に頼る
「ゆるいロックダウン(行動制限)」でも負荷が大きいことを示した

ストレスが特に高かったのは、医療関係者や39歳以下の若い世代、精神疾患の既往歴がある人。
チームは「個々人の事情に合わせた、きめ細かな支援が必要だ」とした。

調査は緊急事態宣言が出ていた20年5月11~12日、感染者が比較的多かった首都圏や関西圏などの
7都府県に住む人を対象に実施。うつ病の重症度を測る9項目の質問では、18%がうつ状態とされた。
13年に日本で実施された別の研究では8%だった。
「絶望的だと感じましたか」など6項目の質問で宣言発令から1カ月間のストレスを測ると、
12%が重度、37%が軽度~中等度のストレスを抱えていた。
19年に同じ質問で調べた厚生労働省の国民生活基礎調査では、ストレスのある人は27%だった。
ストレスの重さに影響する要因を分析すると、
孤独、コロナにまつわる不安や不眠、仕事や勉強がうまくいかなくなったことが浮かび上がった。
チームは、回答者が今月始まった緊急事態宣言でどんな影響を受けたかも引き続き調べる方針。〔共同〕

緊急事態宣言で心理的ストレス増
01月26日 NHK

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言で心理的ストレスを感じる人が増えたことが
徳島大学の研究者の調査で明らかになり、
研究グループでは、来月に2回目の調査を行って継続的な分析を進めることにしています。

徳島大学大学院の山本哲也准教授のグループは、
去年、緊急事態宣言が最初に出された東京や大阪など7つの都府県の1万人余りを対象に
アンケート調査を行い心理的な影響を調べました。

それによりますと、宣言が出された1か月後に、
精神的な状態を調べる指標として広く使われる6つの質問を尋ねたところ、
心理的ストレスを感じている人は48.1%にのぼり、過去の国の調査と比べてほぼ倍増したということです。
さらに詳しい調査では「対人関係の悪化」や「不眠・不安」などが原因としてあげられ、
特に医療従事者や精神疾患の既往歴がある人、若い世代などで心理的ストレスが
高い傾向が示されたということです。
研究グループでは、2回目の緊急事態宣言が出されたことを受けて、
来月にも同じ人を対象に追跡調査を行い、緊急事態宣言が及ぼす心理的な影響を継続的に
分析することにしています。
臨床心理士で徳島大学大学院の山本哲也准教授は「“コロナうつ”などと言われるが、
データを科学的に調べたうえでどのような人に重点的にアプローチすべきなのか明らかにしていきたい」と
話していました。


徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 臨床心理情報学研究室(山本哲也研究室)

https://www.catlab.info/covid-19

新型コロナウイルス感染症拡大による生活変化が日本国民のメンタルヘルスに及ぼす影響
本研究のまとめ
・緊急事態宣言下(2020年4月7日~2020年5月14日)における人々の心理的ストレスについて,オンラインアンケート調査を実施した(アンケート実施期間:2020年5月11日〜2020年5月12日)。
・最初に緊急事態宣言の対象となった7都道府県在住の10代から80代の男女11,333人から回答を得た。
・対象者のうち,36.6%が軽度から中程度の心理的ストレス(K6 score = 5-12)を感じており, 11.5%が重度の心理的ストレス(K6 score 13)を感じていた。
・また,17.9%の人々が治療を要する抑うつ状態(PHQ-9 score 10)にあった(これに対して,2013年の調査データでは,治療を要する抑うつ状態は,7.9%の人々であった(Hoshino et al., 2018))。
過去10年間の国民生活基礎調査の結果と比べ,うつや不安などの心理的ストレスを感じている人が大幅に増加していた。
・医療従事者や精神疾患の既往歴がある者,若年者や女性,学生などにおいて,特に心理的ストレスが高い傾向にあった。
・自粛生活での心理的ストレスに関する危険因子として, 特に「孤独感」「フラストレーション」「新型コロナウイルス感染症に関連する不眠や不安」が示された。
・一方で,保護因子としては「健康的な睡眠習慣」と「生活・将来への前向きな態度(楽観性)」が示された。
・人工知能技術により, 重度の心理的ストレスを示す人々の背景には, 「孤独感の高さ」「身近な人との関係の悪化」「新型コロナウイルス感染症に関連する不眠や不安」「家計の悪化」「自粛生活中の仕事や学業における支障」といった多様な困難状況があることが示された。
我が国の自粛生活(マイルドロックダウン)下でのメンタルヘルスの保持増進には,様々な困難状況に合わせた柔軟な対応が必要であり,官民一体となった領域横断的な支援が重要であることが示唆された。

本研究成果は,以下の論文にまとめられて,2020年7月17日に『medRxiv』で公開され,国際学術雑誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』にて公刊されました。

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復職問題Q&A①

2021年01月28日 | 情報

Q;従業員110名の製造業で、人事担当の役員です。
うつ病で休職している従業員の職務は重要な役職ですので、後任をすぐに補充しました。
従って、「原職復帰が原則」とされているようですが、休職者が復職しても原職には戻せません。
どのようにしたらよいでしょうか?

 

A;厚労省の職場復帰支援の手引きには、「職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則です。」
(7頁)と明記されています。

しかし、よく読むと、「職場」となっていますので、ある程度広く解釈してもよいのです。
因みに、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は法令ではありませんから、
休職前と全く同じ仕事、職務に戻さなければならない、わけではありません。

例えば、同じ事業場、同じ部門というように、解釈すればよいでしょう。

 

・「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

 

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf

 

さらに、「職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則です。」とありますので、

あくまでも「原則」であることを理解しましょう。

参考までに、復職させる場合、原職に復帰させるのが原則とはいうものの、
使用者は配転命令権を有していますので、権利の濫用にならない限度で、
会社は、復職希望者に対して配転を命じることもできます。

 

それでは、なぜ「職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則」としているのかというと、
新しい環境に適用するためには、 心理的な負担を要し、
疾病の再発・再燃に結びつく可能性が指摘されているからなのです。

ですから、実務的には、会社は復職希望者と話し合い、当事者の納得を得ることが大切です。

会社に人事権があるからといって、強引にことを進めることは、
当事者の疾病の再燃・再発にも繋がりますので、注意しましょう。

 

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十分ではないと

2021年01月27日 | 情報

「園の対応は心理的負荷を軽くさせる効果はなく、十分な措置を講じていたとは言えないとした。」
(朝日)

法人側は業務量の削減やカウンセリングを実施したが、「十分に機能していなかった」などとして
法人側の安全配慮義務違反を認めた。(長崎)

司法は、十分ではないと云っています。しかし、どこまでやればよいか、は明確ではありません。

企業側にとっては、難しい対応が必要になっています。

 

虐待騒動が重荷、保育士自殺 園に3500万円賠償命令

2021120日 朝日

 

長崎市の私立保育園に勤めていた40代の女性保育士が2017年に自殺し、
遺族が園を運営する社会福祉法人に損害賠償を求めた訴訟で19日、長崎地裁(天川博義裁判長)は、
女性への配慮が不十分だったとして法人に計約3500万円の支払いを命じた。
自殺の前年に、保護者が虐待を訴えた「騒動」で心理的負担を負ったと認定した。

遺族は1811月に、計約8千万円の支払いを求めて提訴。
園側はカウンセリングや業務削減に取り組んでいたなどとして請求棄却を求めていた。

判決によると、保護者が16年に園内で虐待があると訴えた。
その後、園は市の監査を受け、園児をたたくなどの行為を改めるよう勧告を受けた。
園では動揺が広がり、経験豊富な保育士が複数退職した。

判決は、女性はこの騒動で強い心理的負荷を受けてうつ病を発症したと認定
遺書の内容などから、受け持ちの園児に実際には負わせていない大けがを負わせたという妄想に支配され、
自責の念を直接のきっかけに17年夏に自殺したとした。
園の対応は心理的負荷を軽くさせる効果はなく、十分な措置を講じていたとは言えないとした。

 

保育士自殺 園側に賠償命令 安全配慮義務違反を認定 長崎地裁判決

1/20() 長崎新聞

 

長崎市内の保育園に勤務していた女性保育士=当時(44)=が自殺したのは
園側の対応に原因があるとして、遺族が園を運営する社会福祉法人に損害賠償を求めた訴訟で、
長崎地裁(天川博義裁判長)は19日、安全配慮義務違反があったとして
法人側に約3500万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、2016年、保護者が園内での虐待を疑ったことをきっかけに保育士の退職が相次ぎ、
心理的負担が強まった女性は同年5月にうつ病を発症。
眠れない、食欲がないといった症状が現れた。
虐待を疑われないよう上司に園児の泣き声を注意されるなどの出来事が重なり、女性の症状は悪化した。
口数が極端に減り、将来を悲観する言動を取っていた女性は17年6月に失踪し、自殺。
「園児に重大なけがを負わせてしまったという妄想に支配されていた」とみられている。
18年5月、女性の自殺は労災認定された。

 同地裁は業務と自殺の因果関係を認めた上で、法人側に「(女性の)心理的負荷が過度に蓄積し、
心身の健康に変調をきたすことがないように注意すべき義務を負っていた」と指摘
法人側は業務量の削減やカウンセリングを実施したが、
十分に機能していなかった」などとして法人側の安全配慮義務違反を認めた。

 女性の遺族は代理人弁護士を通じて「主張が裁判所において事実として認定されたことについて、
ほっとしている」とコメントした。
法人側の代理人弁護士は「判決文を精査し、協議した上で今後の方針を決める」としている。

 

 

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無料の相談窓口

2021年01月26日 | 情報

COVID-19(新型コロナ)の蔓延で、メンタル不調者が増えています。
直近では、COVID-19(新型コロナ)にり患したため、自死したという不幸なニュースもありました。

 

以下に、無料の相談窓口を紹介します。

 

○勤労者 心のメール相談 (小職註:信頼しています)

横浜労災病院HP

https://www.yokohamah.johas.go.jp/medical/mhc/consultation.html

 

心療内科医であり当(横浜労災病院)センター長のDr.山本が自らお答えするメール相談です。
仕事上のストレスによる、身体的・精神的問題などに関する相談を年中無休の24時間、
無料でお受けしております。

以下の必要事項を記入し送信してください。24時間以内にお返事いたします。

氏名

性別/年齢

居住地(市区町村までで結構です)

相談者の立場(ご本人・ご家族・その他)

相談内容

山本先生のメールアドレス

mental-tel@yokohamah.johas.go.jp

 

○「こころの健康相談統一ダイヤル」厚生労働省

☎0570-064-556

平成20年9月10日より、都道府県・政令指定都市が実施している「心の健康電話相談」等の
公的な電話相談事業に全国共通の電話番号を設定する「こころの健康相談統一ダイヤル」の運用を
行っています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html

 

○ 東京都の心の健康相談(職場におけるメンタルヘルス相談)

労働相談情報センター(飯田橋).

第1~第4火曜日・第1~第4水曜日. 午後2時~午後5時

 0332656110.

「職場の人間関係がうまくいかない」「仕事が合わず悩んでいる」など、
仕事に関する様々なストレスでお悩みの方に、カウンセラーによる相談を行っています。(予約制)

https://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.lg.jp/mental/

 

○いのちの電話 みんなのインターネット相談(小職註:込み合っています)

https://www.inochinodenwa-net.jp/

 

お受けする相談数を決めさせて頂いていますので、送信時には受付終了となっていることもあります。
あらかじめ相談文をまとめた上で、サイトにアクセスすることをおすすめします。

 

相談窓口

電話0570783556(午前10時~午後10時)

https://www.inochinodenwa.org/

 

 ○民間機関・東京メンタルヘルス・スクエア(特定非営利法人)

 ☎ 050-5371-8143

https://www.npo-tms.or.jp/about.html

 

○民間機関・「よりそいホットライン」(一社)社会的包摂サポートセンター

☎0120-279-338

https://www.since2011.net/

 

 ○支援情報検索サイト 厚生労働省自殺対策推進室

☎03-5253-1111(代表)内線 2837 

https://shienjoho.go.jp/

 

企業向け
〇独立行政法人労働者健康安全機構 産業保健総合支援センター

 

https://www.johas.go.jp/Default.aspx?TabId=578

 47 都道府県の産業保健総合支援センターにおいて、メンタルヘルス不調の予防から職場復帰支援までの
メンタルヘルス対策全般について対応する総合相談等を行っています。

 

女性や若者目立つ 相談窓口拡充急務、自殺者11年ぶり増
2021/1/22 日経

2020年の自殺者数はリーマン・ショック後の09年以来、11年ぶりの増加に転じた。前年比750人増(3.7%増)の2万919人(速報値)で、女性や若年層の増加が目立つ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な困窮や外出自粛によるストレスなどが影響したと考えられる。国は相談窓口を拡充し、悩む人を支援機関につなげる取り組みを一層進める必要がある。

警察庁と厚生労働省の22日発表によると、男性は1万3943人と11年連続で減少したのに対し、女性は6976人と2年ぶりに増加した。

現時点で自殺者の年齢や職業、原因別の詳細なデータは11月分までの公表だが、小中高生の自殺者は440人で、同様の統計のある1980年以降で最多。内訳は小学生13人、中学生120人、高校生307人で、高校生は通年で比較しても過去最多だった。

「雇い止めにあい、生活していけない。死にたい」。ツイッターやLINE(ライン)の専用アカウントで自殺に関する悩み相談を受け付けているSNS(交流サイト)の窓口「こころのほっとチャット」には、コロナ禍が深刻化した20年春以降、こんな相談が急増するようになった。学生からは「オンライン授業ばかりで友達に会えず、孤独でたまらない」という悩みも相次いでいる。

運営するNPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」によると、20年4月以降に寄せられた1日の相談申込件数は平均200~300件程度と、19年から倍増した。相談員は1日8人態勢だったが、申し込みの急増で対応しきれなくなり、徐々に増やし、21年1月からは28人態勢となっている。

窓口利用者の大半が10~30代で、8割が女性という。東京メンタルヘルス・スクエアの新行内勝善・カウンセリングセンター長は「非正規雇用で失業した人や1人で子育てしている女性など苦しい立場の人からの相談が目立つ。これまで抱えてきた経済苦や家族間の不和といった問題がコロナ禍による失業や外出自粛によって浮き彫りになり『死にたい』という気持ちにつながっているようだ」と話す。

自殺者数の月別の前年比では、上半期は少なかった。特に緊急事態宣言下の4月は310人減、5月は268人減となったが、7月から前年比で増加に転じた。

新行内さんは「コロナ禍で悩みを抱えながらも頑張ろうとしていた人も、感染拡大の第2波、第3波と続き、先行きが見えなくなったことが心理面に大きく影響したのではないか」とみている。

自殺対策を担う厚労省は、コロナ禍を受けて20年度の第1次、第2次補正予算で約11億円を投じ、自殺対策に取り組むNPOの相談員拡充やリモートワークのためのパソコン購入の補助費に充てる。

NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表は今後の対策として「生活保護の受給要件を緩和するなど、生活を支えるための支援制度を拡充すべきだ」と指摘。自殺に追い込まれつつある人が自ら支援先を探すのは困難なことを踏まえ「支援が必要な人たちに適切な支援情報を届ける『プッシュ型支援』が欠かせない」と話している。

 

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