メンタルヘルスを可視化 コロナ禍の学生支援、ビッグデータも
2023/1/21 産経
新型コロナウイルスが国内で感染確認されて3年を経た。コロナ禍による影響はさまざまな分野に及んでいるが、社会は、現状に「うまく適応できた人」と「適応できない人」の二極化が進んでいる。コロナ禍に伴うデジタル化の進展が拍車をかけた形だが、大学に通う学生たちも大きな影響を受けた。友人らとのコミュニティづくり、学業、アルバイトなどを含めた新たな生活スタイルにうまく適応できない学生は少なくなく、支援は急務だ。その中で、学生のメンタルヘルス(心の健康)を可視化するシステムが開発され、複数の大学で導入されているという。その試みをみる。
抑うつ、社会不安など8領域
開発したのは、岐阜大保健管理センターの堀田亮准教授。学生の心理や精神状態を測定するものとして、米国で開発され、米国の750以上の大学で導入されている国際標準の心理指標「CCAPS(シーキャプス)」の日本語版を開発した。既に岐阜大では2020年2月から運用を始めており、今回は、学生がスマートフォンやタブレットなどで回答を終えると、結果を即時に伝えるウェブシステム「CCAPS-iQAS(アイキャス)」を開発した。
〇大学生のメンタルヘルスを可視化するシステムを開発
学生にも即時に結果をフィードバック
23.1.10 岐阜大学
https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20230110_1.pdf
【本研究のポイント】
・国際標準の心理指標である CCAPS(シーキャップス)注 1) の日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化する Web システム「CCAPS-iQAS(シーキャップスアイキャス)」注 2) を開発しました。
・CCAPS-iQAS に回答した学生には、自身の結果が自動かつ即時にフィードバックされます。同時に学内の相談窓口の連絡先が表示され、基準値より高い(メンタルヘルスに不調が見られる)学生には相談を促すメッセージが表示される機能が搭載されています。
・岐阜大学では定期健康診断の受診学生とカウンセリングを受ける学生に対して本システムを実装しており、複数の他大学でも導入が始まっています。
【研究概要】
岐阜大学保健管理センターの堀田亮准教授は、国際標準の心理指標である CCAPS 日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化する Web 回答システム「CCAPS-iQAS」を開発しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は未だ終息に至らず、大学生のメンタルヘルスへの影響は大きな社会問題となっています。本システムは、回答した学生に対して自動かつ即時に結果がフィードバックされ、相談窓口の連絡先や結果に応じた相談を促すメッセージも表示される機能を搭載しています(図 1)。
このような機能は他に類を見ないもので、その研究成果と意義が高く評価され、日本学生相談学会発行の学生相談研究に掲載されました。本システムは岐阜大学をはじめ、複数の大学ですでに実装されています。
【研究成果】
高い信頼性、妥当性が実証されている国際標準の心理指標である CCAPS の日本語版を用いて、大学生のメンタルヘルスを可視化する Web システム「CCAPS-iQAS」を企業と共同開発しました。また、岐阜大学生約 4,000 名に対して試験運用を行い、高い安定性と実用性を確認しました。
【今後の展開】
今後、CCAPS-iQAS を導入する大学が増えていけば、大学生のメンタルヘルスに関するビッグデータを構築できるようになり、年度ごとの特徴や推移といった実態把握に役立てることができます。また、性差や学年差といった比較検討も可能となり、大学生のメンタルヘルス支援に関するアクションプランの立案への貢献が期待できます。
【論文情報】
雑誌名:学生相談研究 43 巻 2 号, 182-193 ページ
論文タイトル:CCAPS ウェブ回答システム(CCAPS-iQAS)の開発
著者:堀田 亮(岐阜大学保健管理センター)
【研究者プロフィール】
堀田 亮(ほりた りょう)
岐阜大学 保健管理センター、医学部附属病院、医学教育開発研究センター、教育推進・学生支援機構
<略歴>
2014 年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻 3 年制博士課程 修了(博士(心理学))
2014 年〜2022 年 岐阜大学保健管理センター 助教
2022 年〜現在に至る 岐阜大学保健管理センター 准教授
<資格>
臨床心理士、公認心理師、大学カウンセラー