中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

明29日から5月5日まで、休載します

2021年04月28日 | 情報

毎年恒例となっていますが、
明29日から5月5日までのゴールデンウイーク期間中は、当ブログを休載します。
再開は、5月6日(木)です。
よろしくお願いします。

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労働安全衛生体制は大丈夫?

2021年04月28日 | 情報

新型コロナウイルス感染症の拡大に歯止めがかかりません。
しかし、このような状況にあっても産業保健活動を停滞させたり、先送りさせてはなりません。
「いや、それどころじゃないよ」という言い訳はできません。
御社の場合は、どのようにされいますか?
以下、どうしても対応しなければならない事項を列挙します。

1.(安全)衛生委員会等の開催
(安全)衛生委員会については、新型コロナ禍にあっても、法令に基づき毎月1回以上開催する必要があります。
ですから、開催に当たっては、いわゆる“三つの密”を避け、換気・消毒など、十分な感染防止対策を講じてください。
なお、衛生委員会は情報通信機器を用いたオンラインでの開催も認められています
(基発0827第1号 令和2年8月27日 情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び
第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について)。

開催に当たっては、
・映像や音声の送受信が常時安定していること、
・円滑な意見交換が即時に行われること、
・各委員の資料の共有方法や意見の表明方法が周知徹底されていること
などに留意してオンラインにおいても、安全衛生に係る問題が十分に調査審議されるようにしなければなりません。

2.(安全)衛生委員会等での審議事項
(安全)衛生委員会では、労働者の健康障害の防止や健康の保持増進を図るための対策、
労働災害の原因及び再発防止対策のうち衛生に関すること等を調査審議することに変わりはありません。
審議事項として、健康診断、職場環境、長時間労働、ストレスチェック等が挙げられます。
特に、コロナ禍においては、どのようなコロナ対策をとっていくのか、会社の方針を明確にしておくことが大切です。
具体的には、次のような審議内容が考えられるでしょう。

(1)健康状態の管理
出勤時には、検温、PCR検査等を実施します。
また、在宅時における健康管理をどのようにするのか産業医のアドバイスのもとに進め方を決めます。
従業員には、定期的な報告を求めます。
(2)コロナ感染者が発生した場合の対応
保健所・濃厚接触者への連絡方法、消毒作業を依頼する業者の選定等、
り患を疑われるような場合の対応要領も検討の上、従業員に周知します。
(3)健康診断の実施(3.項に詳述)
産業医のアドバイスを受けながら、毎年委託している健診機関と、
コロナ対策が万全を期しているか確認のうえ、実施します。
(4)テレワークに伴うVDT症候群の発生予防
パソコンの作業時間や休息時間の設定等テレワークに伴い、パソコンの作業時間や休息時間の設定等を決め、
VDT症候群の発症を予防します。
(5)テレワークにおける作業環境の整備
加えて、机、いす、照度、室温、窓(日照)、空調等の環境がテレワークを行う環境に適しているか、
従業員の作業環境を守ります。 
なお、事務所衛生基準規則 事務所衛生基準規則 第二章 事務室の環境管理(第二条-第十二条)を参考にして、
執務環境を整備してください。
(6)メンタルヘルス
長引くテレワークによる精神的ストレス対策、加えて産業医を中心とした産業保健スタッフによる相談体制を
構築してください。
(7)感染症対策
新型コロナ下にあっても、インフルエンザの予防接種、手洗い・うがいの徹底、マスク等の備品管理は必要です。

3.健康診断の実施
コロナ禍にあっても健康診断の実施は、義務です。
労働安全衛生法等に基づく健康診断については、いわゆる“三つの密”を避け、
十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関において、実施してください。

なお、健康診断実施に当たり、労働者が新型コロナウイルス感染症を気にして受診を控えようとしている傾向が
あります。従って、健康診断の会場では換気や消毒を行うなど感染防止対策に努めていることを説明するとともに、
受診を促してください。
(参考)「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」
(公益社団法人全国労働衛生団体連合会等)

http://www.zeneiren.or.jp/cgi-bin/pdfdata/20200514_ko.pdf

新型コロナウイルス感染拡大のリスクがある状況では、健康診断に行くことを躊躇する人もいるでしょう。
しかし、従業員の健康を守るために健康診断は適切に行われるべきであり、
過度に受診を控えることは健康上のリスクをもたらす危険があります。
健康診断の会場や医療機関では、換気や消毒といった感染防止対策が十分に行なわれています。
コロナ禍であっても労働安全衛生法等に基づく健康診断を実施し、従業員の健康を保持促進しなければなりません。
感染リスクから受診を控えようとする社員には、健康診断を実施すべき理由をしっかりと説明し、
理解してもらう必要があります。

4.産業医の業務
健診後の措置、長時間労働者、ストレスチェック高ストレス者の面接指導、通常の健康相談等、
健康管理業務を、メールや書面による郵送のほか、情報通信機器を用いて、遠隔で実施することも可能になりました。
ただし、情報通信機器による面接指導の実施要領については、(安全)衛生委員会などで調査審議し、
従業員に対して事前に周知します。

5.職場巡視の実施
・職場巡視は条件付きで2か月に1回実施しなければなりません。
・加えて、リモートワーク中の従業員の健康管理も重要です。

(追加)産業医の委嘱
労働安全衛生法において、常時50人以上の労働者が働く事業場では産業医を選任することが義務付けられています。
これは当然ことなのですが、新型コロナウイルス感染拡大で、すっかりその存在を忘れていませんか。
そう云えば、産業医の先生はどうなっているのでしょう、と突然気が付くような状況になっていませんか?
この際ですから、産業医の委嘱内容を再確認してはどうでしょうか。
そして委嘱料金や委嘱内容について疑問があれば、何なりと質問しても構わないでしょう。

産業医は事業場と従業員の中間にあり、従業員の健康の保持・増進を図らなければなりませんから、
産業医は事業場の業容と従業員の健康状況を熟知しなければなりません。

作業方法や作業環境が人体に有害の恐れのあるときは、
直ちに労働者の健康障害を防止する処置を講ずる必要があります。
(安全)衛生委員会会議に出席して意見を述べることも出来ます。

加えて重要なのが産業医面談です。特に長時間残業者には、法令+就業規則の範囲で
産業医面談を実施しなければなりません。(安衛法第66条の8,9、安衛則第52条の2~8)

 

 

 

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ストレスコーピングって何?

2021年04月27日 | 情報

Ⅰ。厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネットより

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-068.html

ストレスの基(ストレッサー)にうまく対処しようとすることを、ストレスコーピングといいます。
ストレッサーによって過剰なストレスが慢性的にかかると心身へのさまざまな悪影響が考えられるため、
健康を維持するにはうまくストレスコーピングすることが必要になります。

ストレスコーピングの方法は、大きく以下の2つに分けられます。
問題焦点コーピング
ストレッサーそのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとすること

例:対人関係がストレッサーである場合、相手の人に直接働きかけて問題を解決する

情動焦点コーピング
ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとすること

例:対人関係がストレッサーである場合、それに対する自分の考え方や感じ方を変える

ストレッサーそのものが対処によって変化可能な場合は問題焦点コーピングが適当で、
ストレッサーが対処によっても変化可能でない場合は情動焦点コーピングが適当であると考えられます。


Ⅱ。株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 調査研究部 中川紗江研究員の解説

コーピング(coping)は「ストレス対処」と訳され、日常生活の中で私たちに負荷をもたらすと判断された外的・内的な刺激(ストレッサー)やそれによって生じるストレス反応を減らしたり、受け入れたりするために個人が行う認知的、もしくは行動的な努力のことを指します(Lazarus & Folkman,1984)。

さらに、Lazarusら(1984)は、その努力は常に変化するものである、とも述べています。コーピング方略にはさまざまな種類があり、その分類方法は研究者によって多岐に渡ります。

そこで今回は、ストレスフルな状況やその結果として生じるネガティブな情動に対して積極的にかかわっていく「接近型コーピング」と、それらをなるべく遠ざけようとする「回避型コーピング」という分類方法を元に、コーピングについて説明します。

接近型コーピングと回避型コーピング

接近型コーピングとは、ストレスフルな状況に対して積極的に取り組んで解決を目指すためのコーピングであり、以下のような方略が当てはまります。
・ 問題点を明らかにし、解決策を考える
・経験者にアドバイスを求める
・どんな物事にも必ず良い面があるはずだと探してみる

一般的に、接近型コーピングはストレッサー自体の解消を目指すものであるため、ストレス反応の低減に有効だと言われています。しかしながら、ストレスの原因の所在が自分以外にある、もしくは対処方法は分かっていても実行に移すのが難しい場合など、全てのストレッサーが解消できるものとは限りません。

解消できないストレッサーに対して働きかけを続けることで、疲弊してしまう恐れもあります。その場合は、ストレッサーから距離を置くことでストレス反応の低減を目指す回避型コーピングを選択することも必要となります。

回避型コーピングには、以下のような方略があります。
・嫌なことをなるべく思い出さないようにする
・自分の趣味を楽しむ時間を持つ
・問題解決を先送りする
・ミスを他人のせいにする

回避型コーピングを用いることによって、ストレッサーに直面した結果として生じるネガティブな感情を解消することができます。

しかしながら、その効果はあくまでも一時的なものであり、根本となるストレッサーの解消には至っていません。そのため、回避型コーピングは不適応であると捉えられることも多く、ストレス反応の増加に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

以上のことから、接近型と回避型はどちらか片方を用いるだけでは、全てのストレスに対処することは難しいでしょう。過去の研究において、多様なコーピングを組み合わせ、状況に応じて柔軟に使い分けることの有効性が指摘されていることからも、両者を上手く組み合わせて用いることが重要なカギと言えそうです。

ここでは、回避型コーピングの適切な用い方に関する研究結果について少し取り上げてみましょう。森田(2008)は大学生を対象にストレス状況として対人場面と課題場面※2を設定し、回避型コーピングの適切な用いられ方を検討しています。

その結果、対人場面においては回避型を用いることで認知・行動的なストレス反応が減少した反面、課題場面においては回避型を用いることでストレス反応が増加する傾向が示されました。

森田はさらに、接近型コーピングの一種である問題焦点型コーピングと回避型コーピングの組み合わせについても検討しており、積極的にストレッサーの解決に取り組む合間に「息抜き」を意図して回避型コーピングを用いる場合、ネガティブな感情反応が有意に低下することを見出しています。

ようするに、行動レベルではストレッサーからの回避を選んだとしても、最終的な目標レベル(ストレッサーの解消を目指す)からの回避ではない場合は、回避型コーピングが有効ということになります。その一方で、積極的な取り組みが無効であることを認識しながら消極的な意味合いで回避型コーピングを用いる場合には、かえってストレス反応の増加に繋がる可能性が示されました。

したがって、回避型コーピングは、以下のように用いることが有効であると考えられます。
・対人場面で用いる
・接近型コーピングによる積極的な問題解決の合間に、「息抜き」を意図して用いる

以上のことから、森田(2008)の研究では、どのようなコーピング方略を選択するかということだけではなく、「それがどのような状況で、どのように用いられるのか」といった文脈や意図を考慮することの重要性が示されたと言えるでしょう。

まとめ
今回は、ストレスと上手に付き合っていくための「認知的評価」と「コーピング」についてご紹介しました。
コーピングには、いわゆる何にでも効果を発揮する万能薬、というものはありません。いつ、どのような状況に対してどれくらいのストレスを感じるのか、ストレスのツボとでも呼ぶべきものが人によって異なるように、その人に合ったストレスへの対処方法も異なります。
大事なことは、自分に合ったコーピングを一つでも多く知り、コーピングのレパートリーを増やすことでしょう。そうすることで、ストレス状況に応じてコーピングを使い分けたり、組み合わせたりすることができるようになります。
さらに、それらを実際の生活で活用できるように日頃からコーピングを意識して使う練習をしておけば、ウィズコロナによる新しい生活様式への順応においても、ストレスを未然に防いだり低減させたりすることに役立てられるでしょう。

※1 認知的評価の二次的評価を元に採用したコーピングが不適切であった場合には、認知的評価の段階に戻ってストレス状況に対する評価を修正(再評価)し、異なるコーピングを選択するという可能性も起こりえる。そのため、一連のプロセスにおいて、認知的評価とコーピングは相互的に影響しあっていると考えられる。

※2 森田(2008)では、大学生のストレッサーとして「人間関係」と「勉学」が上位を占めているという尾関ら(1991)の知見を受けて、ストレス状況として対人場面と課題場面が設定されている。

引用文献
Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. Springer publishing company.小杉正太郎 編著 (2002). ストレス心理学―個人差のプロセスとコーピング 川島書店
森田美登里. (2008). 回避型コーピングの用いられ方がストレス低減に及ぼす影響. 健康心理学研究, 21(1), 21-30.尾関友佳子, 原口雅浩, & 津田彰. (1991). 大学生の生活ストレッサー, コーピング, パーソナリティとストレス反応. 健康心理学研究, 4(2), 1-9.

【筆者プロフィール】中川紗江さん 株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 調査研究部 研究員
ストレス科学・産業組織心理学・精神生理学が専門。嘱託・非常勤講師として同志社大学心理学部その他多数の大学・専門学校で心理学関連の講義および実習を担当(2015年4月~2018年2月)。また、京都府立医科大学神経内科および滋賀医科大学脳神経外科学講座で心理士として認知症患者を対象とした知能検査を担当(2009年4月~2018年2月)。

 

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脱ネガティブ思考の新人研修

2021年04月26日 | 情報

新人研修でも「マインドフルネス」ですね。
小職の新人時代では研修の一部が、禅寺に数泊しての座禅研修でした。

大和証券、脱ネガティブ思考の新人研修 慶大と共同で
2021年4月19日 日経

大和証券は瞑想(めいそう)などを通じてストレスの軽減効果があるとされる「マインドフルネス」を
新入社員向け研修で導入する。約230人を対象にオンラインで1時間半のプログラムを5回実施する。
呼吸や体の緊張状態を観察し自分がストレスを感じやすい環境を理解することで、
ネガティブ思考やメンタルヘルスの不調に陥るのを未然に防ぐ。

慶応大学と共同でプログラムを開発した。
新型コロナ禍に伴う外出自粛や在宅勤務の長期化などでストレスを感じる人は増えている。
マインドフルネスは瞑想や呼吸法などを通じて不安と向き合うことで心を楽にする行為。
うつ病の再発予防にも効果があるとされ、米グーグルや米アップルなども研修に取り入れている。

慶応大は13年にストレス研究センターを設立し、産業メンタルヘルス対策などを手掛けている。
同センターが企業と組むのは大和が初めて。大和はこれまでもストレスを早期発見する研修などはしてきたが、
ストレスへの対処方法を学ぶことで精神的な不調による休職などの機会損失を防ぎたい考えだ。

まず新入社員向けに実施したうえで、今後、会社全体にマインドフルネス研修を導入することも検討する。
ストレスとの向き合い方を身につけ、メンタルヘルスの不調を予防し、社員の働きがいの向上につなげる。

厚生労働省によるとうつ病などの精神疾患の患者数は17年に419万人
不自由を余儀なくされているコロナ禍でストレスを感じる人は増加傾向にあり、
徳島大学の調査では20年春の緊急事態宣言の期間中、18%の人が治療の必要なうつ状態だったという。
単純比較はできないが、13年に日本で実施された別の研究では8%だった。

(参考)大和証券グループHP 「人材育成とスキルアップ」

https://www.daiwa-grp.jp/about/work/skill_up.html

(参考)当ブログ(2021年04月08日うつ病の再発予防検証)での類似記事

マインドフルネス、医療現場でも うつ病の再発予防検証
2021年3月24日 日経

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労使による積極的取り組みと課題解決

2021年04月23日 | 情報

第5回 働く人の意識調査
行動や働き方の変容には、宣言・措置よりも労使による積極的取り組みと課題解決を2021.4.22 公表

https://www.jpc-net.jp/research/detail/005218.html

公益財団法人 日本生産性本部は4月22日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第5回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。

コロナ禍の長期化を視野に、日々の暮らしや働き方、組織の業務内容や運営形態などが見直され、その影響は社会・経済の仕組みや人々の意識・価値観の変遷にまで及んでいます。経営者・労働者・学識者の三者構成による日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、所属組織に対する信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、2020年5月以降、継続的にアンケートによる意識調査を実施しています。

5回目となる今回の調査は、2021年4月5日に政府より一部地域にまん延防止等重点措置が適用された直後の4月12日(月)~13日(火)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行ったものです。

調査結果からは、全ての世代で感染不安が薄れて「コロナ慣れ」が進み、テレワーク実施率は約2割で変わらず推移していることから、人々の自覚に基づく行動変容の訴求は、従来以上に難しくなっていることが伺えます。企業には、テレワークを前提とした業務遂行プロセスの再設計や多様な働き方の体験・実践を通じた意識改革により、従業員の移動を抑制して安全確保に努めるなど、一層の施策が求められます。また、今回の調査では、社会保障の給付水準と負担額のバランス、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、就業希望年齢に関する設問などを新たに追加しました。主な特徴は以下の通りです。

【第5回「働く人の意識調査」主な特徴】(詳細や図表は「資料1:調査結果レポート」参照)

  1. 感染不安と外出自粛:全年代で希薄化、特に20代・50代・60代で「コロナ慣れ」進む(図5~10)

自分自身が新型コロナに感染する不安の程度について、「かなり不安を感じている」が25.5%と、1月調査の35.2%から減少している一方、「やや不安を感じている」は52.7%と1月調査の48.2%からやや増加。「あまり不安を感じていない」が13.0%から17.4%へと増加していることも併せて考えると、全体として不安の程度はやや薄らいでいる(図5)

年代別に見ると、全ての年代で「かなり不安を感じている」が減少。特に、50代・60代の大幅な減少が目立つ。何らかの不安を感じている者が最多だが、全ての年代で感染への不安が希薄化している(図6)

不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」は43.5%と、1月調査の49.8%から減少(図8)。年代別に見ると、「できるだけ避けるようにしている」が20代で45.9%から31.9%に、50代でも56.3%から42.7%へと減少(図10)

新型コロナ感染への不安感と外出自粛行動には強い関連がみられる(図9)

  1. 社会保障の給付と負担:給付水準と負担額のバランス、年代による意識の差が明確に(図13~15)

社会保障の給付水準と負担額のバランスについて、「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」が38.6%で最も多く、次いで「給付水準を引き下げ、負担額は現状を維持する」が32.1%(図14)

30代~50代は「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」と「給付水準を引き下げ、負担額は現状を維持する」がいずれも30%台で拮抗。60代・70代以上では「給付水準は維持し、負担額はある程度増やす」が他の年代より大幅に増え、過半数を占める。「給付水準を大幅に減らし、負担額も減らす」は20代が31.9%で最も多く、高年層ほど減少(図15)

3.勤め先への信頼度・業績不安:不安感は減少傾向だが、業種により大きなバラつき(図16~21)

勤め先の業績に「かなり不安を感じる」は15.0%、1月調査の20.2%から減少(図17)

業種別に業績への不安感について「不安は感じない」(「全く不安は感じない」と「どちらかと言えば不安は感じない」の合計)から「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」と「どちらかと言えば不安を感じる」の合計)を引いた割合(D.I.:Diffusion Index)をみると、「教育、学習支援業」「公務」等のようにプラスの値を示す業種や、「情報通信業」といった僅かなマイナスにとどまる業種がある一方、「卸売業」「運輸業、郵便業」のように40ポイント以上のマイナスを示す業種があり、業種によって業績不安の様相は大きく異なる(図18)

今後の自分自身の雇用についての不安感は、1月時点と比べて大きな変化はない(図19)

勤め先の業績に「かなり不安を感じる」がやや減少、3か月前と比較した業務量の増減がマイナスからプラスに転じた(図11)ことから、企業の事業活動が一部で回復しつつあると推察

  1. 人事評価・キャリア形成:望ましい雇用形態や「何歳まで働きたいか」は性別で差(図25~31)

メンバーシップ型雇用を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」、ジョブ型雇用を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」として、希望する雇用形態を聞いたところ、ジョブ型が58.7%、メンバーシップ型が41.3%(図26)

性別で見ると、男性はジョブ型54.0%/メンバーシップ型46.0%である一方、女性はジョブ型64.5%/メンバーシップ型35.5%と、性別によって10ポイントの統計的有意差がある(図27)

就業希望年齢について、「働ける限り、何歳になっても働きたい」が35.5%で最多、次いで「61~65歳まで」30.9%、「56~60歳まで」14.6%、「66~70歳まで」13.4%、「55歳まで」5.5%(図28)。性別でみると、男性は「61~65歳まで」が34.9%で最多、「何歳になっても働きたい」は32.3%。女性は「何歳になっても働きたい」が39.5%で最多、「61~65歳まで」は26.0%(図29)

  1. 働き方の変化:テレワーク実施率は約2割で推移、宣言・措置の影響力は低下(図44~55)

雇用者に占めるテレワーカーの割合は2020年7月以降、継続して約2割程度で推移(図45)

調査実施時点でまん延防止等重点措置が適用されていた大阪府・兵庫県において、同措置の適用がテレワーク実施率に影響した様子は見られなかった。1月調査で緊急事態宣言発出直後の首都圏(1都3県)で発出前との差がなかったことと同様で、宣言や措置の企業への影響力が2020年4~5月頃と比較して低下していることを示唆(図46)

新型コロナ問題が収束した後の働き方や生活様式に関する変化の可能性について、テレワーカーの方が非テレワーカーよりも変化の可能性を肯定する傾向が強かった。ほぼ全ての項目で統計的有意差がみられ、体験が「ニューノーマル」を現実化する力になると推察される(図55)

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