当事案も、安全配慮義務に違反があったと判断されました。
理由は、病院側は男性の状況を把握していたにも関わらず対策をしなかった、ということでした。
別項で、安全配慮義務のハードルがどんどん高くなっていますとしていますが、
当事案は、ハードルがそれほど高くないのですから、会社側敗訴は判決を待つまでもないことでしょう。
臨床検査技師の自殺、長時間労働が原因 札幌地裁支部
2019年6月13日 朝日
小樽掖済(えきさい)会病院(北海道小樽市)の臨床検査技師の男性(当時34)が2015年12月に自殺したのは
長時間労働によるうつ病が原因だとして、男性の遺族が病院側に約1億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、
札幌地裁小樽支部であった。梶川匡志裁判長は長時間労働が自殺につながったことを認めた。
一方、小樽労働基準監督署が16年11月、男性の労災を認定し、遺族補償年金などを支給。
さらに病院側は今年1月、裁判とは別に、損害賠償の名目で約1億円を遺族側に支払った。
判決は、未払い賃金や慰謝料などで1億円の損害賠償を認めたが、すでに遺族側に支払われた支給額によって打ち消されるため、
裁判での請求は棄却した。
判決によると、男性は15年6月ごろから、
病院の新築移転に伴って導入される電子カルテのシステムの構築などを任され、残業が常態化。
うつ病を発症し、同年12月に病院の屋上から飛び降りて自殺した。
判決は、自殺直前の1カ月間の時間外労働を約160時間と認定。
病院側は男性の状況を把握していたにも関わらず対策をしなかったとして、安全配慮義務に違反があったと判断した。
男性の妻は判決後、「病院が誠意ある態度を一度でも見せてくれていたら、
私たち遺族が救われる部分も多少なりともあったかもしれません。
この社会から長時間労働やその末の過労死、過労自死がなくなることを切に願います」とコメントした。
病院を運営する日本海員掖済会は「改めて亡くなられた元職員のご冥福をお祈りする。
判決がまだ届いておらずコメントは差し控えます」との談話を出した。
検査技師自殺で病院の責任認める
06月12日 NHK
4年前、小樽市の病院に勤務していた男性が自殺したのは長時間労働でうつ病になったことが原因だとして
遺族が病院側を訴えた裁判で、札幌地方裁判所小樽支部は病院側の責任を認める判決を言い渡しました。
小樽市の「小樽掖済会病院」に勤務し、平成27年に自殺した当時34歳の臨床検査技師の男性の両親や妻などは、
自殺は長時間労働でうつ病になったことが原因だとして病院を運営する医療法人に
損害賠償などとして1億2000万円あまりを求めました。
判決で札幌地方裁判所小樽支部の梶川匡志裁判長は、
「自殺直前の1か月の残業時間はおよそ160時間に及んだ。
病院側は残業時間を把握し業務を軽減するなどの対策をとれたのに行わなかった」などとして、病院側の責任を認めました。
ただ、ことし1月に病院側から遺族に対して1億円300万円あまりが支払われているとして訴え自体は退けました。
判決のあとの記者会見で男性の65歳の父親は、「慣れない業務で息子が追い詰められていったと思うとやりきれない。
医療機関には、職員が幸せに働けないと患者さんも幸せにすることはできないということを改めて分かってほしい」と話していました。
一方、病院を運営する医療法人は、
「改めて亡くなられた元職員のご冥福をお祈りすると共に、ご遺族のみなさまに哀悼の意を表します。
判決が届いていないのでコメントは差し控えます」としています。
(参考)過労認識で雇用側に注意義務 技師自殺訴訟で札幌高裁判断
2013/11/22 日経・共同
従業員が過労の末に精神疾患となって自殺した場合、
疾患を具体的に認識していなくても雇用主に勤務時間の短縮といった注意義務があるかどうかが争われた訴訟の控訴審判決が21日、
札幌高裁であった。岡本岳裁判長は「従業員の長時間労働の実態を認識できる限り義務を負う。
疾患を発症したとの具体的な認識は必要ない」との判断を示した。
訴訟は、北海道函館市の「函館新都市病院」に臨床検査技師として勤務し、2009年に自殺した女性(当時22)の両親が、
病院を経営する医療法人「雄心会」(函館市)に計約9400万円の賠償を求めていた。
岡本裁判長は、雄心会側の対応に問題はなかったとして請求を棄却した12年8月の一審札幌地裁判決を変更し、
計約5800万円の賠償を命じた。
判決理由で岡本裁判長は「難易度が高い超音波検査の技法を習得するため、
女性は自殺前の1カ月間、自習時間を含め約96時間の時間外労働をしていた」と認定。
その上で「雄心会は、自習時間の削減や超音波検査に当たる心理的負担を軽くするといった措置を講じるべきだった」と結論付けた。