中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

コロナなしの場合の予測と比べ多い

2022年03月31日 | 情報

“自殺件数コロナなしの場合の予測と比べ多い”横浜市立大など
2022年3月30日 NHK

新型コロナウイルスが広がった2020年度の国内の自殺件数は、新型コロナがなかった場合に予測される件数と比べて、
女性では31%、男性では17%多かったとする分析結果を横浜市立大学などのグループが発表しました。

これは横浜市立大学附属病院の堀田信之医師などのグループが海外の医学誌で発表しました。

グループでは、新型コロナウイルスの流行が自殺に及ぼす影響を調べるため、
コロナ禍が始まる前の過去11年分のデータの分析から予測される国内の自殺件数と実際の件数を比較しました。

その結果、コロナ禍が始まった2020年度の自殺件数は、予測された件数と比べて女性は31%、男性は17%多くなっていて、
特に20代の女性では72%多くなっていることが分かったということです。

グループによりますと、コロナ禍が始まってからの自殺件数の推移は国内の失業率の推移と似ているということで、
新型コロナによる失業率の増加が経済的な基盤が弱い若い女性に影響した可能性があるとしています。

「コロナ禍で若い女性の自殺増 学術的に裏付け」

横浜市立大学附属病院の堀田医師は「コロナ禍で若い女性の自殺が増えたと言われてきたが、それが学術的にも裏付けられたと考えている。
自殺防止の観点からは、感染対策と経済対策のバランスが大切ではないか」と話していました。

令和3年中における自殺の状況
令和4年3月15日
厚生労働省自殺対策推進室
警察庁生活安全局生活安全企画課

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R04/R3jisatsunojoukyou.pdf

自殺統計に基づく自殺者数 厚労省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsutoukei-jisatsusyasu.html

自殺統計について
自殺統計とは、警察庁による自殺に係る統計のことです。都道府県警察では、捜査により遺体の死因を自殺と判断した
(小職註;実際の自殺者は、さらに多いと推測できる)
ケースについて、案件毎に自殺統計原票を作成しており、
データ化したものを警察庁において取りまとめています。

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KOKOROBO(ココロボ)

2022年03月30日 | 情報

「KOKOROBO(ココロボ)」

https://www.kokorobo.jp/

日本医療研究開発機構(AMED)障害者対策総合研究開発事業(精神障害分野)
「COVID-19等による社会変動下に即した応急的遠隔対応型メンタルヘルスケアの基盤システム構築と実用化促進にむけた効果検証」
プロジェクト研究開発代表者 中込和幸(国立精神・神経医療研究センター)

 

コロナ下うつ病、重症化しやすく オンライン相談も活用を
コロナと病② 三村将・慶応義塾大学教授
2022年3月20日 日経

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は「心理的な感染症」、「社会的な感染症」という側面も持つ。
メンタルヘルスの専門医で、日本うつ病学会理事長の三村将・慶応義塾大学教授に、患者への影響や医療の行方などを聞いた。

コロナにかかってしまうのではないかという不安、外出に対する恐怖感、手洗いや消毒などに関する強迫観念や集団の中で
コロナに感染している人に対するバッシング、せきをした人に対する忌避感や偏見など、問題が複合的に起きて、
うつ病や不安症を発症したり、悪化したりするケースがある。

コロナ禍で病院に行くことを控える人も多いとみられ、正確な数の把握はできていないが
メンタルに不調をきたす人は確実に増えているだろう。慶応義塾大学病院では初診も再診も大きく減った。
ワクチンの普及などもあり、今は徐々に戻りつつあるがコロナ前の状況には遠い。

うつ病などの精神疾患の多くは継続して診察や投薬を続けていく必要がある病気だ。
ただ患者の中には重症化してしまってから来院する人も多い。
いったん重症化すると日常生活を送れるような元の状態に戻るまでに時間がかかってしまう。

問題のひとつは、先が見えないことにも関係している。いつ終わるか分からないという心理的な恐怖が大きい。
精神的に弱っている状況の人はもちろん、今まで問題なかった人たちにとっても大きなストレスとなっている。
こうした人たちへの心理的なサポートは喫緊の課題といえる。

メンタルヘルスに対する相談窓口を広げる取り組みは始まっている。日本医療研究開発機構(AMED)からの委託を受けて、
国立精神・神経医療研究センターや慶応義塾大学、杏林大学などが自治体と協力して立ち上げた「KOKOROBO(ココロボ)」という
オンラインサービスだ。人工知能(AI)を使ったチャットで、軽症から重症までを自動判定できる。
ココロボは、スマートフォンやパソコンで気軽に利用できる。
こうしたアプリは科学的な検証を積み重ねていく必要もあるが、うつ病対策や自殺対策などにも役立つ可能性があるだろう。

症状が重い人はビデオ通話を使ってカウンセラーとの面談ができるほか、場合によっては直接来院してもらって診察を受けることができる。

オンラインを活用するシステムは有用なツールだ。在宅勤務は今後も続き、出勤とリモートのバランスをとった働き方が定着していくだろう。
医療でも遠隔診療と対面診療の組み合わせが進んでいく可能性がある。

特に有用性を感じるのは遠隔地の人に対する診察だ。海外在住の日本人に対して
母国語でのメンタルヘルス相談などは大きなメリットを感じる。通院、来院が難しい人にとっては継続的な診察や治療が可能になる。

もう一つがセカンドオピニオンだ。慶応病院では精神科領域でもセカンドオピニオン外来があるが、
これはオンラインでもいいのではないかと考えている。ポストコロナを見据えて定着する可能性がある。

実は精神神経疾患にはオンラインがいちばん向いていると思う。例えば家にこもって出られないといった症状の場合は、
そもそも病院に行くことが難しい。そういう人たちにまずオンラインで話をして関係性をつくっていく。
その後で病院に来てもらうような進め方もできる。

ただ精神化領域での利用はあまり広がっていない。これは大きな問題だ。
アプリやウェブを活用した遠隔診療はやはり若い世代が中心で、高齢者には使いにくいという問題がある。
70代、80代といった世代ではスマホを使い慣れていない人も多い。

また社会的に孤立している人たちにはこうした情報が伝わりにくい。
特にコロナ禍で人と人とのつながりが希薄化しており、孤立、孤独を感じる人が増えている。
若い人や女性にそうした傾向が多い。社会的孤立はうつ病を発症するリスクが高いことも分かっている。
こうした影響は中長期的にボディーブローのように出てくるだろう。

コロナ禍でのメンタルヘルスの悪化を危惧するのは日本だけの問題ではない。
世界保健機関(WHO)もこの問題を重要視しており対策を話し合っている。
もはや各国の精神科医の共通認識だ。日本ではコロナ禍で女性の自殺者が増加したこともそうした問題を裏付けている。

長期にわたるコロナの影響は、後遺症のほか、心理的・社会的要因など多岐にわたる。
本人が気づかないだけで、大きなストレスを抱えてしまっている人も多い。
心身に不調を感じたのなら、我慢せず、専門家に相談する機会を持つことが大切だ。(聞き手は先端医療エディター 高田倫志)

欧米で先行、うつ病やPTSDなどで治療効果も確認

 精神疾患の診療・治療は人と人との会話によるつながりが重要となるため、オンライン診療を活用しやすい領域とされる。
米精神医学会ではアクセス、コスト、有効性の観点から電子処方箋と組み合わせて使用を推奨している。

特にうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ADHD(注意欠陥多動性障害)の治療に効果的という調査結果も報告しており、
コロナ禍を追い風に診療・治療のツールとして広がりつつある。また得られたデータをもとに新たな診断支援アプリなどを開発するなど、
研究と実証による技術革新の歯車が勢いよく回る。

同様の取り組みは英国やドイツ、中国でも進むが、日本はオンライン診療そのものが普及しておらず
精神科領域での活用は限定的な事例にとどまる。
「医療の質が落ちる」「安全性や秘匿性に問題がある」「抗精神病薬の取り扱い懸念がある」という慎重意見も根強い。

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不支給の決定を取り消す判決

2022年03月28日 | 情報

当事案もそうなのですが、精神疾患に関連する労災は認定基準に則って判断することになっています。
しかし、この認定基準のハードルが極めて高く、けがなどに比べると著しい格差があると感じています。
例えば、事業場内のけがではないのに、事業場内でけがをしたと申し立てれば、確たる証拠を求められません
(事実、できません)ので、労災認定を受けることができる現状があります。
長時間労働については、認定基準に拘らない認定も出てきていますが、
認定基準を厳格に運用する現状については、問題が多いように感じています。

うつ病悪化で退職 療養補償不支給取り消す判決 福岡地裁  
03月18日 NHK

北九州市でシステムエンジニアとして働き、うつ病を発症した45歳の男性が、
療養補償の給付を認めなかった労基署の決定を不当だと訴えた裁判で、
福岡地方裁判所は「うつ病の症状の悪化は業務に内在する危険が現実化したものと認められる」として、
不支給の決定を取り消す判決を言い渡しました。

北九州市に本社がある「TOTO」の子会社でシステムエンジニアとして働いていた45歳の男性は、
平成23年にうつ病を発症し、その4年後に症状が悪化して退職しました。

当時、男性は「TOTO」の人事情報に関する新たなシステムの設計などに1人で当たるなどしていたということです。

今も症状が続く男性は、療養補償を支給するよう求めましたが、北九州東労働基準監督署が認めなかったたため、
この決定の取り消しを求める訴えを起こしました。

きょうの判決で、福岡地方裁判所の小野寺優子裁判長は時間外労働がおよそ100時間におよび、連続勤務が15日間続いた、
退職直前の勤務状況などを踏まえ「業務による心理的負荷が社会通念上客観的にみて発病させる程度に強度だった。
うつ病の症状の悪化は業務に内在する危険が現実化したものと認められる
」などとして、
療養補償を不支給とした決定を取り消す判決を言い渡しました。

北九州東労働基準監督署は判決について「関係機関と協議の上で対応を考えたい」としています。


TOTO子会社員、うつ病は一部労災 地裁判決 /福岡
毎日新聞 2022/3/20

住宅設備機器大手TOTO(本社・北九州市)の子会社社員だった宗像市の男性(45)が、業務でうつ病になったとして
労災認定と療養費支給を国に求めた訴訟の判決が18日、福岡地裁であった。小野寺優子裁判長はうつ病と業務との因果関係を一部認め、
国の療養費不支給は「違法」として取り消しを命じた。

 

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(再掲)相談窓口設置が義務化

2022年03月27日 | 情報

相談窓口設置 2022年2月3日

中小企業についても、4月よりパワハラ防止法(2020年6月1日施行)により、パワハラ対策のための相談窓口設置が義務化されます。
2020年6月1日、改正・労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(パワハラ防止法)が
施行されました。
なお、中小企業については2022年3月31日まで努力義務となっています。
改正法令を具体的に示しているのが、職場におけるハラスメント関係指針(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号)です。

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/harassment_sisin_baltusui.pdf

以下、指針のポイントです。
○相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
具体的には、
・相談に対応する担当者をあらかじめ定める。
・相談に対応するための制度を設ける。
・外部の機関に相談への対応を委託する、等々です。

○相談窓口担当者は相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
また、相談窓口においては、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、
発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、
広く相談に対応し、適切な対応を行うこと。

具体的には、
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる
仕組みをつくること。
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルにもとづき対応すること。
・相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応について研修を行うこと。

○さらに、パワハラの相談窓口をセクハラ等の相談窓口と一体化し、一元的に相談に応じる体制として整備することが望ましいとしています。
さて、以下に中小規模の企業・事業場における、具体的な運用の一例を紹介します。
50~100人規模の中小規模の企業・事業場においては、相談窓口を設置しても、相談者は間違いなく永遠に「ゼロ」でしょう。
なぜなら、相談者と相談を受けるものは、すべて顔見知りだからです。
では、どうするか。企業・事業場内に外部の相談機関の一覧表を掲示してください。
これで「外部相談窓口の掲示」は、立派に「相談行為」です。

以下、外部の相談窓口です。
○会社がある場所の労働局または労働基準監督署の総合労働相談コーナー(電話による相談も可)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kijyungaiyou/kijyungaiyou06.html

○各都道府県労働局の総合労働相談コーナー

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

○個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会

https://www.mhlw.go.jp/churoi/assen/index.html

○法テラス(日本司法支援センター)

https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/call_center/index.html

○みんなの人権110番 全国共通人権相談ダイヤル

https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html

○かいけつサポート

https://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/itiran/funsou022.html

参考までに、対象となる企業がパワハラ防止法に定められたパワハラ対策を怠った場合、直接的な罰則は設けられていません。
しかし、厚生労働大臣が必要だと認めたときは、事業主に対して助言、指導または勧告が行われることがあります。
また、勧告に従わない場合には、企業名を公表できるとされています。

 

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(参考)「陰性」感情

2022年03月25日 | 情報

コロナ禍で抱きがちな「陰性」感情 うつや他者への攻撃招く恐れ
毎日新聞 2022/2/26

新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛生活で、他人だけでなく、自分に対してもネガティブな気持ち「陰性感情」を抱きがちだ。それは、どんな行動や症状を引き起こし、どのように対処したらいいのか――。陰性感情や否定的感情の発生メカニズムに詳しい人間総合科学大学保健医療学部看護学科の国井享奈講師(60)=看護学博士=に聞いた。

――陰性感情とはどういったものですか。

◆不安や不快、怒り、悲しみ、嫉妬などのネガティブな感情で、大きく分けると2種類あります。一つは、自分の気持ちから湧いてくる感情で、自分で制御できます。もう一つは、外部からの影響によって発生する感情で、自分で制御できない受け身のものです。コロナ禍の不安や不快はこの受け身の感情です。どう対処していいのか分からない未知のウイルスに世界中が不安に陥りました。人との交流を避け、マスクを着用し、外出を控え、在宅ワークが推奨されています。こうした自粛生活で生活のリズムや環境が変化し、適応が難しかったり、経済状況が悪化したりしてストレスが高まることで陰性感情が増幅します。

睡眠の質と時間に影響、疲労感増す

 ――ストレスで、どんな症状が出ていますか。

◆感染拡大の第1波、第2波の2020年夏ごろに民間の調査会社がインターネットで医師にアンケートをしたところ、増えた疾患として「不安障害、うつ病などの精神疾患」が38%で最多となりました。「看護教育研究学会誌」(13巻1号)に掲載された論文によると、20歳~60歳未満の男女500人を対象にしたアンケートで、感染症対策という過去に経験のない緊張感や、在宅ワーク、運動不足などから睡眠の質と量に悪影響が出ています。睡眠障害はうつ病などのリスクになり、自粛生活で感情を抑制することで疲労感も増します。生活環境の変化が2年も続き、状況は更に悪化しているでしょう。

――こうした症状にどう対処していますか。

男女で違いがあるようです。男性は「どうすることもできない『放棄・諦め』」と、自分は悪くないという「責任転嫁」が多く、それによって問題を解決する対処行動を取りやすい。一方、女性は「楽観的に考える『肯定的解釈』」や「だれかに話を聞いてもらうなどの『カタルシス』」といった対処行動を取り、情動に焦点をあてるタイプが多い傾向にあります。

「内省感情」が強くなりがち

 ――陰性感情に対処しきれないと、周囲にどんな態度を引き起こしますか。

◆他人に攻撃的な感情をぶつける▽感情を抑制する▽内省的な感情を持つ――です。攻撃的になり、他人の行動にイライラして怒鳴ったり注意したりする人がいます。一方で、日本人は普段から内省的な考え方の人が多く、感染者が自分を責めたり「申し訳ない」と落ち込んだりします。非感染者も「迷惑をかけないように」「自己管理や対策の取り組みが悪いのではないか」と自分の責任や落ち度を探しがちです。コロナ禍では一層、内省感情が強くなりがちです。

――何を心がけたらいいでしょうか。

◆他人に求めたり、攻めたりするより、自分に目を向け、自分の健康維持を第一に感染対策をすることです。免疫力を高めるため食事に気をつけ、睡眠や生活のリズムを規則正しくして健康な心の状態を保つ。睡眠不足は集中力もなくなるし、不安にもなります。1人でできる趣味を見つけることも大事です。楽しいことや美しいものに触れると、心の大きな栄養になります。感染死者数ばかり注目するのではなく、感染しても回復する圧倒的多数に注目した方が心は安定します。情報は全体を見ることで冷静な判断ができるようになります。

――陰性感情を抱いているのは一部の人だけですか。

◆自覚していない人は多いですが、コロナ禍では全ての人が陰性感情を抱いているという前提に立ったほうがいい。自粛生活と在宅ワークでコミュニケーションが減り、ネガティブな考え方になりがちです。日本人は元々、内省感情が強いのに、必要以上に強めてしまっている人もいるでしょう。企業が国のガイドラインに基づいてコロナ対策やルールを決め、在宅ワークを推奨するのは正しい取り組みですが、感染防止だけでなく、メンタルヘルスへの配慮も必要です。

不安を消すのではなく、自己制御で対応

 ――どのような配慮が考えられますか。

◆「怒りが生まれる仕組み」を一般社団法人・日本アンガーマネジメント協会がライターに例えて説明しています。普段は生まれないような陰性感情はガス、着火スイッチは「こうすべきだ」という「べき論」。コロナ禍ではこのべき論が横行していますが、現実とのギャップや裏切りなどで着火スイッチが押され、ガスに火がついて怒りは大きく燃え上がります。べき論を伝えるのと同時に、心身の健康を保つための基本的な指示も合わせて発信して、ガスがたまりすぎていないかどうか注意を向ける必要があります。

――コロナとの共生やポストコロナを視野に入れた対応は。

不安を消そうとすることはやめた方がいい。コロナのような未知の事象はいつでも起きる可能性があります。陰性感情は消さずに、自分で制御できる、対応できるという気構えでいることが大事です。マニュアルを厳格に守るだけでなく、状況に合わせて柔軟に対応する考え方を身につけていったほうがいいと思います。

国井享奈(くにい・じゅんな)
国際医療福祉大学大学院博士課程修了。看護師のメンタルヘルスの不調や、看護師の患者に対する陰性感情などについて研究。

 

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