「過労死等ゼロ」緊急対策(平28.12.26)については、既に17.3.14付で案内していましたが、
以下の関連通達を案内し忘れていましたので、遅ればせながら、以下に紹介します。
なお、当通達の発出により、企業としては、「精神障害に関する労災支給決定」に関し、シビアな対応が必要になるでしょう。
「過労死等ゼロ」緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進について
基発0331第78号 平成29年3月31日
都道府県労働局長 殿 厚生労働省労働基準局長
「過労死等ゼロ」緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進について
メンタルヘルス対策については、平成28年4月1日付け基発0401第72号
「ストレスチェック制度の施行を踏まえた当面のメンタルヘルス対策の推進について」(以下「推進通達」という。)に基づき
推進しているところであるが、今般、第4回長時間労働削減推進本部(同年12月26日開催)において「
『過労死等ゼロ』緊急対策」(以下「緊急対策」という。)が決定され、
メンタルヘルス・パワーハラスメント防止対策のための取組の強化等を実施することとされた。
これを踏まえ、平成29年1月20日付け基発0120第1号「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた
企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」
(以下「指導公表通達」という。)において、本社管轄署の署長等からの企業幹部等への指導の際には、
メンタルヘルス対策(パワーハラスメント対策を含む。)についても指導することとしたところである。
ついては、今後のメンタルヘルス対策の推進については、推進通達及び指導公表通達に加え、
下記によることとしたので、その対応に遺憾なきを期されたい。
記
1 取組の概要
精神障害に関する労災請求・支給決定件数は増加傾向にあり、
また、大企業においても過労による自殺事案が繰り返し発生するなど、
過労死等の防止に対する社会的要請はかつてなく高まっている。このような問題意識のもと、
今般とりまとめられた緊急対策を踏まえ、メンタルヘルス対策については、以下の取組を実施することとする。
(1) 精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場及び企業の本社事業場に対するメンタルヘルス対策の特別指導の実施
(2) 違法な長時間労働が認められる等の事業場に対するメンタルヘルス対策の指導の充実
(3) パワーハラスメントの予防・解決に向けた周知啓発の徹底
(4) 長時間労働等によりハイリスクな状況にある労働者を見逃さない取組の徹底
2 精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場及び企業の本社事業場に対するメンタルヘルス対策の特別指導の実施
精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場及び企業の本社事業場に対して、
以下のとおり、メンタルヘルス対策に係る特別指導を実施することとする。
(1) 精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施すること。
また、上記の指導結果等を勘案し、精神障害の再発防止を図るための総合的かつ継続的な改善の指導が
必要と認められる場合には、当該事業場に対して、
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第79条に基づき、衛生管理特別指導事業場に指定し、
メンタルヘルス対策に係る取組の改善について指示すること。
なお、長時間労働の疑いや、長時間労働による過労死等に関する労災請求が行われたことにより
既に監督指導等を実施した事業場については、当該個別指導の対象としないこととすること。
(2) 企業が、傘下事業場において、概ね3年程度の期間に、精神障害に関する労災支給決定が2件以上行われた場合には、
当該企業の本社事業場に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施し、
全社的なメンタルヘルス対策の取組について指導を行うこと。
また、上記の精神障害に関する労災支給決定に過労自殺(未遂を含む。)に係るものが含まれる場合には、
当該企業の本社事業場に対して、法第79条に基づき、衛生管理特別指導事業場に指定し、
メンタルヘルス対策に係る取組の改善について指示するとともに、全社的な改善について指導すること。
なお、これらのメンタルヘルス対策に係る全社的な改善の指導については、
指導公表通達の記の2又は3に基づく本社指導を実施する場合、当該企業は対象としないこととすること。
3 違法な長時間労働が認められる等の事業場に対するメンタルヘルス対策の指導の充実
時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超える等の事業場に対する監督指導等においては、
ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策に関する法令の遵守状況の確認を行うとともに、
違法な長時間労働や過労死等が認められた場合には、産業保健総合支援センターの
メンタルヘルス対策の専門家(メンタルヘルス対策促進員)による訪問指導の受入れについて、強く勧奨を行うこと。
4 パワーハラスメントの予防・解決に向けた周知啓発の徹底
事業場におけるパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組(以下、「パワーハラスメント対策」という。)の浸透を図るため、
メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導や長時間労働が行われている事業場に対する監督指導、集団指導等の際に、
「パワーハラスメント対策導入マニュアル」やパンフレット等を活用し、
パワーハラスメント対策の取組内容について指導を行うこと。
特に、上記2(2)の企業の本社事業場に対する特別指導においては、
全社的なパワーハラスメント対策が講じられるよう周知啓発を行うこと。
なお、当該対応は、個別のパワーハラスメント事案に対する具体的な是正についての指導を意味するものではないこと。
5 長時間労働等によりハイリスクな状況にある労働者を見逃さない取組の徹底
法第66条第4項により、都道府県労働局長は、労働衛生指導医の意見に基づいて、
事業者に臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
その指示を発する場合としては「労働安全衛生規則の施行について」(昭和47年9月18日付け基発第601号の1)の
記のⅠの第二の37において示されているところであるが、長時間労働を行う労働者に対して、
過重労働による健康障害の防止対策が講じられていない場合もこれに含まれると考えられるものであること。
事業場において、長時間労働を行う労働者に対して、過重労働による健康障害の防止対策が講じられていない場合で、
労働者の健康を保持するため必要があると認めるときには、労働衛生指導医の意見に基づき、
事業者に対して、長時間労働者全員への医師による臨時の健康診断として問診(緊急の面接)を実施するよう指示すること。