中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

新・復職・休職に関する質問⑥

2019年09月30日 | 情報

Q:メンタル不調で休職する従業員がいます。
当該従業員には、当社の就業規則、賃金規則、休職中の過ごし方などを説明しなければなりませんが、
同時に、休職期間や休職期間満了時の対応など、本人にとってデリケートな規程も説明すべきでしょうか。

A:従業員は、就業規則を熟知している、会社側は熟知させているのが原則ですが、
多くの従業員は就業規則など会社の諸規程を知らないのが実態です。
ですから、従業員が休職する際には、多岐にわたり沢山の決まり事を説明しなければなりません。
従って、大規模の企業においては、当然にマニュアル化して準備しています。
御社の場合はいかがでしょうか?出来ていない場合は、早速、具体化してください。

ただし、病状(急性期)によっては、休職時に説明しても理解が進まない場合もありますので、
病状が回復期になってから説明することも検討してください。
それから、ご心配はもっともなことですから、休職期間や休職期間満了時の対応などデリケートな規程も、
休職時に説明することが原則ですが、従業員が冷静な心理状態になる、
病状が安定期になってから説明することも検討してください。
そうかといって、余りにも遅れてしまっては、トラブルの原因にもなります。
また、当該従業員のご家族に、同様な説明をしておくことも検討してください。
特に、当該従業員とご家族との住まいが別々の場合は、必須の要件といえます。

結論としては、対象の従業員の病状、体調、心理状態によって、ケースバイケースの対応になります。
「聞いていなかった」ということがないように、漏れがないような周到な対応が必要です。

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新・復職・休職に関する質問⑤

2019年09月27日 | 情報

Q:当社の従業員が、ふとしたことで泣き出すことがあります。
事情を聴くと、ストレスで追い詰められているとのことでした。なお、クリニックには受診していないとのことです。
当社には、産業医も保健師もいません。どのように対応したらよいでしょうか。

A:このような事案は業務多忙に紛れて、放置してしまうことが多いようですが、よく気が付かれました。
まず、御社の社内の空気に好感が持てます。

また、当該従業員も素直に質問に応じている様子が窺えます。もう一度面談して、もう少し詳しい状況を把握してください。
なお、本人が嫌がることまで追求する必要はありません。

①  現在の心身の状況を具体的に聴きます。日常の体調と異なることは何か、です。
②  ストレスで追い詰められているとは、具体的にどういうことか、です。
③  睡眠時間はどうか、食欲はあるか、です。

以上のようなことを聴けば、診療機関を受診すべきという結論になるのでしょう。

受診する診療機関は、当該従業員の判断に任せてよいでしょう。
素直に応じてくれればよいのですが、いきなり、精神科専門医を受診しなさいといっても、拒否される可能性があります。
とりあえずは、掛かりつけの内科医でよいでしょう。
手に負えないようであれば、診療した内科医が、精神科専門医の受診を勧めることでしょう。
診療結果は、必ず報告させましょう。診断書に休養が必要とあれば休職させることになるでしょう。
なお、時間に余裕があり、当該従業員が了承すれば、一回目の受診には同行することも検討してください。

次に、精神疾患の場合にあることなのですが、従業員が診療機関の受診を拒否することがあります。
通常の就業規則では、従業員は疾患があれば、当然に診療機関を受診するのが前提ですから、
就業規則には、受診を拒否することを想定した規程は、多分ないことでしょう。
ですから、就業規則に規定されていないのに、診療機関を受診しなければならないというのはおかしいではないかと、
疑義を呈する従業員がいるかもしれません。
受診したくはないので、理由を探すのですね。
しかし、信義誠実(信義則)の原則(民法第1条第2項)がありますので、穏やかな態度で説得してください。

信義誠実(信義則)の原則とは、公私は問わず、相互に相手方を信頼し、誠実に行動し裏切らないようにするべき原則のことです。

 

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違法残業の事業所1万超

2019年09月26日 | 情報

今回の法改正で難しいのは、新36協定の作成方法と、年次有給休暇5日の付与方法、それと労働時間管理でしょう。
特に、新36協定を法令通りに締結し、労基署に提出できないと、従業員に一切の残業を命じることができなくなります。

違法残業の事業所1万超 調査対象の4割、厚労省
9/24 共同

厚生労働省は24日、違法な長時間労働(残業)が疑われる全国の2万9097事業所を2018年度に調べた結果、
約40%の1万1766カ所で法令違反を確認したとの監督指導結果を発表した。
母集団が異なり、単純比較はできないが、17年度も約45%、1万超の事業所で確認されており、
違法な状況が依然残っている実態が浮かんだ。
労働者に残業をさせる場合には、労使間で「三六協定」を結ぶことが必要。協定がなかったり、協定の上限を超えたりすると違法となる。
働き方改革関連法の本格施行で、19年度からは大手企業対象に残業時間の罰則付き上限規制も始まった。

長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果を公表します

報道関係者各位 令和元年9月24日(火)【照会先】労働基準局 監督課 過重労働特別対策室

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06801.html

〇厚生労働省のHP(労働基準法違反を許すな!労働者)を参照してください。

http://www.roudousha.net/

 

 

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新・復職・休職に関する質問④

2019年09月25日 | 情報

Q:うつ病で休職中の従業員がいます。休職期間中には会社としてどのような対応をすればよいでしょうか?
それとも、まったく本人任せにしておくのがよいのでしょうか?

A:原則論は、病状を回復させ職務復帰するのは、本人の責任で行わなければなりません。
余計な介入は、必要ありません。介入しすぎて、余計な問題を惹起させることは避けなければなりません。
しかし、企業には、休職中の従業員に対しても安全配慮義務を負います。
ですから、復職するまで無視していてもよいのかというと、そうではないと云わなければなりません。
云わば会社は、「つかず離れず」の間隔(感覚)で、休職者と相対さなければならないのです。難しい間合いです。

休職に入った段階または病状が安定した段階で、休職期間中の過ごし方、会社との連絡方法、
給与をはじめとする会社の諸規程等を案内します。
次に大切なのは、上述した考え方を具体化することです。
休職者との接触方法は、原則として直接、面談することをお勧めします。
休職者の生活ぶりや体調面の確認もできますので、面倒でしょうが、安全配慮義務の観点から実施することをお勧めします。
接触方法ですが、休職中であっても、給与の支払いと、社会保険料の徴収が必要になります。
これを休職者との定期的な接触として活用します。つまり、1か月に1回は休職者との面談が適当と考えます。
なお、面談の頻度は必要に応じて、調整してください。
また、若年者だと親元に戻って、療養することもあります。
このような場合には、直接出向くようなことは、物理的に難しいでしょうから、
休職者本人と近親者に一任することになりますが、接触を絶やさないことが大切です。
なお、ITを活用した連絡手段(例・テレビ電話)もありますので、有効に活用してください。

さらに、3か月に1回程度の頻度で、主治医の診断書の提出を求めます。
受け取りは、郵送ではなく、担当者が直接自宅を訪問のうえ、受け取ります。
こうして、会社は当該従業員に、きめ細かく対応していることをアピールすることにより、早期の復職を促すことが大切です。

最後に、休職者と接触する会社側としては、できる限り特定の担当者に固定することが必要です。
毎月、休職者に面談する担当者が異なると、注意していても発言内容に微妙な差異が生じますので、
休職者に余計な心労を与える可能性があるからです。
そして、当該担当者は、詳細な記録を残し、産業医を含む担当者間で情報共有することが求められます。

結論として、休職期間中の対応として、「放任」することはありえません。

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新・復職・休職に関する質問③

2019年09月24日 | 情報

Q:会社の総務担当です。うつ病で休職中の従業員から突然の主治医の診断書を持参して、
復職したいとの申し入れがありました。
休職中も連絡を絶やさずにしていましたから、当分は復職がないものと考えていましたので、
わたし一人で対応していますので受け入れ態勢がバタバタしています。どのような対処方法が良いかご教授ください。

A:中小規模の事業場の大変さが、ひしひしと伝わってきます。
しかし、情報が断片的ですのでご相談から推測できることをアドバイスします。

まず、診断書の記述を確認します。産業医がいれば、その内容を確認してもらい、意見をもらいます。
多分、産業医は当該診断書では情報不足ですから、主治医との情報交換が必要になります。
結果、産業医としての意見をもらい、限られた関係者間で討議し、結論を得ます。

原則、復職を受け入れることになるでしょう。
ただし、いきなりの原職復帰は困難でしょうから、徐々に慣らしながら原職に戻しましょう。
一方で、産業医や保健師がいない場合は、治療は継続していますから、
当該主治医に相談し、復職へのアドバイスをもらいましょう。

いったん出た、復職可の診断書を拒否することは、それなりの論拠が必要ですから、
場合によっては法廷での争いに発展することが想定でします。
しかし、中小規模の事業場では物理的に対応は困難と想定できます。
それならば、復職を認めて、復職後の対応を当該従業員を含めて、相談しながら進めていくことが、
少ない労力で穏便に処理できる方法と考えます。

このような対応に不満がある場合には、当該休職者の休職期間中に対応すべきことを、
きちっとやっておくことが必要なのですが、物理的に難しいことと推察いたします。

また、就業規則に職場復帰支援制度がきちっと規定されていればよいのですが、
それもないでしょうし、あったとしても、その規程を運用できる人員配置ができているかどうかも問題となるでしょう。

そこで、ひとつ検討いただきたいことは、就業規則に休職期間の通算規程を追加することです。
これがないと、休職・復職を何回も繰り返す事態が起きるのです。
反対に、通算規程があれば、休職者も復職には慎重になることでしょう。いかがでしょうか?

 

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