中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

安衛法改正の影響⑬最終回

2019年07月31日 | 情報

〇これまでのまとめです

新たな業務
長時間労働者に対する面接指導
及びその結果に基づく措置 等
  ↓
産業医と契約内容見直しの打合せ 
  ↓ 
業務量と契約料の比較    → 見合っていれば、そのまま継続
  ↓
民・民の問題        → または、契約料に見合った業務のみ契約

                →安衛法違反、もう一人の産業医と契約

実態に即した契約料へ変更  → 折り合わない場合は、産業医が辞退
(一般的には値上げ)          ↓
  ↓              産業保健体制の崩壊

チーム」で進める産業保健活動
健康経営の実践(先行投資)       ↓
  ↓              安衛法違反の状態になる     
                     ↓
産業医の業務量の削減       訴訟リスクの増大
  ↓        
契約料の圧縮(間接費用の削減)プラス利益拡大


〇近い将来に予測できること

○医師会は、産業医の地位向上、仕事の内容や責任に見合った報酬、
 身分保障などを働きかける

産業医―現実を再認識する、報酬の値上げを要請する

事業所―高額の報酬は、支払うことができない、支払いたくない

○産業医不足が深刻になる  
  産業医―低額の報酬では、やりたくない

      産業医としての責任が重くなり、片手間でできない、

      本業に専念したい     

  産業界―良質な産業医を確保できない、医師会・行政に要請する

○法令違反が蔓延する

  事業所-予算(間接費用)の範囲内での産業医活動で、十分

  労基署―法令遵守を求める

  行政―民民の問題として、放置できなくなる(のでは)

  ⇒顧問社労士―解決策を模索・提案しなければならない

如何でしたでしょうか?
専門誌やマスコミ、さらには弁護士や他の社労士からは、今のところ類似の情報発信はありません。

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SNSカウンセリング

2019年07月30日 | 情報

若者の多くは、SNS(social networking service)を日常的なコミュニケーション手段としています。
文部科学省、厚生労働省はこれに着目し、補助事業を行っています。

以下、厚生労働省のHPより、引用します。

自殺対策におけるSNS相談事業 (チャット・スマホアプリ等を活用した文字による相談事業) ガイドライン 概要

目的

近年、若者の多くが、SNS(social networking service)を日常的なコミュニケーション手段として用いている。
これを踏まえ、厚生労働省では、平成30年3月に、自殺防止を目的としたSNSを活用した相談事業
(以下「自殺防止SNS相談事業」と いう。)を開始した。

○自殺防止SNS相談事業には対面相談とは違う技能、配慮が必要。
こうした点を含め、自殺防止SNS相談事業実施団体のノウ ハウ等を集約し、公開することで、
社会資源としての自殺防止SNS相談事業の発展に資することを目的として、ガイドライン を取りまとめた。
※平成30年度厚生労働省補助事業「若者に向けた効果的な自殺対策推進事業」において、
相談事業実施団体及び有識者で構成する作業部会で取りまとめられたもの。

ポイント
○相談事業実施団体の責任者に対して、自殺防止SNS相談事業を行ううえで必要な相談体制等のあり方について提示。
○相談員に対して、相談を行う基本姿勢、自殺防止SNS相談の特徴、相談の際の注意点等を提示。
○相談員の研修の主な項目を示した上で、研修で用いる参考資料、事例集を提示。

file:///C:/Users/shas/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/5ZU6HBQY/000494484.pdf

 

 

 

 

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障害者雇用促進法の改正

2019年07月29日 | 情報

去る6月14日に、「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。
施行は、令和2年4月1日です。まだ、先の話ですが、取りあえず紹介しておきます。

この改正法案は、障害者の雇用を一層促進するため、
事業主に対する短時間労働以外の労働が困難な状況にある障害者の雇入れ及び 継続雇用の支援、
国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置を講じようとするものです。

■改正の概要
 1.障害者の活躍の場の拡大に関する措置
(1)国及び地方公共団体に対する措置 
①国及び地方公共団体の責務として、自ら率先して障害者を雇用するように努めなければならないこととする。 
②厚生労働大臣は、障害者雇用対策基本方針に基づき、障害者活躍推進計画作成指針を定めるものとし、
国及び地方公共団体は、 同指針に即して、障害者活躍推進計画を作成し、公表しなければならないこととする。 
③国及び地方公共団体は、障害者雇用推進者(障害者雇用の促進等の業務を担当する者)
及び障害者職業生活相談員(各障害者の 職業生活に関する相談及び指導を行う者)を選任しなければならないこととする。 
④国及び地方公共団体は、厚生労働大臣に通報した障害者の任免状況を公表しなければならないこととする。 

⑤国及び地方公共団体は、障害者である職員を免職する場合には、公共職業安定所長に届け出なければならないこととする。

(2)民間の事業主に対する措置 
①短時間であれば就労可能な障害者等の雇用機会を確保するため、
短時間労働者のうち週所定労働時間が一定の範囲内にある者 (特定短時間労働者)を雇用する事業主に対して、
障害者雇用納付金制度に基づく特例給付金を支給する仕組みを創設する。 
②障害者の雇用の促進等に関する取組に関し、その実施状況が優良なものであること等の基準に適合する中小事業主
(常用労働者300人以下)を認定することとする。

 2.国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置
(1)厚生労働大臣又は公共職業安定所長による国及び地方公共団体に対する報告徴収の規定を設ける。
(2)国及び地方公共団体並びに民間の事業主は、
障害者雇用率の算定対象となる障害者の確認に関する書類を保存しなければならないこととする。
(3)障害者雇用率の算定対象となる障害者であるかどうかの確認方法を明確化するとともに、
厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、国及び地方公共団体に対して、確認の適正な実施に関し、
勧告をすることができることとする。 

施行期日 2020年4月1日(ただし、1.(1)① 及び 2.(1)については公布の日、
1.(1)③④⑤ 並びに 2.(2)及び(3)については公布の日から 起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日)

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安衛法改正の影響⑫

2019年07月26日 | 情報

さらに、従業員と企業体質の健康確保が、企業の収益増大につながる、ということです。

先に紹介した胆管がん問題の大阪の印刷会社は、胆管がんを発症し元従業員ら17人に、
それぞれ1千万円超の補償金を支払ったとあります。本来であれば、その補償金の額は、
一桁違って当然でしょうが、当該企業の経営内容から推測すれば、ぎりぎりの補償金額なのでしょう。

産業医の職務に、
イ 長時間労働者に対する面接指導及びその結果に基づく措置(H17,H30法改正)がありますが、
面接指導を必要とする長時間労働者がなくなれば、産業医の業務は大幅に削減できます。
同じく
ウ ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導、
その結果に基づく措置(法26法改正)があります。

長時間間残業を削減し、職場環境の改善を促進できれば、高ストレス者が削減できますので、
同様に面接指導を必要とする産業医の業務は大幅に削減できます。

定期健康診断の有所見率の推移(3厚生労働省 「定期健康診断結果調」)をみてみると、
H3年が27.4%、H4年が33.2%、H10年が41.2%、H20年が51.3%、
H29年が54.1%と右肩上がりとなっています。
これも、企業・事業所内において、健康増進活動に努めれば、
定期健康診断の有所見率を低下させることができますので、
これも産業医の業務負担を削減できる効果があります。

なお、アメリカでのエビデンスになりますが、ミシガン大学の研究グループの成果をもとに、
米国商工会議所等が算出発表したものをみると、従業員の健康関連コストの構造(金融関連企業の場合)は、
アブセンティーズム(病欠)は、僅かで。60%以上がプレゼンティーズム(従業員が職場に出勤しているものの、
何らかの健康問題によって、業務の能率が落ちている状況
)であると。
なお、医療費は、15%程度だそうです。これも企業内における健康増進活動を進めることができれば、
企業の収益増大につながるということになります。

このように、健康経営に先行投資しても、
余りあるリターンを得られることがご理解いただけるのではないでしょうか。

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安衛法改正の影響⑪

2019年07月25日 | 情報

次に、「法令順守と安全配慮義務の履行」です。

健康経営を目指すのであれば、安衛法を遵守しなければならないことはもとより、
いくつかの課題をクリアしなければならないのです。
その安衛法には、法令違反すると罰則があるのですが、安全面は人命に関わる事故につながりますので、
罰則も重くなっています。
しかし、衛生面は、せいぜい罰金50万円程度ですから、企業側はとても安易に考えがちです。

ところが、安衛法、その他関連する法律に違反が認められると、
労契法第5条の「安全配慮義務」違反を問われることになるのです。
「安全配慮義務」違反が認められと、億単位での民事上の損害賠償責任を問われることもあります。
こうなると、企業の存亡の危機に見舞われる恐れもあります。

しかも、「安全配慮義務」違反は、企業側にとって最近とみにそのハードルが高くなってきた傾向があるのです。
以下に主な判例を列挙しますので、参考にしてください。

○陸上自衛隊八戸車両整備工場事件(最三小1975.2.25判)

○川義事件(最三小1984.4.10判)

○高血圧症の基礎疾病を有していた労働者が脳出血により死亡した事案。
労働時間の管理については労働者自らの裁量に委ねられていたにもかかわらず
企業側が業務軽減等適切な措置を講じなかったことをもって安全配慮義務違反を認めた例
(システムコンサルタント事件・東1999.7.28判)

○課長職に昇進した後、診断書を提出して休業しようとしたものの、上司からのアドバイスを受け、
そのまま休業せずに業務に従事し、最終的に自殺するに至った事案。
たとえ自らの意思で上司のアドバイスを聞き入れてそのまま業務に従事し続けたということであったとしても、
いったん労働者が医師の診断書を提出して休養を申し出ている以上
企業側としては、労働者の心身の状況について医学的見地に立った正確な知識や情報を収集し、
労働者の休養の要否について慎重な対応をする必要があったとして、
安全配慮義務違反を認めた例(三洋電機サービス事件・東高2002.7.23判)

○労働契約法第5条(2007年12月5日公布、法律第百二十八号)

○陳旧性(健康診断受診時にはまったく無症状)心筋梗塞等の基礎疾病により就業制限されていた労働者が
宿泊を伴う研修に参加したことによって急性心筋虚血を発症して死亡した事案。毎月の保健師による職場巡回の際、
当該労働者から体調不良等の訴えが一切なかった場合であっても、
当該労働者を研修に参加させるかどうかを決定するのには、
企業側において、当該労働者が受診している医療機関からカルテを取り寄せるとか、
主治医よりカルテ等に基づいた具体的な診療、病状の経過及び意見を聴取する必要があったとして、
これを怠ったのは安全配慮義務違反に該当するとされた例(NTT東日本事件・最2008.3.27判)

○うつ病にり患した労働者が、休職期間満了後に解雇された事案。解雇が無効とされるとともに、
企業は必ずしも労働者からの申告がなくてもその健康にかかわる労働環境等に十分な注意を払うべき義務を負っており、
それにもかかわらず、これを怠ったとして企業側に安全配慮義務違反を認めた例
(東芝(うつ病・解雇)事件・最2014.3.24判)

○うつ病にり患して通院加療中の派遣労働者が自殺した事案。
派遣元及び派遣先いずれにおいてもうつ病り患の事実までも認識し得ず、
かつまた、業務の過重性も認められない状況であったにもかかわらず、
当該派遣労働者の体調か十分でないことを認識した以上は、単に調子はどうかなどと抽象的に問うだけでは足りず、
不調の具体的な内容や程度等をより詳細に把握し、
必要があれば産業医等の診察を受けさせるなどの措置を講じるべきであったとして、
派遣元及び派遣先両者の安全配慮義務違反を認めた例(ティー・エム・イーほか事件・東高2015.2.26)

 

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