中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

令和5年度「自殺予防週間」毎年9月10日から16日

2023年08月31日 | 情報
厚労省HP 9月10日から9月16日は「自殺予防週間」です
~関係府省庁等と連携し、さまざまな取り組みを実施します~
令和5年8月29日(火)
照会先 社会・援護局 総務課自殺対策推進室

厚生労働省は、毎年9月10日から9月16日の「自殺予防週間」において、自殺防止に向けた集中的な啓発活動を実施しています。
このたび、関係府省庁、自治体、関係団体における、令和5年度の取り組みをまとめましたので公表します。
昨年の自殺者数は前年を上回り、特に小中高生の自殺者数が過去最多となるなど深刻な状況となっています。
自殺予防週間では、電話やSNSによる相談支援体制の拡充や、主にこども・若者に向けて、
ポスターや動画による相談の呼びかけなど集中的な啓発活動を実施します。
また今年は、自殺予防週間に先立ち、こども・若者の自殺防止に向けた取り組みを強化するため、
こども家庭庁、文部科学省、内閣官房孤独・孤立対策担当室と連携し、
8月1日からこども・若者に向けた集中的な啓発活動を実施しています。

引き続き「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現に向け、自殺対策を推進していきます。
また、自殺に関する報道は、その報じ方によっては自殺を誘発する可能性があるため、
各メディアの皆様は、WHOの『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道を行っていただくよう、自殺対策へのご協力をお願いします。

・サイト「まもろうよ こころ」

・令和5年度自殺予防週間広報ポスター

・リーフレット

・令和5年度自殺予防週間動画
知らせてほしい、心のSOS。(15秒版)


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事業場内産業保健スタッフ等によるケア

2023年08月30日 | 情報
◎「事業場内産業保健スタッフ等」とは、
産業医等、衛生管理者等、保健師等、こころの健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ、事業場内メンタルヘルス推進担当者を云います。
「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」とは、
事業場内産業保健スタッフ等が、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、
従業員及び管理監督者に対する支援を行うとともに、
具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、メンタルヘルスに関する個人の健康情報の取り扱い、
事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口となること等、
事業場の「心の健康づくり計画」を具体的に実施することを云います。

◎ある産業保健、産業医学の専門誌の掲載記事を念頭に、個人の見解を述べます。
当記事では、複数の専門家が、ある事例を題材にして中小規模の企業におけるメンタルヘルス対策を検討しています。
複数の専門家とは、産業医、医学系准教授、医師、労働衛生コンサルタント、公認心理師、産業カウンセラー、保健師等々です。

当記事の結論としては、
〇「心の健康づくり計画」の策定する。
〇衛生管理者、嘱託産業医のほかに、産業カウンセラー、産業看護職(産業保健、師産業看護師)、
心理職(公認心理師、臨床心理士)を採用・委嘱し、
産業保健スタッフによるチームによる対応、つまり、複数の専門家に委嘱すべきである。
〇人事部門や管理監督者とも連携し、安全衛生委員会を有効活用し、グループ会社や外部機関などのリソースも探して連携を深める。
の3点に集約されます。

◎提言は、至極妥当なものです。
しかし、中小規模の企業にとっての最大の難点は、費用です。
確かに必要かもしれませんが、上述の専門誌の掲載記事では、
中小規模の企業の「懐ぐあい」を忖度している様子は全くありません。
余談ですが、「それは民民の問題」と口を滑らせた霞が関のキャリア官僚と同じですね。
そうでなくても、すでに必要に迫られて税理士、弁護士、社労士、産業医等に業務を委嘱していますので、
これ以上に経費をねん出するのは、難題ですよね。

◎そこで、社内体制づくりを中心に、以下の提案について検討してください。

1案 50人未満の事業場であっても、衛生管理者を任命してください。

最近の衛生管理者試験の難度が上がっているようですが、有意な従業員が必ずいるはずです。
資格取得に必要な費用や、資格取得後の資格手当も、僅かな額ですから会社が捻出することを検討してください。

2案 50人以上では義務ですが、できれば複数の配置をお勧めします。
衛生管理者をひとり配置することは法令上の義務ですが、
ふたりを配置してはならないという法令はありませんので。
なぜなら、ひとりであると孤立する可能性がありますが、
二人であれば、いろいろと相談しながら効果的な対策を講じることができます。

3案 「事業場内メンタルヘルス推進担当者」を配置してください。

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(厚労省)」

では、職場のメンタルヘルス対策を進めるために、
「事業場内メンタルヘルス推進担当者」を選任する努力義務が規定されています。
そこで、衛生管理者に当該資格を取得させ、事業場内メンタルヘルス対策体制を強化します。
なお、資格取得には相当な費用が必要ですので、テキストを取り寄せて学習させれば、
「社長公認のメンタルヘルス推進担当者」とすれば、実質は変わりません。

〇事業場内メンタルヘルス推進担当者の役割は、以下の4点です。
・心の健康づくり計画の策定・労働者への周知・実行状況の把握の実務
・セルフケア、ラインによるケアを推進するための労働者教育、管理監督者教育の計画・立案・実施・評価の実務
・事業場内のメンタルヘルスに関する相談窓口
・事業場外資源との連携の窓口

〇事業場内メンタルヘルス推進担当者養成研修(中災防)

〇事業場内メンタルヘルス推進担当者 テキスト

4案 事業場内の「安全衛生委員会」を事業場内メンタルヘルス対策の推進組織として位置づけて、
一定の権限を与え、即応体制をつくります。
従って、必要なメンバーは、全員を委員会の委員に任命します。
委員は、事業者が任命すれば、誰でも、何人でもOKです。
参照;安衛法第17~18条

なお、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(厚労省)」では、
事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うことが必要であり、
衛生委員会等を活用することが効果的であるとしています。

・安衛法第18条
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、
事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

・労働安全衛生規則第22条
 安衛法第18条第1項第4号の労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項には、
次の事項が含まれるものとする。
八 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
九 長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
十 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。

5案 嘱託産業医の見直しをお勧めします。

ある産業医に業務委嘱したからといって、活動に不満があっても契約を解消できないわけではありません。
産業医の報酬は、東京都内であれば年間100万円程度です。
報酬を費用と考えず、100万円を投資と考え、実績・効果を回収しなければなりません。
ただし、会社側と産業医とのコミュニケーション不足が原因かもしれませんので、改善策も検討してください。

小職が掌握している、中小規模の事業場における産業医の悪しき現状例です。
・先代社長からのお付き合いなので、変えにくい。
・社長に紹介された産業医なので変えにくい、交代を言い出しにくい。

6案 団体経由産業保健活動推進助成金」(令和5年度版)の活用
中小企業や労災保険の特別加入者を支援する団体等が、傘下の中小企業等に対し、
産業医、保健師等の専門職の他、産業保健サービスを提供する事業者と契約し、産業保健サービスを提供した際、
その費用の一部を助成するものです(支給要領第3条第2項)。
本助成金の審査等は独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」といいます。)が行っています。

○(令和5年8月1日公表) 
令和5年度団体経由産業保健活動推進助成金は7月31日に第二次受付を終了いたしましたが、
予算の上限に達していないため、8月1日に再度受付を開始いたしました。

〇現在受付を停止している、以下の産業保健関係助成金については、廃止となります
(今後の申請については受け付けできないこととなります)。
・ 小規模事業場産業医活動助成金
・ ストレスチェック助成金
・ 職場環境改善計画助成金
・ 心の健康づくり計画助成金
・ 治療と仕事の両立支援助成金
・ 副業・兼業労働者の健康診断助成金
・ 事業場における労働者の健康保持増進計画助成金

<事業主団体等の皆様へ>





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主要な精神疾患の抑うつ症状が不眠と関連

2023年08月29日 | 情報
小職の素人的主張が証明されました。

主要な精神疾患に伴う抑うつ症状に主観的な不眠が関与
2023年7月31日 毎日

精神疾患の患者に高頻度で見られる抑うつ症状に、不眠が影響を及ぼしていることを表すデータが報告された。
大うつ病性障害だけでなく、統合失調症や不安症などの主要な精神疾患の抑うつ症状が不眠と関連しており、
そのことが疾患の重症度に影響を及ぼしている可能性も考えられるという。
日本大学医学部精神医学系の中島英氏、金子宜之氏、鈴木正泰氏らの研究によるもので、「Frontiers in Psychiatry」に4月24日掲載された。
精神疾患で現れやすい抑うつ症状は、生活の質(QOL)や服薬アドヒアランスの低下、
飲酒行動などにつながるだけでなく、自殺リスクの上昇との関連も示唆されている。

一方、精神疾患に不眠が併存することが多く、大うつ病性障害(MDD)患者では不眠への介入によって抑うつ症状も改善することが報告されている。
ただし、MDD以外の精神疾患での抑うつ症状と不眠の関連はよく分かっていない。
MDDと同様にほかの精神疾患でも抑うつ症状と不眠が関連しているのであれば、不眠への介入によって抑うつ症状が改善し、予後に良好な影響が生じる可能性も考えられる。
鈴木氏らはこの仮説に基づき、以下の検討を行った。
この研究は、うつ病の客観的評価法を確立するために行われた研究の患者データを用いて行われた。
解析対象は、日本大学医学部附属板橋病院と滋賀医科大学医学部附属病院の2017年度の精神科外来・入院患者のうち、研究参加に同意し解析に必要なデータがそろっている144人。
疾患の内訳は、MDDが71人、統合失調症25人、双極性障害22人、不安症26人。
不眠は、アテネ不眠尺度(AISスコア)を用いた主観的な評価(24点中6点以上を臨床的に有意な不眠と定義)、および睡眠脳波検査による客観的な評価によって判定した。
抑うつ症状の評価には、ベック抑うつ質問票を用い、研究目的から睡眠に関する項目を除外したスコア(mBDIスコア)で評価した。
mBDIスコアは高値であるほど抑うつ症状が強いと判定される。
このほか、各疾患の症状評価に一般的に用いられているスケールによって重症度を評価した。

MDDだけでなく主要な精神疾患の全てで、主観的な不眠と抑うつ症状との関連が認められた
AISスコアで評価した臨床的に有意な主観的不眠は全体の66.4%であり、
疾患別に見るとMDDでは77.1%、統合失調症で36.0%、双極性障害で63.6%、不安症で69.2%だった。
不眠の有無でmBDIスコアを比較すると、以下のように4疾患のいずれも、不眠のある群の方が有意に高値だった。
MDDでは25.6±10.7対12.1±6.9(P<0.001)、統合失調症では22.8±8.6対11.1±7.0(P=0.001)、
双極性障害では28.6±9.5対14.5±7.4(P=0.009)、不安症では23.9±10.4対12.5±8.8(P=0.012)。
一方、睡眠脳波検査から客観的に不眠と判定された割合は78.0%だった。
疾患別に客観的不眠の有無でmBDIスコアを比較した結果、統合失調症でのみ有意差が認められた(18.1±9.3対9.9±7.1、P=0.047)。
次に、抑うつ症状と各精神疾患の重症度の関連を検討した。
すると、mBDIスコアと統合失調症の重症度(PANSSスコア)との間に、正の相関が認められた(r=0.52、P=0.011)。
これは、抑うつ症状が重度であるほど、統合失調症の症状も重いことを意味する。
同様に、mBDIスコアと不安症の状態不安(一過性の不安を評価するSTAI-Iスコア)との関係はr=0.63(P=0.001)、
特性不安(不安を抱きやすい傾向を評価するSTAI-IIスコア)との関係はr=0.81(P=<0.001)であり、いずれも有意な正の相関が認められた。
著者らは以上の結果を、「MDDだけでなく主要な精神疾患の全てで、主観的な不眠と抑うつ症状との関連が認められた」とまとめるとともに、
「不眠に焦点を当てた介入によって、精神疾患の予後を改善できる可能性があり、今後の研究が求められる。
例えば、各精神疾患の治療において、鎮静作用を有する薬剤を選択することが予後改善につながるかもしれない」と述べている。
なお、不眠の客観的な評価よりも主観的な評価の方が、より多くの精神疾患の抑うつ症状に有意差が観察されたことに関連し、
「病状に対する悲観的な認識が睡眠状態の過小評価につながった可能性が考えられるが、抑うつ症状に関連した睡眠障害を検出するという目的では、
主観的評価の方が適しているのではないか」との考察を加えている。(HealthDay News 2023年7月31日)
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2023/08/19 読売社説

2023年08月28日 | 情報
「心の病」と労災 パワハラを生む体質の一掃を
2023/08/19 読売社説

劣悪な職場環境や人間関係によって、働く人が心の病になるような状況は放置できない。
国や企業は、職場の意識改革を進め、環境の改善に努めなければならない。
仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症し、昨年度に労災と認定された人は
前年より81人多く、過去最多の710人に上ったと厚生労働省が発表した。
精神障害にも労災が適用されるという認識が広がり、申請件数が増えたためだ。
それだけ潜在的な問題が多かったことになる。
仕事のストレスで心理的に追い詰められる人が相次ぐ現状を、社会は重く受け止めねばならない。
認定理由で最も多かったのは、上司らから嫌がらせを受ける「パワーハラスメント」で147人に上った。
このうち12人は自殺を図っていた。長時間労働や過重なノルマといった理由もあった。
厚労省によると、パワハラは、職場での優位な立場をもとに、業務の適正な範囲を超えて苦痛を与えることと定義されている。
殴る蹴るといった暴行のほか、他の社員の前で威圧的に叱責したり、交際相手について 執拗しつよう に尋ねたりすることなども該当する。
昨年には、会社の新年会で、上司から賞状を「症状」と言い換えた書面を用意され、営業成績をけなされた部下の社員が自殺した問題も明らかになった。
各企業で職場の実態を把握し、どんな行為がパワハラに当たるのかを正しく理解する必要がある。その上で、 歪んだ「指導」を許さない環境づくりが重要だ。
パワハラと適切な指導との区別は難しい面もあるが、指導する際は「指摘するポイントを絞る」「感情的にならない」といった点に注意することが求められる。
社内で研修を進め、相談や通報の窓口を整備してもらいたい。パワハラ行為が明らかになった場合は、再発防止のためにも、厳しく対処することが欠かせない。
怒りを抑える「アンガーマネジメント」の手法を上司側に学ばせることも検討すべきだ。
中小企業では、専門知識を持つ人材が少なく、対応が難しいケースもある。国は企業向けの研修などの支援を充実させてほしい。
性的指向や性自認を巡るパワハラも顕在化している。最近では、上司から性的指向を暴露される「アウティング」の被害を受けた男性が労災と認められた。
安心して働ける職場にすることは、社員の意欲を高め、企業の生産性向上にもつながるはずだ。
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ラインケアの要点

2023年08月27日 | 情報

◎教科書では、「いつもと違う部下の様子に、早期に、気づきましょう」と強調しています。

しかし、「いつもと違う部下の様子に、早期に、気づく」ためには、
いつもの部下の様子」を熟知していなければなりません。
実際は難しい問題ですが、できていますか。

例えば、
部下の申出に、パソコンの画面を見ながら、応対していませんか
・部下の目を見て、会話していますか?
・「おはよう」と、朝のあいさつができていますか?
・一言も会話のない日がありませんか?
・業務の進度チェックをしていますか?
・部下の長所、短所を列挙できますか?
・部下の業績を列挙できますか?
・部下の提案に、聞く耳を持っていますか?
・部下の育成プランを持っていますか?

◎職場における心の健康づくり
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針、平成18年3月策定、平成 27 年 11 月 30 日改正)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

「いつもと違う」部下の様子
○ 遅刻、早退、欠勤が増える
○ 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
○ 残業、休日出勤が不釣合いに増える
○ 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
○ 業務の結果がなかなかでてこない
○ 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
○ 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
○ 不自然な言動が目立つ
○ ミスや事故が目立つ
○ 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

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