小職は、ストレスチェック制度に消極的な立場ですが、前向きに捉えている専門家もいます。
ストレスチェック制度の活用を推奨する専門家の提言を引用します。
職場に合うストレスチェックを 西規允氏
ここむ代表取締役
私見卓見 2020/2/20 2:00日本経済新聞 電子版
労働安全衛生法で、50人以上の労働者が働く職場がある事業者にストレスチェック実施が義務付けられて4年たった。中小企業でも年1回、医師などが常勤従業員の心身の負担を測るストレスチェックを行う。筆者は事業者のストレスチェック実施とその結果に基づく職場環境改善を支援している。
制度の目的は、労働者には心身の負担が高まったら産業医に相談するよう促し、事業者にはそもそも従業員のメンタルヘルスの不調が起きない職場づくりを求める「1次予防」にある。しかし、その有効性に疑問が上がっている。
厚生労働省はストレスチェックの指針とマニュアルを公開している。労働者のストレスを数値化し評価する方法や、労務管理上の規程作成、労働者の個人情報・プライバシー保護への配慮、不利益な取り扱いの禁止などを記し、事業者のガイドラインとなる。それらは数百ページに及び、多くの事業者には、毎年、ストレスチェックを行うだけで負荷が大きい。実施後の検証や、課題を見直して手順を改善するPDCAサイクルにまで着手する余裕がないのが実情だ。
法令で企業に従業員のストレスチェックを義務付ける取り組みは世界でも先進的だ。ただ、制度開始までの時間が短かったこともあり、ガイドラインが必ずしも職場の実情に合っていない。制度を本来の目的であるメンタルヘルス不調の防止につなげるには、経営者が指針やマニュアルの内容を、自社の事情や特性に合わせて前向きに読み替える必要がある。
例えば社員が産業医と面談する際、第三者に悟られないようにするとされているが、人数が少ない職場では難しい。また、産業医はまだ労働者に身近な存在とはいえずためらうこともある。マニュアルで認められているカウンセラーなど外部専門家による複数の相談先を設けるのは有効な手段だ。
職場環境を改善しようとする事業者は増えていると実感する。2020年からはパワーハラスメント防止策が大企業から順次、義務付けられ、メンタルヘルスは働きやすい職場のキーワードとなる。働き手の意識や行動に変化を促せる立場の経営者が実態に合わせたストレスチェック態勢を作り、実効性ある仕組みにすべきだ。