窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

薬を理解すれば薬は減らせる?-第91回YMS

2018年01月11日 | YMS情報


  1月10日、mass×mass関内フューチャーセンターにおいて、2018年最初となる第91回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

  例年インフルエンザが猛威を振るう季節に突入しています。今回の参加者の中にも残念ながら体調を崩されている方が何名かいらっしゃいました。そんな中、今回のテーマは「あなたは『薬』に頼りますか?それとも-薬に頼らないで健康になる秘訣」と題し、薬剤師で公認スポーツファーマシスト、認定ウェルネスファーマシストの沖原雄様にご講義いただきました。

  実は僕が沖原さんと初めてお会いしたのは昨年6月。第91回YMSの打ち合わせのためにお話しさせていただいたのですが、趣味の自転車競技から専門知識をスポーツに活かすためスポーツファーマシストになられたお話、西洋薬学と東洋薬学の知見から「本当に健康のためになる薬の使い方」のお話、これも趣味でされている出勤前の早朝農作業から土と触れ合うことの心身への影響のお話など、まさに目から鱗のお話ばかりで、今回の開催を非常に楽しみにしていました。



  さて、日本における保険医療支出は、実に家計の4.9%を占めているそうです。これは決して馬鹿にならない数字です。しかし、今回のお話は「だから薬を飲むのはやめよう」というのではなく、そもそも「薬」とは何なのかの基本を知ることにより、薬とより上手なつい付き合い方ができるのではないか、結果として多少なりとも保健医療支出も軽減できるのではないかということです。

  その「薬とは何なのか」ということですが、薬とは体内の受容体に作用し、症状を改善または予防するものであって、病気の原因そのもの(例えばウィルス)を根絶するものではないということです。薬を飲むことによって病気が治るのは、薬によって症状を抑えている間に、人間に本来備わっている自然治癒力が病気を治しているのだそうです。つまり、病気を治しているのは薬ではなく自分自身だということになります。まずこの薬に対する理解が非常に大切です。

  したがって、病の治癒に関しては、昔からプラシーボ(偽薬)効果というものが良く知られています。プラシーボ効果とは、薬の成分が入っていない偽薬を良く効く薬だと信じて服用すると、症状が改善するという効果のことです。イスラエル工科大学のベン・シャナン博士らが2016年に雑誌『Nature Medicine』に掲載したマウス実験の論文によると、脳の報酬中枢が活性化することで免疫系が活性化することが判明したそうです。「この薬は良く効く」という「期待」は、この報酬中枢と関わる快感情であり、結果として免疫系が活性化し、症状が改善する可能性があるということです。言い換えると、快感情が内因性オピオイド(いわゆる脳内麻薬)を放出し、それが受容体と結合することにより鎮痛効果などを発揮すると考えられているようです。いずれにせよ、昔から言われている「病は気から」というのはその通りなのであり、これも病を治しているのは薬ではなく「自分」だからということになります。東洋医学では、昔から健康とは「気・血・水」のバランスであると考え、中でも「気」が重視されたそうです。



  この基本を踏まえた上で、薬は重要だけれども全てではない、薬と同じ働きをする食物や行為を生活に上手に取り入れることにより、体質を改善し、病気を予防する。結果として薬を減らす「減薬」につながる三つのポイントとして、①見方を変える、②薬を理解する、③薬の作用を考える、が挙げられました。

  一番目の「見方を変える」ですが、これは薬には症状を抑える働きがあるが、そればかりに頼ると自然治癒力も抑制してしまう結果、かえって病気の原因が長く体内にとどまってしまう可能性もあるということです。例えば、高熱が続くような場合はもちろん薬で熱を下げることの方が望ましいのですが、発熱は一方でウィルスと身体が戦っている作用でもあります。だとすれば、例えば身体を芯から温める作用のある漢方(麻黄湯)を服用するとか、熱めのお風呂で体を温めるとか、生姜やトウガラシなど体を温める働きのある食物を採るといったことを通じて、ある程度薬の作用を代替することができそうです。「発熱」→「解熱」とすぐに考えるのではなく、「発熱の作用とは何であろうか」という視点の転換も必要ではないだろうか、ということです。

  二番目の「薬を理解する」ですが、漢方を含むすべての薬は病気の箇所だけに作用するのではなく、常に全身に作用するため、病気外の箇所に悪影響を及ぼす「副作用」の可能性があることを理解しておくということです。例えば薬を服用し過ぎて肝機能が弱まると、薬の血中濃度が高いまま保たれ、身体に害を及ぼす恐れがあります。

  三番目の「薬の作用を考える」では、高コレステロールと高血圧の例が挙げられました。まず前者についてですが、コレステロール自体は悪いものではないということ。しばしばLDLコレステロールを「悪玉コレステロール」と呼んだりしますが、LDLコレステロールも身体に必要なコレステロールであることに変わりはないのです。高コレステロールは確かに動脈硬化等のリスクがありますが、必ずしも薬に頼らず、運動によってLPL(リポ蛋白リパーゼ。中性脂肪の分解を促進する)を活性化することができます。もちろん即効性という点では薬なのでしょうが、これは僕自身、運動によって中性脂肪やLDLコレステロールを劇的に減らした経験があります。同じように、血圧が高めの方についても、手足などの抹消や褐色細胞の多く集まる箇所を温める運動をする、発汗によって過剰な水分を減らす、食物繊維を多く採るなどの補完的・予防的方法があります。因みに「抹消や褐色細胞の多く集まる箇所を温める運動」ですが、第20回YMS関連記事)で教えていただいた、中島輝彦さんの簡単な三つの動作「フェニックス」、「カンガルー」、「チーター」がまさに該当します。

  お話を伺い、僕自身日頃から様々な誤った思い込みの中で生活しているのだと気づかされました。下手をすると身体に良かれと思ってやっていたことが逆効果などと言うこともあるかもしれません。今回のお話で、何か特別なことをするのではなく、体質を改善し病気を予防する工夫を生活の中に上手く取り入れつつ、薬と上手に付き合うことが大切なのだと学ぶことができました。

過去のセミナーレポートはこちら。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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