悲劇の天才バイオリニスト 渡辺茂夫氏

2012-09-24 23:47:28 | 日記風
 私が彼を知ったのはもう10年以上前のこと、テレビの特集ででした。
 終戦直後、神童と呼ばれ、7歳で才能を認められ、リサイタルを開く。

 彼の叔父、母共にバイオリニストであったが、才能を見込んだ叔父が離婚した母親から、茂夫を任せてほしいと頼まれ、養子になる。

 そのあと、中学生、14歳くらいでアメリカへ留学する。これが時期は早い。まだアメリカという国に行かせるのは危ない。いろんな声もあったらしい。

 何かで占ったら、この留学は「不吉」と出たという話もある。

 しかし、彼は留学し、これがそのあとの彼の運命を決めてしまう。

 戦争が終わって間もない頃のことだ。

 まして、彼は叔父が付きっきりでバイオリンを教えていた。子ども時代から同年代の子どもと遊ぶこともなく、ひたすらバイオリンを弾いてきた。

 日本ですら人間関係のとれない状況で成長した彼が、言葉も通じない、同じ音楽に秀でる者ばかりの中に入っていくのだ。

 これ以上、きついことはなかっただろう。

 16歳の時、精神的にも追い詰められた彼は未成年が変えるはずのない睡眠薬を大量服用し、自殺を計る。


 生命は助かったが、脳障害が残ってしまった。

 やっと日本へ帰国するも、自分1人では動くこともできない。


 しかし、叔父がバイオリン教室を開きながら彼の面倒を献身的に看ているというのが、番組で紹介されてたのだ。


 これは長い間、心に残った。


 彼の自殺未遂も、戦後直後ということもありGHQの彼をねたむ陰謀だなど諸説が入り乱れている。


 彼は、ある夏の練習合宿のようなもので、ある少女と出会う。彼女に恋をするが、まともな人間関係を結べない彼が、恋人を作ることなど、更に難しい。

 彼の恋心を知る人物はいるが、その相手が誰であるのか後で調べても丸で判らなかったそうだ。

 彼は勝手に失恋したと思い込んで…仲介を頼んだがそれがうまく通じていなかっただけらし…自殺の原因はこの失恋だったという説もあるが、相手が判らないんだよね。


 おそらく華々しい、才能ある子ではなく、地味な目立たない子だったのではないかと言われている。


 彼にはそういう謎がある。


 しかし、血が繋がっている叔父とはいえ、彼を養子にし、身体が自由に動かかなくなった後も彼の面倒をみた叔父はえらいとも言えるし、当然だとも言える。

 養子にして、まともな人間関係すら気付けないくらいバイオリン漬けにしたんだから、その責任はある。

 1999年に茂夫氏は永眠したようだ。


 不遇な天才としか言いようがない。

 だから記憶に残っている。


 彼がもう少し繊細でなければ…彼は日本を代表するくらいのバイオリニストとして輝かしい活動をしていたかもしれない。
 特に戦後だから、日本の星として輝いたことだろう。
 叔父もそれを望んだ選択だったのだろうし…。


 しかし、そううまくいかないのが運命だ。

 彼は繊細すぎた。

 才能を持つものが不屈の精神力で、世界に通用していくにはそれなりの下地が必要だ。

 彼の失敗例が、のちに多くの音楽家の注意事項になったことだろう。

 しかし彼の人生はそれで幸せだったのか。

 生まれた時代が悪いのか、彼に与えられた運命がそれだったのか、とても考えさせられる天才が渡辺茂夫氏なのだ。


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