北海道美術ネット別館

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ゴンザレス=トレスとTHE BEGINNING展 (あるいは、森本めぐみは旅をする)

2011年10月05日 00時00分28秒 | つれづれ日録
 THE BEGINNING -Exhibition of Hybrid Generationは、2011年3月に、札幌のPARCO新館で開かれた展覧会だが、筆者はこの紹介文を書いていないことに気がついた。
 非常におもしろい展覧会であったのだが、今さら当時を正確に思いだして振り返るのも困難であるし、概要は、シリウス通信や、FREE PAPER WGのサイトをご覧いただくことにして、ここでは、印象に残った話だけを書くことにする。
オープニングパーティーのようすはこちら。筆者もちらっと写っています。ちなみにWGのサイトは札幌で行われている展覧会などを実によく取材しており、北海道美術ネット別館が札幌に帰っても、もはややることがあんまりないくらいです。ははは)

 上のWGのサイト(ブログ)で、筆者は、森本めぐみさんの作品の下に立っているところを撮影されている。
 天井に、銀紙の破片がたくさん入ったかごがつるされており、少し離れたところでひもを引っ張ると、かごが揺れて中の銀紙が雪のように降りそそぐという、単純な仕組みの作品である。

 ちなみに彼女は、たすきのような棒状の作品も展示していたが、それらは2009年、法邑での個展で発表していたものであったと記憶する。



 ところで後日、北見に帰ってかばんの中をのぞいていたら、このときの三角形の銀紙片が出てきたのだ。

 「おお~、銀紙くん、300キロも旅してきたのか」
と、なんだか急に、数センチの小さな銀紙片がいとおしく感じられてきた。

 それと同時に脳裡をよぎったのは、フェリックス・ゴンザレス=トレス(Felix Gonzalez-Torres)というキューバ出身の現代美術家のことだった。
 筆者は彼のインスタレーションを、2001年の横浜トリエンナーレで見ている。
 「銀色の包み紙にはいったキャンディーを床に置いた。鑑賞者は1個ずつ取って持ち帰ることができる。」
という、コミュニケーションの要素が入った作品だった。
 インストラクションアートといってもいいだろう。

 もちろん、ゴンザレストレスが、ささやかな思いを拡散させることを明らかに狙っているのに対し、森本めぐみさんがどこまで銀紙を旅させようともくろんでいたのかは、わからない。少なくとも、インストラクションアートとは呼べないだろう。
 ただ、法邑での個展で展示されていた絵本形式の作品「なくしたゆびわ」も、旅や移動がひとつのテーマになっていたし、彼女はどこかで、銀紙が拡散していくことを期待していたのではないかと、ひそかに思う。



 ある機会を与えられて「サイトスペシフィックとは何か」について原稿を書いていたのだが、そのときからずっと考えていることに
「アートって、旅だよなあ」
というのがある。

 もちろんモダニスムの画家たちも旅はしたけれど、それはパリや北海道なんかへスケッチに行くという目的があったのであり、旅という行為あるいは過程そのものがアートだったわけではない。
 大がかりな旅行からささやかな移動まで、さまざまな旅は、日常とか、生の延長線上にある。わたしたちの日常や生から切断されたところに存在するタブロー(作品)ではなく、生とつながった位置で展開されるのが、現代美術なんだと思う。

 で、この場合は、銀紙も、筆者も、小さな旅をして、そのこと自体が小さなアートなんだな、多分。


 もうひとつ、現代美術好きにはあたりまえのことを付け加えれば、銀紙そのものは、構図や色彩のすばらしい絵でもないし、量感豊かな彫刻でもない、ごく単純な物体である。
 それが、文脈や意義付けしだいでアートになるということこそ、デュシャンの言う「網膜的な美術」を超えたところで現代美術は展開してるっていうことの証左なのだろう。


□とがったいわ http://mercyard.exblog.jp/

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