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■森本めぐみ展「くものお」 (1月17日で終了)

2010年01月26日 01時56分51秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 
 あらためて思う。
 「いい絵」って、なんだろう。

 森本さんが会場にテントみたいのを張って描いたという、上の絵。
 見た瞬間、「いい」と感じた。

 いい絵は、瞬間的にわかってしまうような気がする。
 少し時間をかけて、じわじわと良さがわかる作品というのもあるのだが。

 自分ではまだその良さがわかってない絵もある。
 そして「良い/悪い」というのは、「好き/嫌い」がハートというか感情で判別するのに比べ、やや頭脳というか精神寄りで判定するような気がする。
 正直に言って、日本的フォーブの絵は、その良さがわかるまでしばらくかかったし、いまも「マティスが良い絵なら、これらの絵も良いと思うはずだ」という論理的整合性が根拠になっているようなところもあったりする。

 しかし、そういう濃淡はあるにせよ、「いい絵」かどうかは、けっこうすぐにわかることが多いのは、なぜだろう。

 「ハレンチちゃん」の上をおびただしい飛行機が、画面を縦断して飛んでいる。
 「B29の編隊?」
と冗談交じりに訊いたら、なんでもいいんです-との答え。
 こんなにたくさんの飛行機を描いた絵というと、筆者は、会田誠「紐育空爆之図(戦争画RETURNS)」くらいしか思い出せない。もちろん、飛行の仕方はずいぶん違うけど。

 この絵の鮮烈な赤の中に、怒りと慈しみが同居しているように感じられるのだ。
 勝手な思いこみなんだけど。



 ところで…。
 

 


 この会場のテンポラリー・スペースというのは、ギャラリーとしては相当変わったつくりになっていることは、一度行った人は知っていると思う。
 入って右側が窓になっていることもあって、壁面は決して広くない。
 しかも、昔の商店ふうの引き戸になっている入り口は南南西向きなので、夏場は西日が差し込み、絵を展示するにはちょっと考えてしまう。
 さらに、はしご段で上がる2階スペースがあり、ちょうど体育館の2階のぐるりに回廊があるのと似たスペースがある。
 ふつうに考えたら、決して美術展向きではない建物だと思うのだが、それがかえって、各作家をおもしろがらせたフシがある。通り一遍のホワイトキューブよりも、たぶん、展示する側も見る側もおもしろいのだ。

 今回の森本さんぐらい、この会場のふしぎな空間をフルに生かした人はいないのではないか。
 あちこちのはりから糸が垂れ下がり、床板の節には自ら作った金属の輪っかがはめ込まれ、角には小さなバルコニーのようなものが設置され、目の細かいネットにネコヤナギの芽が蓄積される…。





 古い建物をリノベして造られた会場で長期間個展を開くことじたい、彼女は心底おもしろがっていたのではないかと思う。だからこそ、会場がちいさな遊園地状態になっていたんじゃないだろうか。

 はしご段をのぼったところでコーヒーを飲み、下のフロアを見つめながら、そんなことを考えていた。


2010年12月15日(火)-30日(水)・1月5日(火)-17日(日)11:00-7:00、月曜休み、temporary space(北区北16西5 地図H

http://megumimorimoto.her.jp/

Point Of Color 笠見康大 蒲原みどり 西田卓司 森本めぐみ(2009年7月)
森本めぐみ個展「ワークス」 (2009年4月、画像なし)
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森本めぐみ作品展「むこうのほう」(2008年9月)
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