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■森本めぐみ個展「ワークス」 (4月30日まで)

2009年04月30日 08時07分37秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 道教大在学中で、昨年のアクリルアワード大賞受賞など進境著しい若手作家、森本さんの個展。

 前回の個展から2カ月ほどしかたっていないこともあり、新作びしばし、というよりは、ここ3年間ほどの作品とそのエスキスのドローイングが多く展示されている。
 天井からは、先日のト・オン・カフェでの個展でもたくさんあった「ハレンチちゃん」がつりさげられ、会場内のカウンターにもならべられている。
 紀伊國屋書店ギャラリーでのグループ展に出品したインスタレーションの、ドローイングも興味深い。

 個人的にいちばん印象が強かったのは、冊子型の作品「なくしたゆびわ」。
 横長の大型絵本に似た判型で、左ページに横書きの活字で、右ページは手描きの絵や文字が描かれている。内容はおなじ旅日記なので、重複しているところも多い。右ページは、コマ割のある一般的な漫画ともちょっと違い、個性的な絵日記になっている。
 作者はこの春、アクリルアワード大賞の授賞式に出席する機会に長い旅をした。
 苫小牧からフェリーで秋田へ。そこから普通列車で南下し、富山や名古屋を経由して広島へ。東海道本線で東京に行き、またフェリーに乗って北海道に戻ってくるという旅行だ。
 札幌住まいの社会人になると、航空機や新幹線に乗ることはあっても鈍行を乗り継ぐような旅はなかなかできない。時間があっても金がない学生の特権を生かした旅程は、いいなあと思う(学生の分際で飛行機にばっかり乗るな-という気持ちの裏返し(苦笑)。
 その旅のおともに彼女が選んだのは、自作の銀のリング。これは、結婚指輪以外にアクセサリーをつける習慣がそもそもない筆者のような老人男性には思いもつかない発想だった。そのリングに自宅で採取した種を入れていっしょに旅するのだが、最終的にどうなったのかは、ネタバレになるのでここでは書かない。 
 或る意味でこの旅行記には、作家・森本めぐみのエッセンスが凝縮されているように思う。原爆ドームで感じた死の影とか、性的なものや貧困への関心といったことがらは、彼女の活動に流れている通奏低音を、ふたたび奏でているようですらある。
 しかし、それは「まとめすぎ」かもしれない。間違いなく言えることは、旅も作品にしてしまう、彼女の作家魂みたいなものだ。「作家」と「趣味でやっている人」の違いは、生すべてを創造へと傾けてしまう情熱の有無ではないかと思う。


2009年4月20日(月)-30日(木)10:00-18:00 火曜休み
品品法邑(東区本町1の2)


http://megumimorimoto.her.jp/index.html
http://blog.megumimorimoto.her.jp/

ACRYL AWARD2008入選作品展 (2009年3月)
Megumi Morimoto Exhibition (2009年2月)
森本めぐみさんがアクリルアワード大賞
森本めぐみ作品展「むこうのほう」(2008年9月)
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