英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

土曜ワイド劇場「人類学者・岬久美子の殺人鑑定5 「光る白骨の美女!ピアニスト連続殺人…(以下略)」

2014-11-10 20:34:25 | ドラマ・映画
土曜ワイド劇場「人類学者・岬久美子の殺人鑑定5 光る白骨の美女!ピアニスト連続殺人の裏に女系家族の愛と欲…転落死したら骨折が治った!?」

 土曜ワイド劇場なので、目くじらを立てて突っ込むのは大人げないと思うが、突っ込みたくなるような“陽性”の突っ込み処なので、つい記事にしてしまう。
 “要注意脚本家チェック”の意味で、書き記すのは有意義かもしれない。

 サブタイトルの長さは相変わらずである。
 サブタイトルには、内容を端的に表したものと、ブラフ(はったり)に近いものとがあるが、土曜ワイドは後者。
 『コトバンク』によると「はったり」=【わずかなことを大げさに言ったり、ありもしない物事をあるように見せたりして他人を圧倒しようとすること。また,そういう言動】と記されているが、土曜ワイドのサブタイトルのことを指しているのではないかと思われるほど合致している。

 今回もまさにこのパターンだった。
 まず、「ピアニスト連続殺人」の件
 冒頭に殺害された音楽家はそうであったが、白骨の女性二人に関しては確かにピアニストとピアニスト志望者であるとは言え、自殺とそれに巻き込まれた事故死であった。まあこれは、白骨で発見されたので、事件性が強いので良しとしよう。

 では、「連続殺人の裏に女系家族の愛と欲」の箇所はどうか?
 一見、母親・華枝は次女・あやめがピアニストとして大成するのなら何でもしそうな雰囲気で、DNA鑑定で「三女だけ父と血の繋がりはない」と判明した時、殺害された音楽家と不倫関係にあったのではないかと思われた。三女・まゆみも実際にそう思い込み、ひねくれていた。
 また、あやめのピアニストとしての活躍や、あやめに掛かり切りになる母が面白くない長女・さくらが、あやめを階段から突き落としたと思われていたが、実際は音楽家の妻と弟子が階段に油を垂らす細工をしており、それに滑ったさくらをあやめが助けようとして転落してしまったのが真相。
 そんな訳で、母娘、姉妹の仲はギクシャクしていたのであったが、それも虚構だったことが明らかになっていく……(後述)

 さらに、「転落死したら骨折が治った?」という訳の分からないフレーズは?
 「転落により右腕を骨折しピアニストとしては再起不能になった」と思われていたが、実際は、転落によってあやめの腕が骨の癌に犯されており、癌の転移を防ぐため、自身の腓骨(膝から足首の細い方の骨)を移植したとのこと。(ドラマでは「腓骨はなくてもよい骨」と言っていたが、大丈夫なのだろうか?)
 結局、転落によってピアニストとして致命傷を負ったのではなく、事故によって癌を発見できたというまさに“怪我の功名”だったのだ。「だったら、そのことを姉に教えてやれよ!」と声を大にして突っ込んであげたい!あやめは困難に立ち向かおうとしていたのだ。

 再び、「女系家族の愛と欲」
 まゆみの出生については、殺害された音楽家が教え子に手を出した“結果”であり、その子の幸せを思い華枝が引き取ったというのが真相
 さらに、ピアニストの大望を果たすため母娘、姉妹関係がすさんでいた家族関係が、無邪気なまゆみの出現により和やかになった。まゆみは家族にとって天使だったのだ
 まさに、“ありもしない物事をあるように見せたかけた”家族関係だったのだ。

 あまりに見事なご都合主義……やられたなぁ。土曜ワイドだから許そう。


 しかし、これは絶対許せない!
 ドラマの主人公の准教授・岬久美子(大塚寧々)のところに、≪行方不明になった娘・美鈴が、もしかしたら遺体(白骨)で見つからないか≫と足繁く通う女性・鍋島時子がいた。
 その時子、実のところ、娘の失踪の事情をよく知っていた。
 美鈴もピアニストの才能に溢れていたが、音楽家に手を付けられ身籠ってしまった。(まゆみの実の母親だった)
 そのことでピアニストの夢は断念したが、音楽家のことが忘れられず、そのあげく、音楽家に捨てられ自殺を決意。その自殺を止めようとしたあやめは巻き込まれて事故死してしまった。
 傷心の美鈴が音楽家の所を飛び出して行ったにもかかわらず、まったく美鈴のことを思いやらない音楽家に時子が逆上し、殺害してしまったのだった。
 しかし、まずは娘を追っかけろよ!
 怒りに支配され殺害を優先したとしても、普通、娘の実を心配し辺りを探し回るのではないだろうか? あの時、二人を探していれば助かったかもしれないし、少なくとも遺体は発見されたはず。結局、あやめは音楽家殺害の容疑者とされてしまった。

 そもそも、逆上した割には、指紋がつかないようにしっかり布でくるんで凶器を握っていたのは冷静である。
 音楽家の別荘付近で娘の遺体が発見されては、自分の犯行が露見するので、うやむやにしたかった?

 娘思いの母親を演じていたのは見せ掛けだけで、実は真っ黒

 その辺りを知りたかったが、クライマックスの犯人追及がいつの間にか家族愛のドラマに転換し、殺人の真犯人の時子はフェードアウト…
 最後の大転換の家族愛に持っていく為に、12年前の殺人事件での時子の不自然極まりない行動になってしまったとしたら、本末転倒の杜撰なご都合主義の脚本である。
 せめて、すべての元凶が時子で、最後にその“どす黒さ”を披露させたのなら素晴らしかったのだが、あのフェードアウト振りからは、そうとは考えられない。
 また、音楽家と美鈴の子を引き取るぐらいなら、華枝も音楽家のろくでなしさを知っていたはず。よくそんな奴に娘を託したものである。


 少し前の『法医学教室の事件ファイル38 ~土曜ワイドらしい反則技~』は、すがすがしさを感じさせる(笑)反則であったが、今回はご都合主義過ぎ、ずさん過ぎである。
 脚本家は真部千晶氏。過去に記事にした記憶があるが……
 ………『相棒season12』 第14話「顔」……『相棒』で1、2を争う不出来な回だった。「要注意脚本家」である。

 上記に比べると些細なことだが、警視庁捜査一課現場資料班刑事・加治川法雄(渡辺いっけい)の空気ぶり(存在意義の薄さ)も悲しい

 『ミステリー通信 創刊号』さんが、ほぼ同様、いえ、私より鋭いレビュー記事を書いています。
 トラックバックを飛ばそうと思ったら、言及リンクが必要とのことなので、上記の紹介をさせていただきました。

【ストーリー】番組サイトより
 人骨を専門に研究している人類学者で大学准教授の岬久美子(大塚寧々)は、ピアノを習いたいと言いだした娘の真琴(鍋本凪々美)を、近所のピアノ教室に連れて行った。その帰り、警視庁現場資料班刑事・守屋直樹(渋江譲二)から西奥多摩の渓谷で人骨が見つかったと連絡が入り、さっそく鑑定作業に入る。
 見つかったのは、左足の骨と頭がい骨。久美子が調べた結果、20代後半から30代前半の女性で、死因は前頭部の骨折と判明。しかし突き落とされて殺害されたのか、足を滑らせた事故なのか、はたまた自殺なのかまではわからなかった。また、左足の膝下とくるぶしの上が金属具で接続されていることから、足にケガを負い、治療していたこともわかった。
 その後、久美子のさらなる鑑定により、骨の身元は12年前に失踪したピアニスト・最上あやめ(大塚千弘)と特定される。驚いたことに彼女は、失踪直前に起きた殺人事件の重要参考人だった。そして奇しくも、久美子の娘・真琴がピアノを習いはじめたのは、あやめの母・最上華枝(中田喜子)が経営する教室だった。
 久美子と守屋は、あやめが重要参考人となった12年前の事件を調べはじめる。当時の捜査を担当した捜査一課刑事・佐藤元(宮川一朗太)によると、その事件は有名作曲家の添田伊佐男(デビット伊東)が殺害されたもので、あやめは添田の教え子だったが、事件の数カ月前、コンサートのリハーサル中に階段から転落して左腕を負傷。ピアニストにとって致命的なダメージを負ったことから師匠の添田に見放され、それを恨んで犯行に及んだと考えられていたらしい。また、事件直後にあやめが姿を消したことも、あやめの容疑を深めていたという。
 あやめが負傷したのは、左足ではなく左腕だった!? 疑問に思った久美子が華枝に聞くと、華枝は「あやめは足をケガしたことなどない」と言い切り、左腕の骨折についてもどのような状況だったか忘れてしまったと口を閉ざす。しかしDNA鑑定の結果、骨はあやめのもので間違いなかった。あやめの姉・さくら(小沢真珠)、妹・まゆみ(三津谷葉子)の態度もギクシャクしており、最上家の面々の間に漂う微妙な空気に、久美子は違和感を抱く。その後、鑑識と共に西奥多摩の渓谷を捜索した久美子は、あやめのものと思われる左腕の骨を発見する。だが、その骨に骨折の痕跡はなかった……。いったいどういうことなのか?

脚本:真部千晶
監督:藤岡浩二郎
コメント
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