英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

竜王戦第一局 卓越した大局観

2008-10-22 00:51:44 | 将棋
 リアルタイムでじっくり観戦できませんでした。仕事が忙しかったのが原因。もちろん、夜中に仕事をしていたわけではなく、物理的(時間的)には、可能でしたが、ネットに繋ぎながらウトウトしてしまいました。根性なしです。

 それはともかく、第一局の設営に関しては、いろいろ不満がある。
 まず、海外で第一局を行ったこと。普及の目的なのか、竜王戦では2年に一度、第一局を海外で行っている。普段は、他人事(羽生名人が対局者ではない)なので、それほど感じなかったが、海外で行うことは、国際的にはアピール度が高いが、国内では却って目立たない気がする。いろいろ事件が多いせいか、NHKの午後7時のニュースでは取り上げられなかった。終局が夜中ということもあるし、海外なので映像がすぐには手に入らないので、ニュースとして扱いにくいということがあるかもしれない。
 BSで中継もないし、永世竜王を懸け、しかも現在の第一人者と次世代を担うエースとの勝負という割には、世間的にはひっそり開幕してしまったという感がある。
 それに、対局場がチャチだった。海外普及と謳うのなら、和風の部屋を用意すべきで、部屋が無理なら畳だけでも調達すべきだ。あれでは意味がない。
 対局者も普段と雰囲気がちがうので、なかなかペースがつかめないのではないか。達人はそんなことに影響されないという考えもあるが、ずっと盤面を見ているわけではないので、あの違和感は少し影響があったのではないか。

 ネット中継は、梅田氏の観戦記は読み物として楽しめた。現代将棋(若手の将棋観)の弊害についての、佐藤棋王の見解は興味深かった。
「さすがに佐藤棋王、私の感じていることを代弁してくれている」なんて言うと、某会長みたいなジョークになってしまうなあ。
 また、感想戦をまとめて、▲2三角と打ち込んで居飛車穴熊側が二枚換えの駒得の上、飛車が成り込めれば優勢という大局観がこの将棋においては当てはまらず、羽生の大局観が卓越したものだったとし、渡辺竜王の「でも何回指しても、角打っちゃう(▲2三角)なあ」という呟きは、印象的で面白い。
 ただ、手の解説がもう少し欲しい。こういう手もあるこういう手もあるという手順の紹介に留まることが多く、これは先手良しとか、難解とか、解説が収束して欲しかった(これは梅田氏に求めているのではない)。
 △6四角と打たれて、竜王があれだけ悩んだのだから、後手が良いのだろうけれど、検討陣もこの局面をもう少し検証して欲しい。その後も、羽生名人が△8六角や△6七銀を繰り出し、順当に押し切った印象があるが、相当難解な将棋だったはずで、中継ではよく分からないまま、名人が勝ってしまったという印象が残る。
 せっかく佐藤棋王がいるのだから、佐藤棋王がムキになるくらい、いろいろ質問して解説させてもらいたかった。
 佐藤棋王の分析
「おそらく羽生さんは、ちょっと序盤で失敗したような感じも抱いているかもしれない。これで負けたらしょうがないという感じでやってるのかもしれませんけど…」
「羽生さんは、あんまりいいと思ってる感じもしないです」
等は、ちょっとまちがっているのではないか、と言うより、佐藤棋王が本気になっていないという気がする。

 さて、この将棋の勝敗を分けたポイントは、羽生名人の秀逸な大局観にあったのはまちがいがない。しかし、その大局観を構築する土台に、羽生名人の穴熊に対する正確な距離感があることを忘れてはいけない。
 ここの亀裂に楔を打ち込めば崩壊するとか、土台を揺す振れば倒れるとか、そのポイントが8七であったり、8八であったり、6七であったりするが、的確に捉えて突く(当然、穴熊の使い手としても一流で、多少ガタが来ても、見事に修復する)。穴熊のツボを熟知しているからこそ、二枚換えで飛車を成り込ませても充分という大局観が持てるのだ。

 この将棋、実はもう一つのポイントがある。それは時間の使い方。私の予想では、羽生名人の方が少しずつ先に消費していくと思ったが、渡辺竜王のほうが時間を使う、それもかなり多く使うという意外な展開。
 意識的に、時間を使わないようにしたとも考えられるが、名人の可能性を追求する将棋観からすると、それはないような気がする。
 もしかすると……、もしかすると、▲2三角の局面は研究の一局面、あるいは、練習将棋で経験したことがあったのかもしれない。それで、△6七歩成から△6九角と打って充分指せるという感触や経験があったのではないだろうか。というのは考え過ぎ?
コメント
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