ある人との雑談から表題の考察がスタートしました。それは財政の大半を石油収入に頼っている国と日本の赤字国債によって慢性的な税収不足を穴埋めし国家を運営している国がどこか似ているのではないかという視点です。産油国と言ってもOPECに参加していないアメリカやロシアなどもあるので、たまたま国家の歳入の多くを石油収入によっているサウジアラビアを例に比較してみたいと思います。
まずは石油の歴史を時系列で調べてみると石油の歴史は意外と浅いことがわかります。
1859年 アメリカ ペンシルバニアで石油が発見される
1870年代 ロシアのカスピ海バクー地方で発見される
1900年 イランで発見
1914年 南米ベネズエラのマラカイボで世界最大規模の油田が発見される
1931年 バーレーン
1933年 クウェート
1938年 サウジアラビア & 中東の湾岸油田地帯
1960年 OPECができ産油量コントロールが始まる
原油価格も1950年代~1971年ころまで1バーレル2ドル以下だったのが、1972年に2ドルを超え、1974年に11ドル、その後1980年~2000年ころまで20ドル前後で推移しそれが2004年には40ドルを超え、2008年6月には100ドルを軽く超えピークを迎え、2009年には一旦40ドルを割り2011年から2014年にかけ80ドルから100ドルとなりその後現在まで40ドル~70ドルで推移し現在38ドル程度となっています。(上記数字は目安、詳しくはいろんな資料を見てください)。
1970年代のオイルショック以前は安値安定していたのがその後急速に値段が高騰しているのが分かります。
ネットで検索できるサウジアラビアの国家予算は2020年度歳出が約30兆6000億円で、歳入は約5兆円の5兆6000億円の赤字となっています。(JETROのHPに出ています・・・JETRO,サウジアラビア予算・・・で検索すると2019年度国家予算が承認、過去最高を更新 が出てきます)歳入の大半は石油です。下記は同サイトを参照しています。
歳出で驚くのは公務員や軍関係者へ月額1000リアル(30万円)、年金受給者に月額500リアル(15万円)の特別手当が支給されるそうです。 一方歳出の一番大きな項目が教育となっており石油ビジネスの先行きを考えると妥当な投資と言えるのでないでしょうか。
ところで、石油に大きく依存している国は地下にある打ち出の小槌で予算を組んでいるように見えます。 一方資源のない日本は高度成長期を経てGDP2位(現在は3位)の地位になりましたが、1965年に初めての赤字国債を発行してからどんどん増え現在は1100兆円をオーバーしています。この間に返済はなく借り換え国債発行でつないできました。2020年度予算(2019年12月時点)でみると予算総額102兆6600億円に対し歳入不足を穴埋めする赤字国債が25兆4500億円、予算の25%が国債で賄われています。日本の地下資源は赤字国債と言えそうですね。
特徴をまとめると
石油に依存している国:
・石油収入がメインだが産出量と販売価格で大きく変動するので安定収入とは言えない。
・原油が高値の時の予算を大盤振る舞いすると、歳入が減っても下げにくいので赤字となる。
・原油価格を上げようと産出量を調整しようとするも、シェールオイルとの競争や世界の需要で販売量が決まるためコントロールが難しい。市場価格が高くなるとシェールオイルも競争力をもってくるため、競争相手になってしまう。
日本:
・歳出と歳入の差を埋めようと、例えば、消費税等の税率アップで税収を増やそうとしていますが、一方で高齢社会が進み年金や医療などの社会保障費がそれを上回って増加しているため赤字が止まらない。
・足りない分は赤字国債で何とかするという流れができていますが、プライマリーバランス達成目標がスローガンの様に語られ結果として毎年先送りしているのが現状ではないでしょうか。
国家予算に占める石油依存度が高いサウジアラビアなどの国は今、教育や科学に今得ている資金をつぎ込み次世代は石油依存から脱却することをメインにおいているように見えます。 一方日本はどうするのでしょうか? 赤字国債で教育や研究開発投資をどんどんやって大学や日本の競争力の世界ランキングを上げ将来の税収アップを期待する方向に進んでいるようには見えません? さて・・・・。