日本では無線従事者免許を取得しても、無線局の申請を行い許可を得ないとアマチュア無線を楽しめません。 一方、U.S.A.やその他多くの国ではアマチュア無線の試験に合格すれば無線局を運用できます。 実際いくつかの国の制度を知っていますが、従事者免許と局免許を分けている国は知りません。なぜ、日本の場合、従免と局免に分かれているのか調べてみました。そこから従来から言われているアマチュア無線の包括免許がなぜ実現しないのかも見えてきます。 そんなことは知っているという方は以下無視してください。
まず、比較は日本で包括免許といわれているアメリカ合衆国のアマチュア無線関係の法律と、日本の法律です。 結論から言うと、アマチュア無線そのもの考えかかたの違いです。アメリカは最初からハムの免許を取得すると資格に応じて扱える設備の責任者になり全責任を負いますが、日本は無線従事者と無線局は別扱いになっている点が基本的に異なる点です。
日本は業務無線局の考え、放送局や漁業無線局(いまもあるのか?ですが)の従事者と無線局(設備)は別という考えが、アマチュア無線にそのまま持ち込まれたと言えます。昭和初期のころはたとえ10ワット以下でも落成検査が必要だった様なので、その当時のアマチュア無線家は電波を出せるまで大変だったでしょうね。
アメリカでも放送局を開設するときはFCCに申請し許可を得ますが、申請書に細かい事項を記入して許可を得ます。これは日本も同じですね。 従い、アマチュア無線で細かい設備の申請をする必要がないことになっているのはアマチュア無線だからということだと思います。
以下の図でその違いを表してみました。
以下要点を抜粋してみます。 まずはアメリカ合衆国から:
アメリカ合衆国のアマチュア無線免許制度(抜粋)
アマチュア無線は Electronic Code of Federal Regulations の数あるタイトルの内 Title47--Chapter1--SubchapterD--Part97に詳細が記載されています。その中でアマチュア無線の免許制度を見てみると次の様になっています。
1)アマチュアオペレーター: ULS(Universal Licensing System)に登録されたアマチュア局はアマチュア局の管理ができる。
2)アマチュア局とはアマチュア無線通信を行うために必要な設備で構成されたものを言う。
3)無線設備はULS統合ライセンスデータベースのアマチュアステーションライセンスが与えられた人の管理下にある必要がある。(外国人の部分は省略)
4)局のタイプ: オペレーター/プライマリステーションのライセンス付与。 オペレーター/プライマリーステーションのライセンス付与は、1人だけが行うことができます。 プライマリステーションライセンスは、アマチュアオペレーターライセンスと一緒に付与されます。
⇒ これはオペレータライセンスを試験を受けて合格しULSに登録されば自動的にアマチュア無線局の局免許も付与されるという意味です。プライマリーライセンスという意味は、ULSデータベースに登録された住所のアマチュア無線局のことです。もちろん移動運用もOKなのでその時はポータブルXを言わなければなりませんが、今はその必要もなくなりました。
以上からアメリカの免許制度では、アマチュア無線オペレータ(今はTechnician, General それに Extraの3種類)の試験に合格し免許データベースに登録されれば無線局(設備)免許も同時に得たことになります。
一方日本の方は最初から従事者免許と局免許は別物として扱われています。
従事者免許をとっても、アマチュア無線局の許可をとらないと電波は出せません。また、アマチュア1級を持っていても、無線局の免許が100ワットであればそれ以上だせません。アマチュア無線局開設の基準のところに、アマチユア局の無線設備の操作を行うことができる無線従事者の資格を有する者 と規定されて、また、その局の無線設備は、免許を受けようとする者が個人であるときはその者の操作することができるもの、社団であるときはそのすべての構成員がそのいずれかの無線設備につき操作をすることができるものであること。
詳細は省きますが、従事者免許と無線局免許は別々に行わなくてはなりません。従事者免許は終身有効ですが、無線局は5年(当初は3年)と規定され、事細かく電波形式や装置の構成などを記載して許可されます。
このためかどうかわかりませんが、アマチュアに関して簡易的な方法(行政の事務を減らす目的で?)が以下の様にアマチュア局数が増えたことによって(多分)取られてきました(ウキペディアを参照)。1959年:10ワット以下の無線局はJARLの保証認定が始まった。落成や変更検査は省略された(それ以前は全部立ち合い検査があったんですね)
1983年:100ワットまでJARL保証認定でOKとなった。
1991年:技適制度か開始
1992年:JARLからJARDに保証認定業務が移行された。また、100ワット以下の技適機器は直接申請できるようになり免許制度の簡易化が進んだ。
1996年:200ワット以下に技適が適用された。
1998年:落成や変更検査を認定業者ができるようになった。
2001年:保証認定はTSS株式会社に移行した。(JARDは撤退?)
2004年:電子申請開始、電波形式が新表示になった。
2014年:JARDが保証認定業務を再開
昔の電波管理局(今の総通)にアマチュア無線をやる人がどんどん増えてアマチュア無線局の申請処理が大変になったころに、従事者免許取得者は資格に応じたアマチュア無線局の設備免許を得たものとする・・・とでもなっていれば良かったと思いますが、従免と局免は別という基本的なところに変更がないので上記の様に保証認定制度で事務処を外注?せざるを得なかったと考えられます。電波形式の新表示制度によって従来であれば例えばFT8は新しい電波形式の追加となるのでハイパワー局であれば検査対象になったのが、まとめ表示の中に入っているため変更届で済んでいるのも簡易化の一環でしょう。
従事者免許の方は講習会+試験で取れる様になったりしていますが、無線局は制度面での変更は基本的になく、独立して申請することが続いています。 今では技適リグであれば電子申請で簡単に申請できるようになりましたが、200ワット以上は相も変わらず予備免許、落成検査制度があります。
さて、今後この複雑な免許制度がどう変化してゆくのでしょうか? 皆さんはどう思いますか? アマチュア無線局数は年々減り、とうとう40万局を割って毎月1000局ほど減少しているようです。