大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第55回

2013年12月10日 14時03分02秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第55回



ずっと下を向き歩いて行く。 一歩の歩幅が段々と小さくなっていくが為、いくらも歩を進める事が出来ないが 登山服の人を何人か抜いて歩いて行った。
やっとアスファルトも終わり 今度は地道の階段だ。

(ここからがホントの山道なのね) 滅多な事で汗をかかない琴音の額に汗が流れた。 上着のパーカーを脱ぎ 腰に巻いた。 
少しずつ階段を上って行くが ずっと同じ階段が右へ左へ蛇行して続いているだけだ。 

(いつまで続くのよ) あまりのしんどさにもう自分が何をやっているのかさえ分からなくなってきていた。 足が勝手に動いているだけだ。 ただ、ハァハァと息が荒い分異常に喉が渇く。

やっといくらか歩いた時に腰を下ろせそうな横たわった木があった。 そこに腰を下ろした琴音。 喉が渇いているからすぐにでもお茶を飲みたいけれど あまりの息の荒さから飲むことも出来ない。 足ももう限界だ。 前にだらしなく投げ出している。

(地べたでもいいから寝転びたい・・・) そう思ったがさすがにそこまで形振り構わずとはいかないようだ。
少し息が収まった時にやっとお茶を飲む事が出来た。 一気に全部飲み干したいくらいだったが少し収まったくらいのまだ荒れた息だ。 胃に流し込んだ少しのお茶でさえ戻しそうになる。

(こんなに喉が渇いてるのに) 喉には水分がもうない。
暫く休んでいると 何人かに抜かれてしまった。

(あ、あの靴下にあの靴・・・私が抜いてきた人じゃない) 下しか見ていなかった琴音は人の顔を見ていないが足元を見て覚えている。
かなり息が楽になったようで少しずつだがお茶を飲み始めた。

(今飲みすぎて途中で足りなくなっても困るし・・・もっと飲みたいけど・・・) 喉はカラカラで爆発寸前だ。 いくら飲んでも喉は潤わないが後を考えてこれ以上飲むことを止めた。 

(とにかく 少し楽になったから歩きましょう) 息はかなり整い、足も楽になった気がしたが歩き始めるとすぐに足が重くなった。

(足が・・・) 重い足を前へ前へ出す。
歩いて行きふと顔を上げたときに小屋が見えた。 三合目の小屋だ。 
そこでまた休憩を取ったが小屋の椅子に座っていても足が楽にならない。 靴を脱いで足を椅子の上に投げ出した。

(ああ、楽だわ) 後から歩いてきた人も小屋の中へ入ってきたが座るスペースはまだまだある。 そのまま足を伸ばして座っていた。
お茶を飲もうと鞄からお茶を出す動きですら煩わしさを感じる。 とは言え喉が渇いている。 お茶を出し口に含んだ。

(ここでどれくらいなのかしら、まだあるのかしら・・・) 登っている時に顔を上げよく周りを見ていると 今はどれくらいと書かれてあるのだが、ずっと下を向いて歩いてきた琴音はそれに気付いていない。 まだ三合目だよ。

足を投げ出せたお陰で大分楽になったように感じた琴音。

(サッサと登ってしまおう) 無理だね。
靴を履いてすぐに歩き出したがまた足が重くなった。 整ったはずの息もすぐに荒くなる。 ずっとその調子で歩いていくと五合目の小屋が見えた。

ここでも足を投げ出しお茶を飲みと休憩を取り再出発した。 すると今度は足の重みが感じられない。 息も上がらない。

(あら? どうしてかしら楽に歩けるわ) 下を向くことなく前を見て歩く事ができた。

(ああ、道が平坦なのね。 登りか平坦かでこんなに違うものなのね) 暫く歩いていくと大木にお神酒が奉納されていた。

ずっと宗教の本を読んでいた琴音は素通りする事ができない。 二礼二拍手をし手を合わせた。 そして少し歩くと地蔵に気付いた。

(あら、お地蔵様) 身を屈め地蔵に挨拶をしようと片方の膝を地に着こうとした時に 棒のようになっている足はガクガクと震えこけかけたが 何とか膝を着くことができ手を合わせた。 今までの琴音ではあり得ない姿だ。

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