大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

みち  ~未知~  第49回

2013年11月19日 22時59分01秒 | 小説
『みち』 目次

第 1回第 2回第 3回第 4回第 5回第 6回第 7回第 8回第 9回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回



                                             



『みち』 ~未知~  第49回



「あのなぁ、昨日検査をようさんしたんじゃ。 その結果はどうもないんじゃけど じゃけど歳じゃろう、先生がちーっと様子を見んさってから退院できるんじゃて」

「そうなの? 良かった」 ほっと胸をなでおろし

「お母さんも心配してたの。 良かったわ、いい報告が出来るわ」

「ありゃ、お母さんに心配かけてしもうて悪かったのぉ。 うちは元気じゃけん、ようゆうといて」

「うん。 それより伯母さん何か用事はない? 洗面用具とか着替えとか・・・無かったら買ってくるわよ」

「旅行しに来たけんそんなものは全部あるんじゃ」

「あ、そう言われればそうね」

「そじゃけど ちょっと頼んでええかの?」

「なに? 何でも言って」

「旅行中の洗濯もんが全部溜まっとるんじゃ。 サッと洗ろうてあるんじゃけど下着が気になるけん洗濯頼んでええかの?」 叔父は家事一切が出来ない。 男子厨房に入らずの時代の人間だ。

「うん。 ランドリーで洗ってくるわ。 その間に他の事も出来るけど他にない?」

「ほんに悪いんじゃけど 近くに食べる物言うんかの、菓子屋みたいなとこがあったら 買うて来てくれんかの。 看護師さんに渡したいんじゃ」 どうも歳よりはこういう事にこだわる。

「分かったわ、何か買ってくるわね。 他にない?」

「それだけしてもろうたら十分じゃ。 洗濯が気になっとったし、こん人の言葉は歳いって滑舌も悪うなっちょるけんあんまり通じんから看護師さんに迷惑かけとるけんなぁ」

「ふふふ・・・分からなくもないわ。 じゃあ、洗濯物はどれ?」

「洗濯もんか? どれを渡したらええんじゃ?」 気を使って 叔父が探そうとした。

「そこの鞄の中の紙袋に入っとるんがそうですけん それを琴ちゃんに渡してつかあさい」

「これかの。 琴ちゃん悪いのー」 そう言いながら琴音に紙袋を渡した。

「洗濯くらい何ともないわ。 じゃ、行ってくるね」 病室を出るとすぐに病院内の案内を見てコインランドリーを探した。

「地下なのね。 それじゃあ1階の売店で洗剤を買ってから・・・」 売店で小さな洗剤を買いランドリーに向かった。
ランドリーには小さな窓がついていて外からの光が差し込んでいたが充分な明るさではない。 

「電気のスイッチは・・・」 節電のために電気はそのつど消しておくようだ。
琴音がウロウロしていると他の入院患者の付き添いであろう女性が入ってきた。

「電気点けてもかましませんか?」 琴音に聞いてきた。

(かま? かまって何? 電気を点けていいのかって聞いてるのかしら?)
「あ、お願いします」 その言葉を聞いてすぐに女性が電気をつけたがあまり明るくはない。 

何台も置かれていた全自動洗濯乾燥機。 使用説明を読んでいると

「良かったらしましょか?」 もう女性は自分の洗濯機のセットを終えて声をかけてきた。

「あ、すみません。 初めてでどうしていいのか分からなくて」 

「乾燥もしはる?」 

(しはる? しはるって・・・あ・・・するっていう事ね) 慌てて答えた。
「はい」 女性は手際よくボタンを押し、お金を入れる所を教えてもらいお金を入れた琴音。

「これで乾燥まで大丈夫やけどその間退屈でしょ? みんなほっといて外に出て行ったはるからちょっと遅れてもどうもありませんよ」

「有難うございました。 助かりました」

「ほんなら」 そう言い残して出て行った女性。 その女性の後姿を見送り

「今日は 方言のオンパレードだわ」 電気のスイッチを切り案内所に向かった。

案内所でケーキ屋を教えてもらうと歩いて行くには少し遠いようだ。 知らない土地で車を乗って行っても決して運転が上手とは言えない腕だ。 ニッチもサッチも行かなくなってはどうにもならない。 歩いて向かった。

洋菓子の詰め合わせを買い病院に戻り時計を見ると洗濯物の乾燥まではまだ時間がある。 琴音は一旦病室に戻った。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« みち  ~未知~  第48回 | トップ | みち  ~未知~  第50回 »
最新の画像もっと見る

小説」カテゴリの最新記事