大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第48回

2013年11月15日 15時25分12秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第48回



「実はね、さっき電話があったんだけど岡山の伯母さんがいるでしょ?・・・」 話を聞くと 岡山の伯母夫婦が京都方面の旅行に行っていたそうなのだが 旅行中、伯母が具合を悪くして京都の地で入院をしたそうなのだ。 
この岡山の伯母というのは琴音の母親の姉である。 

「え! それで伯母さんどうなの?」

「それがよく分からないのよ。 お兄さんがずっと岡山の人でしょ? 方言もあるし歳も歳だから言葉もちょっと分かりづらくて。 それでね、悪いんだけど琴ちゃんに見に行ってもらえないかと思って」

「いいわよ、明日は仕事だけど明後日は会社がお休みだから行ってみるわ。 明後日でいい?」

「うん、いいわよ。 仕事もあるのにごめんね」

「伯父さんにも伯母さんにもお世話になったんだもの。 これくらい何ともないわ。 でも京都って言ってもどこかしら? 私に分かるかしら?」

「えっとね・・・」 電話の向こうで紙をガサガサと広げる音がする。

「京都府長岡京市っていう所なんだけど 琴ちゃん知ってる?」 乙訓寺のある市だ。

「あ・・・知ってるわ」 病院の名前をメモし電話を切った。

すぐに地図を広げると場所を確認した。

「今度は乙訓寺のときみたいに適当に見ないでキチンと見なきゃ」 地図をじっと見た。

「えっと・・・あ、ここね。 乙訓寺がここだから・・・この道を逸れて・・・。 これなら簡単に行けるわ」 乙訓寺の位置も確認しながら地図をみた。


翌翌朝、車に乗り込みナビで検索するとすぐに病院が出てきた。

「ここなら 途中で目的地周辺です。 なんて言われても絶対分かるわよね」 そう言って車を走らせた。

慣れた道をずっと走り途中からは乙訓寺とは違う方向に行くもナビの指示通りに進むと難なく着くことができた。 病院の駐車場に車を停め中に入って行った。

案内所で病室を聞きエスカレーターを上がって行く。 

「こっちね」 廊下を歩いていくと病室の前に大きな身体の男性が背中を丸くし、下を向いて座っていた。

「叔父さん?」 学生のときを最後に叔父夫婦には逢っていなかったが 歳はとっているがそれでも身長も高くがっしりとした骨格は昔とそう変わらなかった。
椅子に座っていた男性が誰かの声がしたような気がして顔を上げ自分を見ている琴音をじっと見た。

「まさか・・・琴ちゃんかの?」 琴音の顔に最後に逢った頃の面影を見た。

「うん、そう、琴音です。 叔父さん・・・伯母さんはどうなの?」

「琴ちゃん、大きゅうなって・・・」 叔父の目に突然涙が溢れ出した。

「いけん、いけん。 男が泣くのはいけんな・・・」 慌てて涙を拭ったが知らない地での出来事。 張り詰めていた糸が緩んだのであろう。

(優しいけどガンコな叔父さんだったのに) 叔父に歳を感じた琴音である。

「バアさんが急に倒れよったんじゃ。 まぁまぁ、とにかく中に入ろうかの」 病室のドアを開け琴音を病室に入れた。

すぐにベッドに座っている伯母が目に入った

「伯母さん!」 その声にドアの方を見た伯母。

「バアさん、見てみんさい。 誰や分かるか?」 伯母がじっと琴音を見て

「まあ!まあ! 琴ちゃん! 琴ちゃんかね!」

「伯母さん・・・」 ベッドに座っている伯母の横に近づいた。

「大きゅうなって、ベッピンさんじゃー」

「伯母さん、倒れたって・・・」

「そうみたいじゃなー」

「みたいって・・・」

「わしがこんだけ心配しとるのに、バアさんはこれじゃ。 立ったままも何じゃでこの椅子に座りんさい」 丸椅子を端から持ってきて琴音を座らせた。

「何ともないの?」

「今はどうもないんじゃけど。 それがなぁ、そん時のことはよう覚えとらんのじゃ」 そこへ叔父が割って入ったが

「昨日検査したんじゃがな・・・@<&%☆・・・」 短い文章なら琴音も聞き取れるが こう長くなると叔父の言葉は全く分からない。

「伯母さん 今、叔父さんなんて言ったの?」 琴音が小声で聞いた。

「叔父さんの言葉はうちでも分からん時があるんじゃけん 琴ちゃんには分かりゃーせんわな」 琴音に耳打ちするように伯母が言い、そして今度は普通に話し出した。

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