大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第50回

2013年11月22日 21時25分54秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第50回



「伯母さん、この位ので良かったかしら?」 買って来た袋から箱を出してを見せると

「ああ、充分じゃー。 ありがと」

「私が渡してこようか?」 

「そうじゃなぁ、あん人に渡させるわけにはいかんけん琴ちゃんに・・・やっぱりここに置いといて。 うちが渡すけん」

「そう? じゃあここに置くわね」 それからは伯母の話し相手になり 

「京都旅行はどうだったの? ちゃんとできた?」

「はいな、金閣寺や銀閣寺、あちこち見て回れたんじゃ」

「それは良かったわ。 でもどうして長岡京市なの?」

「あん人がどうしても帰る前に長岡天満宮のつつじを見たい言うもんじゃから・・・そこのつつじは有名なんじゃて」

「そうなの。 それでこっちに来たのね。 つつじ見られた?」

「それが見に行く前に倒れたんじゃ」

「まぁ!そうだったの?」 二人の話を聞いていた叔父が

「わしが誘うたもんじゃけ言わんかったらよかったわ」

「なに言うてなさるん。 何処ででも倒れちょりました」 叔父が責任を感じているのを 察していた伯母がおどけて言った。

伯母といろんな話をし、叔父の分からない言葉は伯母が通訳してくれ楽しい時間を過ごしたが琴音、時間を忘れていないかい?

「あ、洗濯物! すっかり忘れてたわ。 伯母さん洗濯物を取ってくるわ」 慌てて地下に行くと洗濯機は止まっていた。 電気を点けすぐに洗濯物を取り出すと

「良かった、まだ暖かい」 いい具合に暖かく畳んでいてもまだふっくらとしている。

洗濯物を畳み終え紙袋に入れると小走りでケーキ屋へ行った足の疲れが今頃やってきたのか 置かれていた椅子に座り少し足をリラックスさせようと目をつぶって瞼の中の模様を見ていると 急にドン!と肩から背中に何かが乗った。

「イタ!・・・重い・・・」 重さは感じるが目に見える何かが背中に乗っているわけではない。
病院のさほど明るくもない地下のランドリー。

「まさかね・・・まさかね」 立ち上がり紙袋を持ってすぐにランドリーを出た。
一瞬ドン!ときた時の重さほどではないがそれでもずっと背中が重い。 平静を装い伯母の病室に戻り叔父と伯母のご機嫌を見ながら時間を過ごしたが もういい時間になってきた。

「じゃあ、叔父さん伯母さん もう帰るけど何かあったら言ってね、すぐに来るからね」

「琴ちゃん、ありがとな。 ほれから これ」 叔父が琴音に ティッシュにくるんだ物を差し出した。

「叔父さんこれって」 琴音が小さい時、叔父はいつもこうして小遣いをくれていたのだ。

「私が勝手にお見舞いに来たのに受け取れないわ。 それに慌ててたから手ぶらで来たのに・・・」 叔父と伯母の顔を見てそう言うと伯母が

「琴ちゃん、お菓子も買うて来てもろたんじゃし。 遠から来てもろて伯母さん嬉しかったんじゃ」 続けて叔父が

「伯母さんの気持ちじゃけん 受け取ってやってもらえんか?」

「子供のときに充分すぎるほど頂いたわ」

「そんな事 言わんと」 叔父が琴音の手を取り握らせた。

「叔父さん・・・」

「ありがと、ありがと」 伯母が今にも泣きそうな声で琴音に言う。
引くに引けなくなった琴音

「それじゃあ・・・頂きます。 叔父さん伯母さん、ありがとう」

伯母夫婦には子供がいない。 こうして駆けつけてきた琴音がさぞ有難かったのだろう。 
何度も何度も感謝をし琴音を見送った。

伯母夫婦に後ろ髪を引かれながらも車に乗り込んだ琴音、背中の重みはまだ消えていない。 向かう先はただ一つだ。

「乙訓寺に行って何とかしてもらわなくちゃ」 ナビをセットし、車をとばして乙訓寺に向かった


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