大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第54回

2013年12月06日 14時49分36秒 | 小説
『みち』 目次

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『みち』 ~未知~  第54回



みんなが降りるのを待って最後に琴音が降りると登山服を着た人たちが皆同じ方向に歩いていた。

「ここが最終停留所だったのね。 あの人たちって何処の山に登るのかしら?」 何処に向かって歩いていいのか分からず 登山服の人の後を歩いた。

すぐに売店がありその先に何人かが立っていた。 案内板を見ていたのだ。 案内板を過ぎると道が二手に分かれている。

「ああ、あれを見れば分かるわね。 きっと色んな山があるのね」 みなが去った後、琴音も案内板を見て

「えっと、現在地がここで 愛宕山登山口があそこ・・・どっちの道を行けばいいのかしら」 案内板をよく見ると山沿いに歩くか川沿いに歩くかの違いで どちらの道も登山口に繋がっていた。

「どっちからでも行けるのね」 それより琴音忘れていないかい? このまま登ってしまうと喉が爆発するよ。

「あ、そうだ。 朝食」 売店へ戻った。

売店にはお菓子と飲み物、ほんの少しのパンがあったが琴音が食べたいと思うパンではなかった。

「仕方ないわね、今日は朝食抜きだわ。 お茶だけ買いましょう」 500mlのお茶を1本買ってショルダーバッグに入れた。 あー、1本じゃ足りないよ。

「さ、準備完了。 出発しましょ!」 気合が入ってるね。 その気合がいつまで続くのかな?

琴音が選んだのは山側の道だ。 山側の道の下り坂を歩いていくと駐車場があった。

「ふーん、ここに車を止められるのね」 有料駐車場である。

「あら? この道どっちへ行けばいいのかしら?」 殆ど1本道だが 途中、7キロコースへ行く分かれ道があった。

「こっちの道をちょっと行って違ったらまた戻ればいいわよね」 先の見えにくい方の道を歩いていくと すぐに愛宕神社と書かれた鳥居があった。

「あ、ここね。 良かったこっちの道だったのね」 時計を見てから鳥居の前でお辞儀をし、手を合わせた。 そして手を下ろしもう一度お辞儀をし、鳥居をくぐった。

すぐに急な上り坂だ。 ペース配分も何もあったもんじゃないから 最初は勢いがよかったがすぐにダウンしてしまった。 

(ちょっと何よこの坂。 まだアスファルトなのにもうこんなに疲れてきちゃって 山登りも何もあったもんじゃないわ) さすがに相当疲れたようで 得意の独り言も声に出すことが出来ず心の中で叫び始めた。 

運動も何もしてこなかったこの数年、それなのにあの早いペースで歩き始めるなんて すぐにダウンするのは目に見えてるじゃないか。
それも今までの通勤はバスに電車、以前の会社ではエレベーターに座りっぱなしの事務だっただろう。 それに比べると悠森製作所に行くようになってからは 通勤は少しの時間でも自転車をこぎ、会社に行けば3階まで階段だ。 一日に何度か上って下りてしている分少しは体力がついたはずだよ。 ペースを考えて登ればもう少し楽になるはずだよ。

だが故意にペースを落とすなんて事は全く頭にない琴音。 足を休めることなく歩き続け 時々肩から落ちてくるショルダーを鬱陶しく感じ襷掛けにした。 見た目も何も考えず形振り構わずだ。 

ほらね長財布にして良かっただろう? ここでもし、ペットボトルが鞄に入らなかったら 手に持たなければいけなかっただろ? 落ちてくるショルダーが鬱陶しい以上に 持っているのが鬱陶しくなっていたに違いがないよ。 それにいつもなら気にならないペットボトルの重さも かなり重く感じたと思うよ。

ずっと下を向いて歩いていたが ふと顔を上げたときに目の前を歩く登山服の人を見た。 

(え!? やっぱりあの人たちって愛宕山に登りに来たの? ここってそんなに大変な山なの? 嘘でしょー) 後悔し始めているようだ。
それでも引き返すという事は頭をよぎらない。 やりかけた事は最後までやらないと気の済まない性格だ。

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