大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第42回

2013年10月25日 18時49分29秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第42回




「駄目よ私、落ち着くのよ。 きっと寝ぼけているのよ」 もう一度ベンチの背もたれにもたれゆっくりと目を閉じ気持ちを落ち着かせた。

(今度目を開けたら 完全に目が覚めてるんだからちゃんと見えるはずよ。 さっきは寝起きだったのよ、寝ぼけてただけなのよ) 心で独り言をいい、自分に言い聞かせてそっと目を開けた。

最初に見えたのは自分の足元だ。 砂利が見える。

「ああ、よかった。 ちゃんと見える」 本当に見えているかい? もっとよく見てごらん。

ほっとして少しずつ 視線を前に移動していく。

「葉もちゃんと緑に見えるわ」 その時気付いた。

「え? 左に見える葉は緑よね、なのにどうして右には 色が見えないの!」 顔を上げ辺りを見回した。

「やだ、緑しか見えないじゃない」 不動明王の前に供えられている花を見た。

「あそこのお花は全部色が見える。 どうしてなの?」 もう一度足元の砂利を見た。

「あ、よく見たら砂利の色も違うじゃない。 元々白黒っぽいとはいってもなにか色が抜けている感じじゃない・・・もうやだぁ。 いったい何なのよー」 そうこうしていると徐々に目の前の風景に色がつきだしたものの 風邪の事など頭から離れていた。

「いったいなんだったのよ、もうイヤ。 車の運転中にこんな事が起きたらどうするのよ」 腕時計を見ると3時間がたっていた。

「ええ! もうこんな時間になってたの? 早く帰らなくちゃ、私ったら何やってるんだろう」 気付かないかい? 頭がすっきりしているだろう? それに咳も鼻詰まりもなくなっただろう?

車に乗り込みすぐさまヒーターをつけた。 

高速に乗るころには車内も充分暖かくなっていた時に鼻水をすすった。 その時に気づいた。

「え? 私今鼻をすすったって・・・鼻詰まりがなくなってる。 そういえば咳も出てない。 頭もスッキリしてるってどういう事?」 驚いてばかりいて 運転を疎かにしてはいけないよ。


マンションに着いたが今日の出来事がどうしても理解できない。 自分の体調を見直してみた。

「えっと 頭は全然熱っぽくないわよね、ボォっともしてないわよね。 鼻は鼻水も止まった。 詰まってもいないわよね。 咳も出ないわよね・・・どうして・・・?」 治ったんだから今はそれでいいじゃないか。 ぶり返さないように早く風呂で温まるといいんじゃないか?

「とにかく 治ったみたい? そうみたい」 一人で何を言ってるんだ?

「じゃあどうしようか・・・」 え? どういう事だい?

「喉が渇いたからコーヒーを飲みましょう。 ハイそうしましょう」 頭の中が整理できているのか 出来ていないのか。

コーヒーを作りながら

「狐につままれるってこういう事なのかしら」 まだ整理できていないようだね。 鳩が豆鉄砲をくらった様な目になっているよ。 

コーヒーを飲みながら少し落ち着いたのか

「どうしてなの? 色が見えないって・・・色が抜けちゃうって。 今までそんな事は無かったわ。 今までと何処が違うの?」 思い返してみる。

「時間? 今日は確かに今までより長い時間座っていたわ。 それが原因かしら? 今日は3時間でしょ・・・うん、きっとそうね。 寒空で3時間もウトウトしてれば脳も色の認識がおかしくなるわよね。 そうね、それに風邪が治ったのは荒治療が効いたのね。 荒治療ってやってみるものなのね」 妙に納得した琴音であったが よく思い返してごらん。 それならどうして供えられていた花の色だけは見えたんだろうね。 それに半分寝ていたんだろう? それで荒治療もあったもんじゃないだろう。

「ああ、そう言えば 年始業務で頭が一杯だったから最近本を読んでないわ。 明日借りに行こうっと」 え? もう考えないのかい? 切り替えが早いと言っていいのかどうなのか。 まぁ、考えて分かる事じゃないだろうけどね。


翌日図書館へ出かけた琴音。

ふと本棚の横を見ると 山関係の本が置いてあった。

「綺麗な山。 昨日はちょっとパニクっちゃったから 今日は山の写真でも見ようかな」 やはり整理できていなかったみたいだね。 今度は山の本を2冊借りた。

家に帰り何もかもを済ませリラックスした状態で コーヒーを片手に和室の机で山の本をパラパラと見だした。

「あら?」 パラパラとめくっていた手が止まった。

「愛宕山?」

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