『みち』 目次
第 1回・第 2回・第 3回・第 4回・第 5回・第 6回・第 7回・第 8回・第 9回・第10回
第11回・第12回・第13回・第14回・第15回・第16回・第17回・第18回・第19回・第20回
第21回・第22回・第23回・第24回・第25回・第26回・第27回・第28回・第29回・第30回
第31回・第32回・第33回・第34回・第35回・第36回・第37回・第38回・第39回・第40回
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『みち』 ~未知~ 第43回
高校生の時にこの文字を書かれた石碑を見て 「これはなんて読むのかしら? あたごって読むのかしら?」 何の理由も無くそう思ったのだ。
そして以前の会社で行われた「青年団海の家」の宿泊先で ある男子の部屋が愛宕部屋と書かれてあったのだ。
この海の家、仰々しい名目ではあるが 毎年男子だけで行っている 中堅社員が若い男子社員を連れての 夏のお楽しみ行事のようなものなのだ。
男子だけの旅行で本来女子は行かなくてもいいのだが 中堅社員から琴音が誘いを受けたのだ。 部署の違う中堅社員といえど琴音から見れば上司に当たる。 そう簡単に断りが出来ない。 この時には既に文香は退職していたので琴音は同じ部署の後輩女性社員を誘って参加したのである。
男子100名ほどに女子2名だ。 女子の部屋と中堅社員の部屋は 若い男子社員とは違う建物であったが中堅社員から「山水部屋にこれを持って行ってくれないか」 と用事を頼まれ訪れた山水部屋の隣が愛宕部屋だったのだ。 その時、すっかり忘れていた高校時代に見た石碑を思い出した。
「この字・・・」 愛宕部屋の前でその文字をじっと見ていると後ろから若い男子が歩いてきた。
「そこの部屋に何か用ですか?」 男子がドアの上に木で書かれた 『愛宕部屋』 という文字をじっと見ていた琴音に声をかけた。
「あ、いえ、山水部屋に用なんです」 我に返って返事をした。
「僕、山水部屋ですよ」
「あ、じゃあ 山水部屋の方にこれを渡すようにと」 中堅社員から預かっていた物を渡した。
「あ、ありがとうございます。 待ってたんです」
「あの、教えていただきたいんですけど」
「何ですか?」
「ここのお部屋・・・これなんて読むんですか?」
「あたご ですよ。 え? この読み方知らないんですか?」
「物知らずで・・・有難うございます」
そんなことがあった 『愛宕』 という文字。 やっと引っ掛かったようだが琴音よく考えてごらん 高校生の時からこの文字は始まっていたのだよ。
「愛宕山か 山になんて登られないわよねぇ。 本で写真を見るだけね」 いや、そうじゃあ無いだろう。 思い出してごらん。
「あら? 愛宕山? ・・・そう言えば 森川さんの旦那さんが確か愛宕山に登られたとかって仰ってたんじゃないかしら。 でもここからは遠いじゃない」 それからパラパラとめくっていくと
「京都? 京都にも愛宕山があるの? 愛宕山ってあちこちにあるのね。 行けない距離じゃないのね。 森川さんの旦那さんはここを登ったのかしら」 その後も山の綺麗な写真を見ていたが
「あ、もうこんな時間。 明日仕事なのに 早くお風呂に入らなくちゃ」 すぐに風呂の用意をし 湯船に浸かった琴音。
「何なのかしら。 山の写真を見たからなのかしら すごくリラックスしてるわ」 目を瞑り 身体を温めた。
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そして以前の会社で行われた「青年団海の家」の宿泊先で ある男子の部屋が愛宕部屋と書かれてあったのだ。
この海の家、仰々しい名目ではあるが 毎年男子だけで行っている 中堅社員が若い男子社員を連れての 夏のお楽しみ行事のようなものなのだ。
男子だけの旅行で本来女子は行かなくてもいいのだが 中堅社員から琴音が誘いを受けたのだ。 部署の違う中堅社員といえど琴音から見れば上司に当たる。 そう簡単に断りが出来ない。 この時には既に文香は退職していたので琴音は同じ部署の後輩女性社員を誘って参加したのである。
男子100名ほどに女子2名だ。 女子の部屋と中堅社員の部屋は 若い男子社員とは違う建物であったが中堅社員から「山水部屋にこれを持って行ってくれないか」 と用事を頼まれ訪れた山水部屋の隣が愛宕部屋だったのだ。 その時、すっかり忘れていた高校時代に見た石碑を思い出した。
「この字・・・」 愛宕部屋の前でその文字をじっと見ていると後ろから若い男子が歩いてきた。
「そこの部屋に何か用ですか?」 男子がドアの上に木で書かれた 『愛宕部屋』 という文字をじっと見ていた琴音に声をかけた。
「あ、いえ、山水部屋に用なんです」 我に返って返事をした。
「僕、山水部屋ですよ」
「あ、じゃあ 山水部屋の方にこれを渡すようにと」 中堅社員から預かっていた物を渡した。
「あ、ありがとうございます。 待ってたんです」
「あの、教えていただきたいんですけど」
「何ですか?」
「ここのお部屋・・・これなんて読むんですか?」
「あたご ですよ。 え? この読み方知らないんですか?」
「物知らずで・・・有難うございます」
そんなことがあった 『愛宕』 という文字。 やっと引っ掛かったようだが琴音よく考えてごらん 高校生の時からこの文字は始まっていたのだよ。
「愛宕山か 山になんて登られないわよねぇ。 本で写真を見るだけね」 いや、そうじゃあ無いだろう。 思い出してごらん。
「あら? 愛宕山? ・・・そう言えば 森川さんの旦那さんが確か愛宕山に登られたとかって仰ってたんじゃないかしら。 でもここからは遠いじゃない」 それからパラパラとめくっていくと
「京都? 京都にも愛宕山があるの? 愛宕山ってあちこちにあるのね。 行けない距離じゃないのね。 森川さんの旦那さんはここを登ったのかしら」 その後も山の綺麗な写真を見ていたが
「あ、もうこんな時間。 明日仕事なのに 早くお風呂に入らなくちゃ」 すぐに風呂の用意をし 湯船に浸かった琴音。
「何なのかしら。 山の写真を見たからなのかしら すごくリラックスしてるわ」 目を瞑り 身体を温めた。