大福 りす の 隠れ家

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みち  ~未知~  第44回

2013年11月01日 23時44分38秒 | 小説
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『みち』 ~未知~  第44回



翌朝 仕事に行く準備をしながら

「さ、昨日は山の写真を見て目の保養も出来たことだから 今日は他の本を読みましょうか」 昼休みに読む本を手に仕事に向かった。


会社の昼休みが半分を過ぎた頃に電話が鳴った。 読んでいた本を置き電話に出ると森川であった。

「森川さん! お久しぶりです」

「久しぶり、遅くなったけど 明けましておめでとう」

「明けましておめでとうございます。 お元気にされてますか?」

「うん、有難う。 お陰様でね、元気よ。 それより年始の仕事わかったかしら? 私ったら年始業務の事を引き継ぐのすっかり忘れてたって今になって思い出して、どうだった? 出来た?」

「はい、なんとか。 前年の資料を見ながらやったので 多分合っていると思います」

「良かった。 夕べそれを思い出してもうどうしようかと思ったのよ」 ほっとした森川の気持ちが伝わってくる。

「でも、多分なんですけど」 自信なさげに琴音が言うと

「織倉さんなら大丈夫よ。 合ってるわよ」 ここで普通なら「きっと合ってるわよ」 と「きっと」 という言葉を付けるであろうが それを付けると自信のない琴音には言葉が弱いと考えた森川の発言だ。 相手を理解する能力に長けている。

「良かった、仕事の事は安心できたわ。 どう? 織倉さん元気にやってるみたいね」

「はい、会社の皆さんがとても良い方ばかりで恵まれています」

「そう、それは何よりだわ。 皆さんもお元気かしら?」

「はい、やっぱりこの不況に巻き込まれていますけど 皆さん明るくいらして会社の中も活気があります」

「あら、やっぱり業績良くないままなの?」 森川が辞める数年前から業績が落ちてきていたのだ。

「厳しいです。 でも仕方ないですよね、何処もそうみたいですから」

「うふふ それは織倉さんのせいじゃないものね」 電話の向こうのあの笑窪を安易に想像できた。

「はい、そうであってほしいです」 琴音も冗談で言葉を返し そして

「あ、一つ教えて頂きたかったんですけど」

「なあに? 覚えているかしら。 答えられればいいんだけど」

「支払手形の送付切手のことなんですけど」

「ああ、書留の500円切手ね」

「はい。 受取手形が来る時には 380円の簡易書留で来てるんですが、書留よりそちらのほうが安いので うちも簡易書留にしてもいいでしょうか?」 この財政難、切手代の120円でも浮かせたいようだ。 だがね・・・。

「別にいいんだけど、簡易にしてもし万が一があったら大変でしょ? 後になって困らないためにも書留にしておくほうがいいわよ」

「そうですか。 じゃあ今まで通りに書留にしておきます」

「他に分からない事はない?」

「えっと・・・今のところはこれくらいでしょうか・・・」 急に言われても思い当たらないようだ。

「いつでも聞いてね」

「はい、有難うございます」 そして続けて

「森川さん毎日どうされているんですか? 時間が余らないですか?」

「とんでもないわよ、時間が足りないくらい」 会社に居る時からパタパタと動いていた森川だ。 時間など余らないのであろう。

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