私が実物大の、史上最大の戦艦・大和を広島県尾道へ見に行ったのは、
2006年3月の事でした。
若い頃から独り旅オンリーだった私が、
初めてパック旅行を経験した旅でもありました。
何しろ軍艦オタクの私にとって、
実物大の戦艦大和が存在している事自体が信じられない事だったのです。
それは、映画「男たちの大和」の為のセットとして造られた物だったのです。
初めてそんな物がある事を、たまたまスポーツ新聞で知った私は、
一気に頭に血が登り、
親の死に目に会えずとも俺は行くッ。行くとなったら死んでも行く。
っと、今まで馬鹿にしていたパック旅行者となったのでした。
さて、
その映画「男たちの大和」の話です。
その映画撮影の為に、18歳、19歳という、
約100人の少年と更に主役の少年一人を選考したのです。
オーディションには約2000人が集まりました。
三次・四次と選考を重ねて絞っていくうちに、
少年達の様子が少しづつ変わってきたそうです。
茶髪でピアスだった少年が、第五次選考の時は普通の姿で現れたので理由を訊くと、
「先生に大和ってホントにあったんですか。
そして日本は負けたんですか、と聞いたら、
『ホントだよ。負けたんだよ。
日本は負けてたくさんのものを失ったんだよ』と教えてくれた。
しかし、周りを見渡しても何を失ったかが、さっぱりわからない。
日本には何でもある。
だけどこのあいだ、ハッとして分かりました。」
審査員一同は身を乗り出して、
それは何かと聞くと、
「それは道徳です」と答えた。
どうやらそのひと言で、その少年は採用と主役が決まったらしい。
道徳を大事にする精神は、まだ水面下に生きていたのである。
「男たちの大和」の公開に向け撮影が進んでいるが、
少年達の演技は日一日と真剣の度を加えているそうです。
『同世代の少年達がこの様に戦って、みんな死んでいったのかと思うと、
仇やおろそかにアクションは出来ません』
と言っているそうです。
精魂込めて大和を造った事は、ムダではなかった。
3300人の若者は死んだが、
その精神は後世に伝わっていると思うと、私は涙が止まらなかった。
軍艦オタクの私が読んだ本のあとがきに、
この話が書かれていたのです。
それを読んだ私も、泣きました。