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田原順子の琵琶

2015-06-07 08:28:25 | 楽器
琵琶演奏 「祇園精舎」 ~伝統音楽デジタルライブラリー


数年前、東京目黒の小さな会場に、
田原順子さんの琵琶を聴きに行った事があります。

それよりずっと前には、上原まりさんの琵琶を聴きに行った事がありました。
元・宝塚スターだった上原まりさんは、
琵琶奏者・柴田旭堂氏の一人娘なので、
宝塚退団後に父親の道を継いだのは自然の成り行きだったのかも知れません。

上原まりさんは「平家物語」をライフワークとしていて、
自身で作曲したりもして「平家物語」に対する思いは並大抵ではありません。
そこに至る過程を著書に描いたりもしています。

それに対し、田原順子さんは「平家物語」に関しては、全編を演目にはしてないみたいで、
さわりの部分(例えば祇園精舎)とかを演じる様です。

しかし、私は上原まりさんのソプラノより、
やや低音のアルトで演じる田原順子さんの「平家物語」が好きです。
平家一門の悲しさは、やはりアルトの方が合ってる気がします。

(ちなみに田原順子さんは私たちの歌声仲間であり、
千葉県・船橋で「坪井の歌声喫茶」を主催する、ミクシー名(ポクテ)さん、
伊藤美知子さんと高校時代の同級生という事です)

3年前の9月に、
平家落人集落として有名な、栃木県の湯西川温泉に行きました。
そこには平家の資料館があり、
藁ぶき屋根数棟が立ち並び、平家琵琶の物悲しい音色が流れていました。
その音色は、天国から地獄へと叩き落された平家一門の悲しみそのものを感じさせました。


「平氏にあらずば人にあらず」とまで豪語し、
我が世の春を謳歌した平家は、総氏・平清盛が亡くなってから
わずか4年で・山口県の果て、壇ノ浦に滅亡していきます。
清盛の娘・建礼門院は我が子・安徳天皇と共に舟から海へと身を投げますが、
他の平家一門ことごとく滅んでいく中、彼女だけが助け上げられ、
京都・大原寂光院で尼となって平家一門を弔いながら生きながらえます。

源氏の総氏・源頼朝は、自身の生い立ちが、
平家一門の、ホンの情け、ホンの気まぐれから生き延び、
それが為に平家を滅ぼすのですから、
骨の髄まで、血の存続の恐ろしさが分かっています。
故に平家の「血」一滴たりとも見逃す事はなく、根絶やしにかかります。
それは長期間にわたり周到に徹底的に行われました。

壇ノ浦から落ち延びた平家一門は、
源氏の追及が尋常ではない事を悟り、必死の逃亡をします。
ちりじりバラバラとなって地の果てまでも逃げて行きます。
源氏の追手に見つかったが最後、女子供であろうと情け容赦なく、
皆殺しになるのですから、もう死にもの狂いで逃げて行きます。
源氏に見つからぬ様に煙を立てる事も、音をたてる事もままならず、
彼等の恐怖心は如何ばかりであった事でしょう。

そんな悲しい平家一門の姿を描いたのは、琵琶法師たちによる
筑前琵琶でした。
平家滅亡は文章でなく、琵琶法師によって口から口へと語り継がれていったのです。

そういった悲しみをたたえた平家琵琶の音色。
田原順子さんの語りを聴くと、彼等・平家一門の悲しさが伝わってくる思いがするのです。





コメント (2)
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