高木貞治氏による1930年初版の「代数学講義」を最後まで読みました…、いや途中からはいつもの速読にしてしまいました。というのも取り上げられている話題自体は線形代数で出てくる範囲のものです。
線形代数としてまとめられる直前の時代のもので、おそらく典型的な代数学の説明だと思います。何というか、数学としてのまとまりとか面白さは分かります。が、現代工業社会の大量の計算需要からすると、現代風の線形代数、つまりベクトルと行列として進めた方が大量の技術者の要求には応えられる感じがします。
予定通り、同氏の整数論の本を読んで、現在の続きの話に戻りたいと思います。
代数学なのでn次の多項式の方程式が出てきて、それを解くためには複素数を導入しないといけなくて、三次式、四次式と進んで、五次式の一般解法は無く、その理由を述べます。微積分とは分野が違うので積分記号は出てきませんが、微分、つまり無限小は出てきます。その後、連立一次方程式に戻って、行列式と二次形式(一般の判別式)が出てきて終了します。
現代に必要なのはその連立一次方程式の具体的計算で、初期の計算機科学は必要となる巨大な連立一次方程式の数値解法が一つの目標でした。これは行列式を使うと計算規模が爆発してしまうので工夫が必要です。おそらくその結果、線形代数に移行したのでしょう。少なくとも一つの理由のはずです。
元の数学の代数学の方は整数論に進んでしまいます。数値計算から数式の取り扱いに移った訳ですが、なぜ整数の問題になるのかというと、そこの所は今は一般理系の数学教育コースには無いので今回のようにわざわざ古典代数学を振り返らないといけません。
感じとしては、代数学の基本定理の典型として円分方程式があり、ここは複素平面を考えると分かりやすく、解の分布はトポロジーみたいになって、その調査のためには具体的に計算可能な有理数の係数の方程式を扱い、分母を払うとすべて整数になる、そんな感じです。ごく自然に整数から複素数に入るのがミソで、この先を追うと少し面白くて、暇な時間に調べようと考えています。そう、深入りすると今の私の関心事から離れます。
この方向の「代数学」で欠けているのは楕円関数論などの特殊関数の方向です。楕円関数は物理では微分方程式の話題の一つとして出てきて、光学や分子軌道で出てくるベッセル関数とか球面調和関数もこちらです。こちらも複素平面ではトポロジーと格子となりますから整数と関連しているのですが、なぜかコースが別になります。
現代の線形代数と微積分の方向とも微妙に違って、こちらも普通の理系の学校教育とは別に学習しないといけません。数学史の中では極めて重要な調査項目と思います。
これらは私が持っている1960年頃初版の数学公式集の項目に網羅されています。しかし、公式集だけあって解説は簡潔です。私の頭の中ではまだまとまっておらず、個々の項目として個別にあるだけです。まとまるようなら本ブログで報告しますが、そんな解説書は見たことは無いので、厳しい感じがします。