ですから、いきなり微積分に出会うと最初の方で挫折する可能性は高いと思います。最初のあたりは要するにコツですので、何度でもトライしてみて下さい。
とはいえ、授業は続いてしまいますので、まずはサバイバル術から。
微分の最初の効用は速度や加速度などの変化率の数式が簡単に得られることです。積分ならその逆で蓄積の式。ですから理屈は簡単に覚えておいて、公式集のようなものだと考えるのが第一。実際、授業でも導関数の定義が出たら最後、次々と公式の説明に入ると思います。
数式ばかり出てきますが、これは微積分の開発当時は画期的なことで、今や高校生でもこの手の計算が可能です。それまでは級数などで近似するしか無く、とてつもない作業だったようです。
私の場合はNHKのコンピュータ講座に助けられました。つまり数値計算の話に逃げます。これはおそらく授業ではやりません。しかし、応用上は極めて大切なので、話題には事欠きません。
アナログコンピュータの場合は積分器で、デジタルコンピュータの場合は積和演算です。たとえば、定積分は2000円程度の関数電卓にも入っているはずですし、おそらく表計算ソフトは対応していると思います。適当な関数をつくって計算させてみると、なんだか分かったような気分になりますし、実際の現場の計算も似たようなものと思います。
などとごまかしている間に、図書館でそれっぽい解説書を片っ端から見てみます。もうすでに一回挫折していますから、途中で分からなくなっても平気。もしかしたら自分に合う解説の本に出会えるかもしれませんし、ついでにいろんな情報に触れることになります。
導関数の導入は微係数(微分係数)の話で、接線の傾きの極限の式、
lim(h→0){(f(a+h)-f(a))/h}
で、関数y = f(x)のx = aにおける変化率を示し、f'(a)と表記します。関数が定義域の各点で微分可能であれば、関数f'(x)を考えることが出来て、これが導関数です。微分法の基本的な定義です。
ここで表記の話題となり、f'(x)のことを、
(d/dx)f(x)
と書きます。タイピング上、括弧でくくりましたが、普通は分数は縦書きして括弧は付けません。この割り算の意味は大抵は曲線に接した小さな直角三角形で説明されると思います。
そう、このdxが無限小のxで、言葉上の微分そのものです(対照語は差分(Δx))。話の展開によってはdxをあたかも普通の変数のように使います。ただし、このdxは数かどうか微妙な存在で、あえて書いてしまうと、
x + dx = x
で、ここは数学者もあまり突っ込まれたくない場所みたいです。数式の操作上の存在と考えた方が吉のようです。それを承知で使うと、いろいろと便利、ということ。ちなみに、x + Δx ≠ xです、ワンステップ先のxですから当然。
公式集では微分の基本公式の紹介の後、高次導関数、テイラー展開、極大値・極小値と話が進み、導函数の節は終了します。次節、D. 多変数の函数で∂(ラウンドディーまたはカーリーディー)が出てきますが、これは積分の話が一巡したずっと後で出てくる偏微分方程式の専用記号と考える方が良いと思います。
公式集の次の章は積分学で、積分は冒頭でごく簡単に定義されてしまっています。
函数F(x)の導函数がf(x)であるとき、任意の定数cとF(x)の和F(x)+cをf(x)の原始函数または不定積分と呼び、これ(F(x))を、
∫f(x)dx
で表します。cは積分定数、∫は積分記号と呼ばれます。
これ以降は公式が延々と続くことになります。
ここまでで、微分と積分の原理的な意味と数式の書き方が分かったと思います。公式集と併せると、これだけでもいくつかの応用が利きますが、何か思っていた微積分と違うような感じがする、…少なくとも私はそう思いました。
つまり、自然を記述するだけで無く、シミュレーションして少し設定を変えて、別の振る舞いも見たい、そんな感じでしょうか。
これには微分方程式というのを使います。
で話を続けようと思いましたが、公式集の微分方程式の所は結構難しく、別の常微分方程式の解説書も同様に難しいです。応用例だったらかなり使っていると思うので、うすうすは分かるのですが、実際の電子回路やコンピュータの計算の技法などと数学用語の対応がいまいちつかめていません。なので、私の勉強がやり直しです。つまり本シリーズは終了です。