OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

三寒四温に熱いアルバム

2006-03-03 18:04:08 | Weblog

今朝は雪がかなり積もっていましたが、昼頃には融けはじめ、三寒四温を実感しています。こういう時には、やはり熱い珈琲とアルバムがいいですね。例えば――

Carlos Santana & Buddy Miles ! Live ! (Colmbia)

サンタナが好きだ! なんて愛の告白ではないけれど、サンタナというグループもサンタナというギタリストも好きなんです。その理由は簡単で、聴いていていつも気持ち良いからですが、それに加えて何とも言えぬ物凄さ、得体の知れない不気味な快感を覚えた最初のアルバムがこれです。

メンバーはカルロス・サンタナ(g)、ニール・ショーン(g)、ロバート・ホギンズ(key)、ロン・ジョンソン(b)、バディ・マイルス(ds,vo)、グレッグ・エリコ(ds,per)、コーク・エスコベード(per)、ミンゴ・ルイス(per)、マイケル・カラベーロ(per)、ルイス・ガスカ(tp)、ハドリ・キャリマン(ts,fl) 等々が参加して、1971年の大晦日にハワイでライブ録音されたことになっていますが、今となっては後にスタジオで手直し、再録音されたことは常識になっており、しかもそれ故に演奏メンバーの詳細も怪しくなっています。

まあ、それはそれとして、とにかく白熱の演奏であることは間違いありません。それは――

A-1 Marbles
A-2 Lava
 湧き上がる拍手の中で、テンションの高いリフが始まり、上記2曲がメドレーで演奏されますが、グォ~ンとせり上がって来るオルガンがまず圧巻です。そしてすぐさま、オルガンのリードで演奏は白熱し、もちろんその背後にはラテンリズムとロック、ソウルのビートが渦巻いていくのです。
 そんな中でカルロス・サンタナのギターはワウやトレモロを使いまくった激しいソロを聞かせますが、それは今までのサンタナとしてのイメージを覆すというか、物凄くジャズっぽく、前衛的なものを含んでおり、まるっきりジョン・マクラフリンかジミ・ヘンドリクスの影響がモロ出しになっているのです。またそれに後半で絡んでくるニール・ショーンのギターも短いながら強烈です。
 演奏はこの後、ラテン・パーカッションの乱舞から2曲目の「Lava」に突入しますが、それも前曲のリフの改変曲という雰囲気で、ここではニール・ショーンのギターが大暴れします。ちなみにこの時のニール・ショーンは若干16歳! 当に天才です。もちろん観客は大喜びの大歓声です♪

A-3 Evil Ways
A-4 Faith Interrlude
A-5 Them Changes

 これもメドレー形式で演奏されますが、まず「Evil Ways」はご存知、サンタナの大看板ヒット曲! ここでは従来のラテン味に加えて、より一層、ソウル味を強めて演奏されています。その原動力はドラムス&ボーカルのバディ・マイルスの存在です。この人はジミ・ヘンドリクスとのバンド・オブ・ジプシーズでの活動が有名ですが、ここではラテン・ソウルという水を得て、本当にイキイキと歌いまくりです。
 演奏では炸裂するホーン隊のリフ、白熱するオルガン・ソロ、渦巻く打楽器群のビートには完全降伏のエキサイト状態に持っていかれます。さらにハドリ・キャリマンのコルトレーン派丸出しの激烈テナーサックス・ソロ、ルイス・ガスカのハイノート・トランペットも興奮を煽ります。う~ん、こんなん生で見たら発狂でしょうねぇ♪
 そしてその興奮の頂点で、いきなり和みのホーン・リフが演奏され、これが「Faith Interrlude」という曲なんでしょうが、お待ちかね、サンタナの官能のギターが登場してきますので、ここが最高のに気持ち良さで、心底、痺れます♪ 本当に短いのが残念ですが、その未練を残しつつ、演奏はクライマックスの「Them Changes」へ突入します。
 ここはフリージャズっぽい混濁に満ちたパートを経ているので、大興奮のリフが始まると、もうたまりません♪ この南部ソウル的なノリにラテンリズムのスパイスは最高ですねぇ! バディ・マイルスのボーカルも、とことん黒っぽく、サンタナのギター泣きまくりです。ただし物凄く前衛暴力的というか、ここでもジョン・マクラフリンの影響がモロ出しになっています。ちなみにこのあたりになると、完全にスタジオで手直ししているのが分かるのですが、ライブ特有の熱気を見事に再現していると思います。

B-1 Free Form Fnukafide Filth
 タイトルどおり、フリージャズとファンクの融合を狙ったジャムセッションです。もちろん拍手や歓声が聞こえるのでライブ演奏かと思いきや、これは完全にスタジオで加工されている演奏です。それは明らかに複数聴こえる各種楽器の絡み等から明らかですので、じっくりお楽しみ下さい。というか、実はあまりそのあたりを気にするのも不粋な話ですね……。
 さて、演奏は思わせぶりな出だしから、激烈ファンクの嵐となり、このあたりはマイルス・デイビスが出てきそうな雰囲気さえ漂います。もちろんサンタナのギターは官能と泣き、明暗のはっきりしたフレーズをたっぷり聞かせてくれます。またハドリ・キャリマンはバリバリのジャズメンとしての矜持を保つ貫禄のソロ、バディ・マイルスはどこまでも重いビートで勝負しています。
 そして中盤はラテン・パーカッションの乱舞の中で、参加メンバー各々が自己のペースを掴もうと暗中模索していきますが、そこから全員がひとつのグルーヴを作り上げていくあたりが圧巻です。もちろん録音編集操作によって、演奏は幾重にも重ねられ、あるいは切り貼りされているのですが、それが逆にプログレ味まで出ており、混濁的快感に浸れるのです。
 さらに後半はバディ・マイルスの即興的な歌まで飛び出し、ハドリ・キャリマンのテナーサックスやサンタナ&ニール・ショーンのギターも熱く炸裂して大団円を迎えるのでした。

ということで、これは熱いアルバムです。そしてカルロス・サンタナというギタリストが単なるラテンロックの範疇からジャズ・フュージョンに大きく踏み出した、その第一歩を記した作品でもあります。この後、グループとしてのサンタナは「キャラバン・サライ」という、凄いけれども、その反面、煮えきらず、つまらない傑作盤を出すことになります。そしてそれ故にバンドはメンバーの出入りが激しくなり、純粋のバンドではなくなってしまう時期に突入するのですが、その発端はこのセッション・アルバムだったように思います。

今にして思えば、それはそれで正しい道だったようにも思いますが、今日でもバリバリの第一線で活躍するカルロス・サンタナとグループとしてのサンタナは、驚異の不死鳥とでも申しましょうか、ここで聞かれるグルーヴは永遠に不滅です。

コメント
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