OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

無駄使い的情熱

2006-03-27 17:41:27 | Weblog

またまた忙しくなって、時間が経つのが早いです。気持ちも高ぶっていますし、自分の体内からエネルギーが放出されているのが感じられるほどですね。これは危ない雰囲気の前触れでしょうか……。

そんな気分で本日の1枚は、アドレナリンが噴出したこれを――

Let Freedom Ring / Jackie McLean (Blue Note)

ジャズ喫茶の人気者といえば、今も昔もジャッキー・マクリーンである! とは私が勝ってに言っていることではありますが、マクリーンほどジャズ喫茶の空気が似合うジャズメンもいないと思います。

それは何と言っても、あのギスギスした激情の泣き節がミソで、常に小細工の無い無鉄砲なフレーズで勝負しているところに、私は共感を覚えます。実際、ジャズ喫茶で妙に迎合したような人気盤が続けて鳴った後に、マクリーンのリーダー盤がかかったりすると、その場の雰囲気がシャキッとディープにジャズ寄りになるという体験を、私は何度もしています。

またマクリーンの演奏からは、どういう理由か、常に「青春の情熱」みたいなものを感じてしまいます。

で、このアルバムはそんなマクリーンが自分の持ち味である「青春」をキーワードに、ハードバップを超越した新しいスタイルに挑戦した1枚ですが、にも拘らず、極北的なハードバップになってしまった作品です。

メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、ウォルター・デイビス(p)、ハービー・ルイス(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) というワンホーン編成で、録音は1962年3月19日とされています。その内容は――

A-1 Melody For Melonae
 まずピアノのオドロオドロしたイントロが、怪獣映画の音楽のような重い情念を漂わせており、まずここで惹き込まれます。そして今しも怪獣が現れそうな雰囲気から、せつなくも不気味なテーマが奏され、一転、アドリブパートではアップテンポで、これぞマクリーンという激情のアルトサックスが満喫出来ます。
 しかもその中にはキェーッというヒステリックな叫び、コマ切れなビートを増幅させたようなフレーズも飛び出して、このあたりは当時のアルトサックスでは最先端だったオーネット・コールマンに果敢に挑戦したところでしょう。
 ちなみにドラムスのビリー・ヒギンズはオーネットのバンド出身で、ここでも烈しく、細かく敲きまくりの得意技で押し通していますが、それもマクリーンの思惑どおりといったところでしょうか。とにかく快演です。
 その演奏志向は、正統派ビバップスタイルがウリだったウォルター・デイビスのピアノにも及び、ここではモードを取り入れたソロに終始しています。ただしそれが上手くいっているか、否かは聴き手の好みによるところです。

A-2 I'll Keep Loving You
 天才ピアニストのバド・パウエルが作曲した哀切のスロー・ナンバーですので、ここでも定石どおり、ウォルター・デイビスがテーマを変奏した無伴奏のイントロをつけています。もちろんマクリーンもせつなさ全開の音色と節回しでテーマを奏でてくれるので、ここでかなり満足してしまうのですが、アドリブパートではさらに泣きのフレーズの大盤振る舞い! クライマックスでのキェーッという叫びも嫌味になっていません。リズム隊の劇的なバックアップも素晴らしいかぎりです。

B-1 Rene
 マクリーンが息子のルネのために演奏したブルースです。思わせぶりな前奏から快適なテンポのテーマ、そしてアドリブパートでの自由奔放な展開が痛快です。ちなみに「A-1」は愛娘メロネーのための曲でした。
 で、ここでもビリー・ヒギンズが徹底して隙間を埋めようかという、それは怖ろしいほどに敲いています。またウォルター・デイビスの合の手も気持ち良く、マクリーンはますます快調に吹きまくるのです。
 ただし全体の纏まりは最悪に近いというか、聴いているうちに、何となく時間潰しのような雰囲気になるのが正直なところです。しかしこれもジャズの魅力で、タバコの煙と珈琲の香りで満たされた暗いジャズ喫茶の空間には、これが本当に合うのでした。

B-2 Omega
 イントロからハービー・ルイスのペースを中心したリズム隊の弾けっぷりが印象的なアップテンポのモード曲です。とにかくリズム隊のノリが強烈な凄みに満ちておりますから、マクリーンも思いっきり泣き叫ぶことが出来た演奏です。

ということで、これは所謂新主流派に属する演奏だと決め付けたいのですが、その底流には間違いなくハードバップの心意気が存在しています。それは奔放にフリーであろうとすればするほど、ビバップに捕らわれていくマクリーンの姿そのもので、烈しくアウトしたフレーズの後に出てくるマクリーン節に安心感の極みを見出してしまう聴き手の我侭がそうさせるのか、あるいはそれを無意識に演じてしまうマクリーンの無邪気さか、あるいは全ては算盤尽くだったのか……。

そのあたりを論ずる前に、とにかく聴くしかない気持ちにさせられるのが、このアルバムの存在意義かもしれません。とにかく心底、ジャズを聴いている気分にさせられる1枚です。

コメント
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