OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

お茶の時間にMJQを

2006-03-06 18:01:21 | Weblog

たまにはお昼のお茶も、お洒落に楽しみたいので、本日はこれを聴きました――

Pyramid / The Modern Jazz Quartet (Atlantic)

ジョン・ルイス(p) がリーダーですが、ジョン・ルイス・カルテットと名乗らないところが、MJQの凄いところです。つまりグループとしての観念を徹底させている証に他なりません。そのメンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)という一騎当千の凄腕達です。

もちろんジャズということで、これだけのメンバーが揃うと、各々の自己主張が主体となった演奏になるのは当然なのですが、それをあえて押さえつつ内向的なグルーヴを醸し出すところが、同時代の他のバンドとは異なった魅力です。

このアルバムはそれが良く出た1枚で、録音は1959~60年にかけて行われています。

A-1 Vendome (1960年1月15日録音)
 ジョン・ルイスの作曲で、バロックとビバップの巧みな融合が快感の演奏です。それはまず、曲テーマに顕著なバロック・フレーズがいつしかミルト・ジャクソンの主導でビバップに変貌していきますが、ジョン・ルイスがそれをバロックに引き戻す展開が素晴らしく、クラシックと黒人モダンジャズの鬩ぎ合いが絶妙です。
 このあたりは、どこまでがアドリブかアレンジか、判別つかないほど緻密な演奏で、それはもちろんドラムスとベースのパートにまで及んでいるのでした。

A-2 Pyramid (1959年12月21日録音)
 ゴスペル・ブルース味が非常に強い、究極のスローブルースです。もちろん、こういう曲調になるとミルト・ジャクソンの存在感が一段と強まりますが、ジョン・ルイスも負けていません。
 日本の評論家の先生方はジョン・ルイスはブルースが下手と決めつけている傾向がありますが、大きな間違いだと思います。それはここでの「間」を生かしたバックでの演奏やソロ・パートの巧みさを聴けば納得出来るはずで、幾分、線の細いそのブルース・フィーリングは独自の洒落た雰囲気に直結していくのです。
 もちろんミルト・ジャクソンは期待どおりのクールな熱演です♪ またテンポを自在に操りながら、ゴスペル調のビートを送り出すコニー・ケイのドラムス、淡々としていながら、実は粘っこいパーシー・ヒースのベースにもご注目下さい。

A-3 It Don't Mean A Thing (1959年12月21日録音)
 「スイングしなけりゃ意味ないね」という全くそのとおりの邦題がついているデューク・エリントン作の有名曲を、MJQは独自のアレンジで演奏していますが、その基本姿勢は曲タイトルどおりです。中でも思わせぶりなジョン・ルイスがニクイところです。

B-1 Django (1959年8月22日録音)
 あまりにも有名なMJQの当り曲の再演バージョンですが、それほど変わったところはありません。アドリブ・パートがややテンポアップしているのですが、リズムのキメ等は同一ですし、アドリブそのものも存在のアドリブというか、充分に煮詰められた美味しいものです。ただしそれがジャズ的には??? このあたりが評論家の先生方から厳しいことを言われる要因かもしれません。しかし安心感のある楽しさは捨てがたいところです。
 ちなみにこのアルバムではステレオ盤とモノラル盤とで、この曲のテイクが違うという情報がありますが、個人的には確認していないので、話はここまでとさせていただきます。

B-2 How High The Moon (1960年1月15日録音)
 モダンジャズでは定番のスタンダード曲を、MJQは大幅にアレンジし、最初は全くなんの曲か分からないほどです。なにしろベースのアルコ弾きをバックにミルト・ジャクソンがクラシックを意識したアドリブに改変しているテーマ提示部分から、そのまんま本格的なアドリブ・パートに突入してしまうのですから! しかもその部分のテンポが極めてフリー! そして快適な4ビートになってスイングしまくるアドリブ・パートの中盤で、ようやく聴き手は和めるのですが……。

B-3 Romaine (1959年8月25日録音)
 白人ギタリストのジム・ホールが作曲した畢生の名曲にMJQが挑んだ結果がこれです。もちろんバラードの名人であるミルト・ジャクソンが、その歌心を存分に発揮して味わい深い演奏を聞かせてくれるのです。しかしここでの白眉はジョン・ルイスのもったいぶったピアノによる、間の芸術的なアドリブでしょう。そこに絡むミルト・ジャクソンやパーシー・ヒースの相手を理解した感情移入も素晴らしい限りです。
 そういう展開ですから、これも即興とは言い難いところがミエミエになっていますが、しかしこれだけ完成度の高いジャズがあるでしょうか……。いや、ジャズとは云々、と言う前に、聴いて気持ち良ければ結果オーライという気分にさせられます。

ということで、とても素敵なアルバムです。1960年前後の日本では、モダンジャズがファンキー・ブームと共に盛り上がり、その中でも特にMJQは幅広い人気を集めました。その魅力は洒落た落ち着きとクールなグルーヴというところでしょうか、とにかく下品な部分が無いので、ある意味ではジャズを超えてカッコイイ音楽なのです。

それは現代でも充分に通用するところで、お洒落な音楽を求めるならばMJQもお忘れなく♪ インスタント珈琲も、旨くなる雰囲気です

コメント
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