OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

嬉しい再発 part-2

2006-03-08 19:33:02 | Weblog

本日も仕事責めでした。息抜きも出来ない苦しさに、つい手を伸ばしたのが、この嬉しい再発盤でした――
 
Kenton Presents Sessions / Claude Williamson (Capital / Fresh Sound)

白人ピアニストのクロード・ウィリアムソンのトリオを中心としたキャピトル録音を集めた、これは本当に嬉しい再発です。

タイトルにある「Kenton Presents」とは、白人ジャズ・ビックバンドの最高峰である「スタン・ケントン・オーケストラ」のバンドリーダーだったスタン・ケントンがプロデュースしていたシリーズ作品で、もちろんその内容は、自分のバンド内の優れたミュージシャンをフィーチュアしたものです。

例えば、シリーズではフランク・ロソリーノ(tb) のリーダー盤あたりが特に有名ですが、、とにかくスタン・ケントンの楽団には1950年代ウエスト・コースト・ジャズの精鋭が集められており、大衆的でありながら、物凄く進歩的な演奏を聞かせていましたので、その「Kenton Presents」として発表される作品は素晴らしいものばかりです。

で、クロード・ウィリアムソンもその中のひとりですが、実はこれ以前にかなりの実績があったピアニストで、すでに1940年代後半から注目され、1949年にはチャーリー・バーネットの楽団から「Claude Reigns」という、自分のピアノを100%前面に押出したヒット曲を放っています。

そしてその後に、スタン・ケントン・オーケストラに入るわけですが、すぐにリーダーのお気に入りとなって、売り出しのセッションを持つことが出来たわけです。

それは都合5回のレコーディングからSP,EP,LPと様々な形で発売されていきましたが、このCDはその全21曲を纏めたもので、データーは以下のとおりです。

01. Bouncing with Bud (1954年7月29日録音)
02. Salute to Bud (1954年7月29日録音)
03. Penny (1954年6月29日録音)
04. Thou Swell (1954年7月29日録音)
05. Woody'n You (1954年6月29日録音)
06. Obsession (1954年6月26日録音)
07. Indiana (1954年6月29日録音)
08. Over the Rainbow (1954年6月29日録音)
09. Bean and the Boys (1954年6月29日録音)
10. I Remember You (1954年7月29日録音)
11. All God's Chillun Got Rhythm (1954年6月26日録音)
12. Get Happy (1955年5月19日録音)
13. On the Atchison, Topeka, and the Santa Fe (1955年5月19日録音)
14. Spring is Here (1955年5月2日録音)
15. Like someone in Love (1955年5月19日録音)
16. My Heart Stood Still (1955年5月2日録音)
17. Of Thee I Sing (1955年5月2日録音)
18. Don't Get Around Much Anymore (1955年5月19日録音)
19. Yesterdays (1955年5月19日録音)
20. The Kerry Dance (1955年5月19日録音)
21. Between the Devil and the Deep Blue (1955年5月2日録音)

「01」~「11」までは1954年のセッションで、この頃のスタイルはバド・パウエルに心酔しきったというよりも、ほとんどコピーというような部分もあるとおり、まさに白人パウエルと揶揄される演奏になっています。ちなみにサポート・メンバーはカーティス・カウンス(b) とスタン・レビィ(ds) という、ガチガチのバップ野郎です。

しかしその演奏は、あくまでも白人らしいスマートな感覚で、それゆえに物足りない部分も多々あるのです。ただしそこが好きというファンが多いのも、また事実です。しかも演目がバド・パウエルの愛奏曲中心というところが、絶妙なクスグリです。

実際、大スタンダード曲の「I Remember You」は白人ピアニストらしい快演ですし、バド・パウエルの代表的なオリジナル曲である「Bouncing with Bud」は、巨匠に対して敬意を表しつつも、憧れの方が強く出た演奏です。それがクロード・ウィリアムソンのオリジナル曲「Salute to Bud」では、当にバド・パウエルのフレーズを研究しつくしたタイトルどおりの熱演で結実しています。

後半の「12」~「21」はピアノ・トリオ盤では非常に人気が高い「Keys West (Capital)」をそっくり収めたものですから、いずれも保証付きの名演です。共演者はマックス・ベネット(b) &スタン・レビィ(ds) 組が1955年5月2日のセッション、バディ・クラーク(b) &ラリー・バンカー(ds) 組が同年5月19日のセッションということで、これも素晴らしいトリオというわけです。

しかもクロード・ウィリアムソンの演奏スタイルが、この頃になるとバド・パウエル一辺倒からハンプトン・ホースの影響に近いファンキー・フレーズも織込んだ、幅広いものに変化しており、それがこのアルバムの人気の秘密です。

ちなみにクロード・ウィリアムソンは、前述した「Claude Reigns」の頃はクラシック~正統派白人スイングの王道スタイルでしたが、同時にバド・パウエルが提示したビバップのピアノ奏法も研究しての成果が、このCD前半の演奏でした。

ということで、ジャズ入門者向けではありませんが、ピアノ・トリオ好きには堪えられない再発でした。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする