OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ろくでなしクラブ

2006-03-02 18:01:17 | Weblog

昨日は仕事でゴッタゴタのメチャクチャな1日でしたので、ブログも嘆き節だけでしたが、実は聴こうとしていたのが、これでした――

The Rotters' Club / Hatfield And The North (Virgin)

1970年代後半のフュージョン・ブームは、それまで頑なにロックを拒絶していたガチガチのジャズファンの目を、結果的にロックへ向けさせる役割も果しました。そしてその流れから再発見されていった分野のひとつが、今日でいうところのカンタベリー・ミュージックです。

しかしそれは当時、イギリス流ジャズロックの根源的なバンドであるソフト・マシーンから意味づけして聴かれていったもので、あくまでも「ジャズ」に拘ったものだったと、私は回想しています。

と同時に湧き起ったAORブーム、当時はシティ・ミュージックと呼ばれていましたが、その洒落た雰囲気としなやかなグルーヴを持った音楽が求められたことから、カンタベリー・ミュージックが急浮上したという経緯もありました。

で、私の場合は、その「カンタベリー」云々についてはほとんど意識することなく、ただ英国プログレからの流れで聴いていたのです。つまりキング・クリムゾンあたりのジャズの香りが強いバンドのひとつとして、ソフト・マシーンやハットフィールド&ザ・ノースに辿り着いたわけです。

特にハットフィールド&ザ・ノースはとても刺激的でありながら浮遊感も満点という、なかなか気持ち良いバンドでした。しかもジャズ味もたっぷり♪ メンバーはフィル・ミラー(g)、リチャード・シンクレア(b,vo)、ピップ・パイル(ds) を中心に、デイブ・スチュアート(key) を加えた4人組が基本です。そしてライブやレコーディングでは随時、ホーン隊やコーラス隊を加え、1975年に発売されたこの2ndアルバムも、その基本線が守られています。

演奏内容はズバリ、フュージョンですが、これが世に出た当時はクロスオーバーでもジャズロックでも無く、プログレ扱いでした。その内容は――

A-1 Share It
 アメリカではけっして生まれることの無い、独自の英国ポップスというメロディアスな屈折ボーカル曲ですが、軽快なリズム、シャープなビートが聴くほどに心地良くなっていきます。間奏のキーボード・ソロからは完全にフュージョンの香りが漂い、アレンジも綿密であることが確認出来ます。

A-2 Lounging There Trying
 前曲からいきなり繋がるギター・インストですが、これも完全にフュージョンしています。ギターも味わい深いですが、跳ね回るベースが魅力的です。

A-3 Big John Wayne Socks Psychlolgy On The Jaw
A-4 Chaos At The Greasy Spoon
A-5 The Yes No Interlude
A-6 Fitter Stoke Has A Bath
A-7 Didn't Matter Anyway

 上記5曲がメドレーで演奏されていきますが、鉄壁のアレンジと完璧な演奏に圧倒されます。特に「The Yes No Interlude」は強烈なアドリブ合戦展開されますが、そのウラでは緻密なアレンジが遂行されていくという二面的な演奏が、ある時は宇宙空間を、またある時は深海底での蠢きを、そして時には異次元ジャズの世界を現出させていきます。それにはゲストのホーン隊も参加し、全くのジャズになっている部分では当時の最も過激なジャズが演奏されていると思います。
 そしてこの猛烈な部分が過ぎて始まる「Fitter Stoke Has A Bath」のノーテンキな歌が、たまらんほどに心地良いのです♪ ちなみにバンドでボーカルを担当しているのは、ベーシストのリチャード・シンクレアだと思いますが、それにしても後半のスキャットと弾むような楽しい演奏は、後のA0Rや日本のニューミュージック系歌謡曲にダイレクトに繋がるものだと思います。
 また最後の「Didn't Matter Anyway」は正統派プログレ丸出しのボーカル曲♪ ゲスト参加のジミー・ヘイスティングスのフルートは、もう最高です!

B-1 Underdub
 最近、フロアDJ達に発見され、にわかに人気が出てきたインスト曲です。とにかくキーボートが素晴らしく、隠し味的なリズムギター、ベースとドラムスの躍動感も最高です。このあたりの完成度は、当時のジョー・ザビヌルやハービー・ハンコック、チック・コリアあたりの演奏と比較しても負けるものではないと思います。

B-2 Mumps
 4つのパートからなる組曲ですが、最初と最後は「Your Majesty Is Like A Cream Dount」と名付けられた同じ曲というか、つまりジャズのテーマ提示と同じ役割になっているという、極めてジャズっぽい展開になっています。そしてアドリブパートにあたるのが「Lumps」というタイトルの部分ですが、過激なフリーロック、白熱のポリリズム、ハードロック等々が渾然一体となって、しかも暗黙の了解で進んでいきます。さらに全体に浮世離れしたような女性コーラスまでもが用いられ、激烈な部分と気持ちよく浮遊していくコントラストが絶妙の流れで展開していくのでした。特に鋼のようにしなやかで強靭なリチャード・シンクレアのベースが凄い!
 そして続けて何事も無かったかのように、そのシンクレアが白々しく歌ったりもしますが、これが何とも言えない味の世界です。また後半の泣きギターとハードなテナーサックス・ソロは、如何にもフュージョン満点♪
 さらに第3部になっている「Prenut」はコーラスとキーボードが壮大な音の壁をつくり、ドラムスがそれを壊さんとして奮闘するあたりが、良く出来ています。

ということで、両面約50分にわたる心地良い時間が終わります。しっかり聴いても良いですが、本日、久々に聴いてみたら、けっこうBGMとしてもイケるところがありますねぇ♪ ジャケットも素敵ですし、案外そのセンも狙っていたのかもしれません。

ちなみにこのバンドのメンバーはキャラバン、マッチング・モウル、デリヴァリー、ゴング、エッグといったカンタベリー系の有名バンド出身者で構成されており、デビューは1974年です。このアルバムは前述したように2枚目の作品ですが、なんとこれだけ完成度が高いものを出した直後に発展的に解散! ナショナル・ヘルスという、よりジャズに近づいたバンドを結成・活動していきます。そして所謂「カンタベリー・ミュージック」というジャンルの中心として評価されるのですが、実はその一番良い時期が、このアルバム製作時だというのは、聴けば納得出来ると思います。

なお、現行CDは未発表ライブ録音のおまけ付き♪

コメント (2)
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