OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

高揚気分

2006-03-09 17:43:57 | Weblog

いよいよ春らしい天候になってきました。ポカポカと暖かい陽射し、適度に冷たい空気、こういうのは、けっこう好きですね。仕事は忙しいですが、気分は少しずつ高揚しています。そんな気分の時にはこれを――

Jazz Alive ! A Night At The Half Note (United Artists)

ジャズの人気企画といえばバトル物、つまり同一楽器による対決セッションということで、例えばテナーサックスで似た者同士が丁々発止の共演を繰り広げるところが、興奮を呼ぶというわけです。

それはレコーディングのためのスタジオ録音だけでなく、ジャズ全盛期の現場では頻繁に興行が打たれていたようで、むしろこっちをライブ録音したレコードに秀作が多いのは、その場の雰囲気ごとに自然体のグルーヴを満喫出来る結果というところでしょう。

このアルバムはそういう人気盤のひとつで、録音されたのは1959年2月6&7日、場所はジャズでは有名なクラブの「ハーフノート」です。そして演じているのはテナー・バトルの人気チームのひとつ、アル&ズートに加えて、フィル・ウッズが特別参加しているという豪華版です。メンバーはアル・コーン(ts)、ズート・シムス(ts)、モーズ・アリソン(p)、ネビル・トーター(b)、ポール・モチアン(ds)、そしてB面でフィル・ウッズ(as) が加わります。それが――

A-1 Lover Come Back To Me / 恋人よ我に帰れ
 モダンジャズでは定番のスタンダード曲を、アル&ズートは快適なテンポで聞かせてくれます。まずテーマの吹奏からして2人が絶妙の絡みを展開し、そのまま先発のソロがアル・コーンです。もちろんレスター・ヤング直系の流れるようなフレーズと豊かな歌心が満点ですし、しかもややハードな音色でドライブするそのアドリブは最高です。
 そして次が同じスタイルで迫るズート・シムスですが、こちらは柔らかくてふくよかな音色が特徴です。しかしそのドライブ感はアル・コーンに優るとも劣らない素晴らしいもので、むしろズートの方が場合によってはハードな面が感じられるほどです。ここでもその魅力が存分に発揮され、勝負はズートに軍配が上がりそうです。
 またその2人を支えるリズム隊は、おそらく当時のアル&ズートのレギュラーだったと思われる面々ということでコンビネーションも良く、モーズ・アリソンを中心としたピアノ・トリオの部分も快調です。
 こうして演奏はクライマックスで2人の短い掛け合いからラスト・テーマでの絡みが楽しめるのでした。

A-2 It Had To Be You
 あまり演奏されないスタンダードですが、和みの名曲です。もちろんテーマ部分はアル・コーンがリードしての絶妙の絡みがあって、もう最高です。そしてアドリブ・パートでは先発のアル・コーンが素晴らしい歌心を発揮すれば、ズート・シムスは絶妙の「間」を使って安らぎの美メロを聞かせてくれます。
 う~ん、素晴らしい雰囲気ですねぇ~♪ ところがいっしょに録音されている観客のザワメキを聴くと、かなり演奏そっちのけの会話や笑い声が入っています。まあ、それが当時のジャズクラブの実態だったんでしょう。ちなみにこの「ハーフノート」というクラブはウェス・モンゴメリー(g) やジョン・コルトレーン(ts) の名演ライブが録音された場所ですが、写真でみると内部は本当に狭くて、息苦しい感じですから、臨場感は本当に満点だったんでしょうねぇ。なんか咳払いやグラスの触れ合う音までレコーディングされています。

B-1 Wee Dot
 ここからいよいよフィル・ウッズが加わっての白熱のジャム・セッションがスタートします。曲は天才トロンボーン奏者であるJ.J.ジョンソンが書いたハードバップのブルースですが、先発でアドリブを始める肝心のフィル・ウッズが絶不調……。まあ、それなりの演奏と言えばミもフタもありませんが……。
 おまけに続くズート・シムスが、これまた調子が出ていません。ただし徐々にペースを掴んで盛り上げていくところは手に汗握るというか、贔屓の引き倒しというか……。しかしアル・コーンはどうにか面目を保ったハード・ドライブなソロで、場を盛り上げていきます。

B-2 After You've Gone
 いきなり早いテンポで演奏されますが、アル&ズートが絡むテーマ吹奏にフィル・ウッズもなんとか参加して、そのまんま、ズート・シムスが絶好調のアドリブ・ソロに突入していきます。そしてそれに刺激されたフィル・ウッズもハードバップ丸出しで迫るのですが、気力が空回りというか、いつものウッズ節が虚しく響くだけというか、荒っぽくてギスギスした部分ばかりが目立ちます。
 しかし続くアル・コーンが両者の中間を行くようなスタイルで、なんとかその場を収める快演を聴かせくれるのです。そしてもちろん最後は3者入り乱れの大乱闘♪ 本当に演奏が乱れてしまうのは、ご愛嬌でしょうか……。

ということで、これは圧倒的にA面が素晴らしく、それゆえB面が肩透かしなんですが、逆に言えばA面が奇跡の快演というところでしょう。とにかく和みますよ♪ 

コメント
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