OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ドルフィーはやっぱり凄いぜ、大晦日

2010-12-31 15:30:06 | Jazz

Eric Dolphy In Europe, Vol.2 (Prestige)

ついに今年も最終日、本当にアッという間の1年だったという思いではありますが、仕事は掛け持ちでゴッタ煮状態でしたし、これまで気脈を通じていた関係者のリタイアが相次ぎ、さらには終盤の山場では自らが原因不明の病で倒れるという不始末……。

正直、追い込まれた1年でした。

しかし皆様のご厚情に支えられ、中断しつつも、なんとかプログは継続出来ましたし、本サイトの「サイケおやじ館」も更新が停滞しているのに訪問して下さるお客様がいらっしゃるというありがたさは、本当に身に染みて感謝です。

ただし振り返れば、仕事という大義名分によってダーティな事をやっている自分自身に言い訳ばかりだったのも情けない……。

そこで本日はピュアな心意気といえば、この人しか無いというエリック・ドルフィー!

ご紹介のアルバムは単身乗り込んだ欧州でのライプ演奏から作られたもので、アナログ盤としては3枚に分散発売された「イン・ヨーロッパ」シリーズの第2集ですが、以前にご紹介した「Vol.1」同様、物凄いエネルギーとインスピレーションに満ち溢れた傑作になっています。

録音は1961年9月6&8日、メンバーはエリック・ドルフィー(as,fl) 以下、ベント・アクセン(p)、エリック・モーズホルム(b)、ヨルン・エルニフ(ds) という、当時はデンマークを中心に活動していた俊英リズム隊ですから、エリック・ドルフィー本人もアメリカとはちょいと違った味わいがあるリズム&ビートの中で、唯我独尊を貫く名演を披露しています。

A-1 Don't Blame Me
 スタンダード曲を素材に、エリック・ドルフィーが抽象的で夢見るようなフルートを聴かせてくれる演奏ですが、じっくり構えて中盤以降はグルーヴィなノリを構築していくリズム隊とのコンビネーションも侮れません。
 何よりもエリック・ドルフィーの素晴らしい歌心が満喫出来るんですよねぇ~♪
 もちろんミステリアスなムードを滲ませるという十八番の中には、例の跳躍しての急速フレーズも使われていますが、それは決して意味不明なものではなく、モダンジャズ特有のスリルとサスペンスを表現する手段のひとつだと思います。
 そしてリズム隊のナチュラルなフィーリングが、これまた素敵♪♪~♪
 特に重厚な4ビートウォーキングを聴かせてくれるエリック・モーズホルムに対し、若気の至りでしょうか、途中でスティックを落としたりするスットコドッコイなドラミングで、一風変わったノリを叩き出すヨルン・エルニフが憎めません。
 またビバップを欧州的に発展継承させたようなベント・アクセンも印象的ですよ。
 う~ん、まさにアルバムのトップに置かれるだけの名演に偽り無し!

A-2 The Way You Look Tonight
 これまた有名スタンダード曲ではありますが、モダンジャズの慣例どおりとはいえ、恐ろしいまでの急速ビバップでやってしまうエリック・ドルフィー以下、バンドの勢いは最高潮です。
 あぁ、こんな強烈なアルトサックスのアドリブ地獄は、チャーリー・パーカー以降では一番その領域に迫った成果じゃないでしょうか。とにかく瞬時の緩みも感じさせない緊張感と猛烈なエネルギーの発散は尋常ではありません。
 当然ながらジルジルと鳴り続けるエキセントリックな音色と跳躍しては急降下する特有のフレーズ構成は、エリック・ドルフィーの存在証明!
 そして真っ向から逃げない姿勢のリズム隊も実に熱いですねぇ~~♪
 特にヨルン・エルニフのトンパチなドラミングは個人的に高得点! エリック・ドルフィーに対して、ここまで熱血で挑めるのは、まさに若いって素晴らしい~~♪
 ですから続くベント・アクセンのピアノのパートに入っても、ブレイクのストップタイムのスリルが意想外というか、実は私有のステレオ盤は左にアルトサックスとドラムス&ベース、右にピアノと観客の拍手声援というミックスなんですが、そんな泣き分かれの定位が、ここでは素晴らしいスリルの演出に一役買っている気がするほどなので、ここはぜひとも皆様にステレオミックスをお楽しみいただきたいところです。
 ちなみに時折入る素っ頓狂な叫び声(?)は、もしかするとヨルン・エルニフだったら、ますます憎めない奴という感じです。

B-1 Miss Ann (Les)
 幾何学的なテーマメロディはエリック・ドルフィがビバップを意識して書いたものでしょう。それがまたまたの過激なアップテンポで演じられる時、そこには間違無くモダンジャズの神様からの御加護があると感じるのはサイケおやじだけでしょうか。
 ちなみにアルバムジャケットに「Miss Ann」と記載された曲タイトルは、本当のところ「Les」が正解で、それはエリック・ドルフィーの最初のリーダー盤「アウトワード・バウンド(New Jazz)」に、また「Miss Ann」は3作目の「ファー・クライ(New Jazz)」に入っていますので、聴き比べも楽しいわけですが、確かに曲調は似ていますよねぇ。
 ただし、やっぱりライプの現場における熱気は格別なものがありますから、瑣末な事に拘る必要もないでしょう。
 そこでは自らの気持に正直としか思えないエリック・ドルフィーに対し、幾分確信犯的なリズム隊の伴奏、さらにベント・アクセンのアドリブとバンド全体が発散するコンビネーションの攻撃性が、実に心地良い興奮を演出しています。
 う~ん、それにしてもエリック・ドルフィーが吹きまくるアルトサックスの「鳴り」は強靭!
 
B-2 Laura
 これも良く知られたスタンダード曲ではありますが、初っ端から無伴奏で自由自在に空間を浮遊するエリック・ドルフィーのアルトサックスの前には???の気分にさせられるでしょう。
 ところがいよいよ曲メロがフェイクされるパートになると、瞬時に絶妙の和みが提供されるんですから、たまりません!
 しかもそこからナチュラルにアドリブされていく演奏展開の凄さは、その飛躍感とジャズ者にだけ分かってもらえれば、それでOKとでも言いたげな自己満足が十分条件になっていて、サイケおやじは心底、シビれきってしまいますねぇ~♪
 ですからエリック・ドルフィーがリアルタイムで一般大衆を喜ばせるようなヒット演奏も出せず、それゆえに赤貧の生活から抜けだせなかったのも納得する他はないと思うんですが、しかし何よりも必要以上に媚びたり、迎合しなくとも良かったのは、ある意味での幸せじゃないでしょうか。
 もちろんエリック・ドルフィーだって、お金はあれば便利だと思っていたはずでしょうが、しかし残された演奏でしか本人に接しえない大多数のファンにとっては、まさにピュアな宝物を与えられた気持になる事を、天国のエリック・ドルフィーは分かっているに違いありません。

ということで、何度聴いても心が素直に洗われるような、実に素晴らしい演奏集です。

そこには当然ながらジャズ特有のスリルや醍醐味が満載なのは言わずもがな、個人的にはあまり好んでは使いたくない「精神性」という部分も強く感じられます。

ちなみに演奏そのものの録音も、ライプ特有の臨場感があり、また同時にエグ味とエッジの強い感覚が如何にもモダンジャズ! 既に述べたように、私有はステレオ盤なんですが、出来ればオリジナルのモノラル盤も欲しいと願っているアルバムです。

最後になりましたが、本年も最初の頃からジャズモードになかなか入れず、ちょいと自分でも辛苦したのが正直な気持です。

それが最後の最後になって、不思議と自然にジャズを楽しんで聴けるようになったのは、来年に繋がる何かの予兆なのでしょうか。

今年も本当にありがとうございました。

そして来るべき新年も、よろしくお願い致します。

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またしても奥の細道のビートルズ

2010-12-30 14:21:47 | Beatles

Matchbox c/w Slow Down / The Beatles (Capitol)

これ、買いましたっ!

アメリカプレスの7インチシングル盤なんですが、もちろん狙いはピクチャースリーブ♪♪~♪ また、当然ながら、アメリカ盤特有の強いカッティングプレスによる豪快なR&R本来の「音」を楽しみたかった目論見もありました。

そして実際に針落として、そのド迫力にシビれたわけですが、なんとも怖~い、奥の細道的な泥沼に足をとられてしまったですよ……。

今では有名になったこの2曲の秘密の中で、モノラルとステレオの両バージョンにおける様々な違いは、英国オリジナル仕様とは異なる米国キャピトル社独自の発売方針の結果というのが、実に大きな要因となっています。

ご存じのように両曲共、初出は1964年6月にイギリスで発売された4曲入りEP「ロング・トール・サリー」でしたが、それはモノラルバージョンでした。

ところがアメリカでは前述の様にキャピトルがオリジナルどおりの発売はせず、同年7月に独自の編集アルバムとして出した「サムシング・ニュー」に収録したことから、当時のLPアルバムの慣例に従って、ここにステレオとモノラルの両バージョンが登場したのです。

さらに当然ながら、そこから再び独自にシングルカットした掲載の7インチシングルはモノラルバージョンなんですが、今回、実際に入手して聴いたところ、どうやら「音」の違いの他に、「ミックス」そのものが微妙に異なっているように感じました。

これって、キャピトル独自のモノラルミックス!?!?

まあ、このあたりは、あくまでも個人的な主観であり、感性の問題も大きいと思います。

しかし、それなりに親しんで聴いていた感覚とは、やはり違う現実は否定出来ません。

ちなみに日本での発売状況としては、両曲ともキャピトル盤と同じカップリングのシングルとして、しかもピカピカの新譜扱いで昭和39(1964)年11月に出たはずです。なにしろリアルタイムで従姉が速攻でゲットし、聴かせてくれた記憶が今も鮮明なんですよねぇ~♪

おぉ~~、こんなカッコ良いビートルズ!

もちろんリンゴが歌う「Matchbox」はカール・パーキンスがオリジナルの所謂ロカビリー、またジョンが熱唱する「Slow Down」はラリー・ウィリアムズが十八番の黒人R&Bなんですが、その頃の我国の一般的な洋楽ファンはカパー物という認識よりは、「ビートルズの新曲」という喜びの方が遥かに大きかったと思います。

そして実際、ビートルズならではのロック感覚に満ち溢れたアレンジと歌と演奏は圧巻!

で、気になるその後の収録状況なんですが、このシングルが日本で発売されてから約半年を過ぎた翌年5月、我国独自の編集アルバム「No.5」に揃って2曲が入り、これはモノラルバージョンでした。しかし同時期に売り出された4曲入りEP「のっぽのサリー」には、共に疑似ステレオのバージョンが入っていたんですねぇ。

当然ながらリアルタイムでは、サイケおやじも些細な事には無頓着だったわけですが、後にビートルズ史を探求する過程において、そうした様々な思惑や顛末に興味は尽きません。

一番気になるのは、リアルタイムの東芝レコードが、英国EMIと米国キャピトルのどちらからマスターコピーの供給を受けていたか?

その点なんですよっ!

まあ、順当に考えれば日本盤は「Odeon」印がある以上、それは英国からなんでしょうが、このシングル盤のようにアメリカ独自のカップリング発売を追従したものは???

ということで、年末年始は、このシングル盤を起点に聴き比べ大会になりそうです。

しかし決定的なのは、ここでも圧倒的な存在感を示すビートルズのR&R魂!

特に「Slow Down」での物凄いドライヴ感には畏敬の念を覚えるほどです。

あぁ、ビートルズに出会えて、つくづくと幸せ感じるのでした。

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小さなスナックは昭和の和み

2010-12-29 14:39:25 | 歌謡曲

小さなスナック / パープル・シャドウズ (フィリップス)

昨夜は職場の忘年会で、相当に不景気をブッ飛ばすような暴走ぶりを見せつけられたサイケおやじも、それが流れてからの二次会以降は地味~に酒席を楽しませていただきました。

そして最後に訪れた店が、如何にも昭和の雰囲気を残しているスナックということで、思わず本日ご紹介の名曲をカラオケで歌ってしまいましたですねぇ~♪

オリジナルを演じているパープル・シャドウズは昭和43(1968)年のデビューということで、一応はGSに分類されるロックバンドではありますが、しかし同時に洒落た洋楽っぽい味わいも深い歌謡曲のグループだと思います。

メンバーは今井久(vo,g)、綿引則史(g,b.vo)、川合良和(b,g,vo)、大場吉雄(ds) という4人組でしたが、リアルタイムでサイケおやじが見たテレビやライプ出演時には、サポートのキーボード奏者も参加していたと記憶しています。

そして最初にして強烈な一発大ヒットになったのが、この「小さなスナック」というわけですが、今井久の書いたメロディは絶妙の哀愁が滲む、全く日本人好みの胸キュンフィーリングが不滅ですし、牧ミエコの作詞も今となっては古き良き時代の昭和純愛物語♪♪~♪

いゃ~、本当にある日突然に歌いたくなってしまう名曲だと思います。

当然ながら、その頃の慣例として、松竹で映画化もされ、藤岡弘や尾崎奈々と一緒にパーブル・シャドウズのメンバーも出演するという「お約束」があるわけですが、他にもヴィレッジ・シンガーズも登場していますし、現在ではDVDが出ていますので、機会があればご覧くださいませ。

ただし、パープル・シャドウズは単なるGSプームに便乗した芸能界どっぷりのバンドでは決して無く、その歌とコーラスワーク、さらには演奏の技量も天下一品!

特に今井正のスマートなギターワークは繊細にして歌心が満点♪♪~♪ しかもロックフィーリングが絶妙という完全なる洋楽なんですよねぇ~♪

それは英国のインストバンドでは最高峰だったシャドウズのハンク・マービンからの影響が強く感じられ、バンド名もそれに由縁したものという推察は容易ですが、後に知ったところでは、我国ハワイアンの大御所たる大橋節夫の弟子だったという説もあるそうですから、その流れでエレキインストのバンドが結成され、パープル・シャドウズに発展したと言われています。

ですから、実際のステージでは今井正と川合良和がハワイアンスチールギターやウクレレを演じる事があって、これにはサイケおやじもリアルタイムで接したことがありますし、バンド全体の演奏の上手さは、今もって強い印象として残っています。

ということで、パーブル・シャドウズは所謂一発屋かもしれませんが、後々まで今井正が中心となった営業を続けていたのも、この「小さなスナック」の爆発的なヒットが多くの人から忘れられていないからでしょう。

ちなみにロス・インディオスで昭和55(1980)年頃から大ヒットした「別れても好きな人」は、昭和44(1969)年末にパーブル・シャドウズのシングル曲として世に出たというカパー物なんですが、そのイメージからいくと、パープル・シャドウズのバージョンは爽やかすきで物足りないあたりが、まさにこのバンドを象徴しているような気がします。

つまり親しみ易く、思わず軽く口ずさんでしまうような曲を演じていたことが、パープル・シャドウズの大きな魅力だったんですねぇ~♪

そして残念ながら未聴ではありますが、インスト主体のアルバムも出していたそうですから、ギターパンドとしての側面も無視出来ないのでしょう。

う~ん、昭和歌謡曲の奥は深い!?!

少なくとも「小さなスナック」は、ソフトロックの歌謡曲的な展開かもしれませんねぇ。

さて、本日は各方面に挨拶回りで、なにしろ今年は終盤の山場で不意な急病に倒れ、様々に迷惑を及ぼしてしまったので、サイケおやじも神妙です。

そしておそらくは今夜も酒席で平身低頭の図ではありますが、こういう歌で和みを求める所存なのでした。

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小山ルミの悲運のシングル

2010-12-28 15:37:37 | 歌謡曲

孤独の街角 c/w 裁かれる女 / 小山ルミ (ユニオン)

昭和47(1972)年初夏に発売されながら、ほとんどヒットしなかった小山ルミのシングル盤です。

しかし、内容はなかなか深いんですねぇ~♪

尤もそれは所謂ポップスファンにとっての事象ではありますが、実はA面「孤独の街角」は原題が「Another Place, Another Time」として、曲を書いたのがアルバート・ハモンドとマイケル・ヘイゼルウッドなんですから、侮れませんよねぇ~♪

もちろんメインとして注目されるのは当時、「カリフォルニアの青い空 / It Never Rains In Southern California」のメガヒットで一躍世界的に有名になったアルバート・ハモンドなんですが、この人はご存じのとおり、イギリスで活動していたシンガーソングライターでありながら、実は歌手としてよりも、作曲家としての方が有能だったと言われています。

それは既に16歳の頃からスペインで歌手として認められながら、18歳の時に渡英し、以降は本格的な作家活動へ入ったそうですから、現状に甘んじない志は流石だと思います。そしてこの頃から共作コンビを組んだのが、マイケル・ヘイゼルウッドであり、一応はファミリー・ドッグ、あるいはマジック・ランターンズといったポップスグループのメンバーも兼ねながら、しぶとくヒット曲を作り出していたのですが……。

さて、この「孤独の街角」は本来、そのマジック・ランターンズがオリジナルでありながら、英米では全くヒットしていません。そして我国でも昭和47(1972)年にはシングル盤が出たという事になっていますが、リアルタイムでのサイケおやじは、この小山ルミの歌で曲を覚えたほどですから、これが英国産と知って、ちょいと驚いた記憶があります。

ちなみに小山ルミのバージョンは日本語作詞が千家和也、編曲が鈴木邦彦というヒットメーカーコンビでありながら、結果が出なかったのは、これ如何に……???

イントロから弾みまくったリズムのキモは明らかにスパニッシュ調であり、それが曲メロとアレンジ全体を貫きますから、小山ルミの情熱的な歌いっぷりが最高なんですけどねぇ~~~♪

実は告白すると、曲を書いたアルバート・ハモンドについては最初、「カリフォルニアの青い空」のイメージが強すぎて、てっきりアメリカ人だと思っていたんですが、後にキャリアを知ってみると、こういうスパニッシュ調も完全に肯定出来るのでした。

そこでB面に針を落とせば、その「裁かれる女」が素晴らしすぎるスパニッシュロック歌謡の決定版!

以前に書いた「憎いあなた」のところでも述べましたが、作詞:千家和也&作編曲:都倉俊一の名コンビは、同時期に発売され、忽ちの大ヒットになった山本リンダの「どうにもとまらない」と似て非なる路線ですから、さもありなんでしょう。

もちろんこちらも小山ルミの情熱歌唱が全開ですよ♪♪~♪

いゃ~~、繰り返しますが、この両面共が全くヒットしなかったのは、本当に不思議です。

ただし今になって回想すれば、問題の「どうにもとまらない」で見事な再ブレイクを果たした山本リンダは、当時としては強烈なヘソ出しルックで激しく舞い踊り、挑発的に歌っていましたからねぇ~♪ その頃には、ちょいとクールなイメージを狙っていたと思しき小山ルミの影が些か薄くなったのも納得する他はないのかもしれません。

ということで、これは小山ルミにとっては悲運のシングルでした。

まあ、人生には、そういう事もあるわけですが、しかし彼女の人気が落ちたわけでは決してなく、まだまだ素敵な歌をどっさり残してくれたのは、ファンにとっての幸せなのでした。

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ライオネル・ハンプトンの物凄いカルテット

2010-12-27 14:53:30 | Jazz

The Lionel Hampton Quratet (Clef)

ジャズのヴァイブラフォン奏者といえばミルト・ジャクソンと並んで最も有名なのが、ライオネル・ハンプトンでしょう。

というよりも、ジャズ史の上では明らかにミルト・ジャクソンを凌駕する存在かもしれません。

しかし活躍していたフィールドがモダン期以前というイメージがあり、またビバッが創成されていた頃、同時多発的に生まれたR&Bというアーバンな黒人大衆音楽の世界へ積極的に進出した事もあり、我国のジャズ喫茶を中心とするイノセントなジャズ者の間ではイマイチの評価だったかもしれません。

もちろんベニー・グッドマンのスモールコンポ、あるいはオールスタアズによる1947年のライプステージから生まれた「Stardust」の大名演、そしてクリフォード・ブラウン(tp) を世に出した因縁のパリ巡業楽団による音源等々は認められているとは思いますが、何故かモダンジャズに真っ向から取り組んだレコードは、日本での発売そのものが些か疎かにされていた事もあり、サイケおやじにしても1970年代後半になって、ようやく馴染んだ感があります。

例えば本日ご紹介のLPはタイトルどおり、カルテット編成の長尺演奏を収めた名盤のひとつなんですが、そのメンバーがライオネル・ハンプトン(vib) 以下、オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds) という物凄い面々ですし、録音が1953&1954年というモダンジャズが上昇期であっただけに、それこそ充実の極みというアドリブの至芸が存分に楽しめるのです。

しかも演目が全て、良く知られたメロディのスタンダード曲というのも、嬉しいですねぇ~♪

A-1 Just One Of Those Things (1954年4月12日録音)
 いきなりオスカー・ピーターソンのダイナミックなピアノが強引なイントロを作り出し、続けてスイングしまくったアップテンポでのテーマ変奏がスタートすれば、寄り添うレイ・ブラウンのペースは見事なフォローを展開し、さらにバディ・リッチのブラシがタイトなビートを送り出してくるという、これは素敵な4ビート天国♪♪~♪ もちろん強靭なテクニックで披露される歌心に満ちたアドリブは痛快至極ですから、後を引き継ぐライオネル・ハンプトンも最初っからノリノリですよっ!
 う~ん、この軽快にしてハッピーなフレーズの連続技には、思わずウキウキさせられてしまいますねぇ~♪ 後半で盛り上がるバディ・リッチとの対決も決して意地の張り合いではなく、まさに匠の技の披露宴という感じでしょうか。
 ちなみにライオネル・ハンプトンが演じるヴァイブラフォンはミルト・ジャクソンの余韻を強めた音色とは異なり、実に軽やかで屈託の無いものですから、リズミカルな表現になればなるほど、その魅力と合致するんだと思います。
 そしてカルテットのスピード感が絶対に落ちず、スマートな勢いが最後まで持続していくのは凄いとしか言えません。 

A-2 Stompin' At Savoy (1953年9月2 or 10日録音)
 意外にヘヴィなビートを叩き出すバディ・リッチのブラシがテンポを設定すれば、絶妙なアンサンブルを構築するライオネル・ハンプトンとオスカー・ピーターソン、それを完璧にバックアップするレイ・ブラウンいうテーマ演奏の構図が美しいですねぇ~♪
 それゆえにアドリブパートに移ってからのナチュラルな躍動感は眩しいばかりで、ライオネル・ハンプトンが軽やかな中にも過激な急速フレーズを織り交ぜての歌心優先主義を貫けば、オスカー・ピーターソンがドラムスとベースの共謀を呼び込み、実にドライブ感に満ちた伴奏を披露するという凄さは唯一無二! しかもアドリブパートに至っては、抑え気味にスタートし、そこからグイグイと盛り上げていくという、まさに薬籠中の名演ですよ♪♪~♪
 あぁ、これに生で接していたら、発狂悶絶は必至でしょうねぇ~♪
 後半から終盤にかけてのバンドアンサンブルもメンバー各々の個人技を主体に、最高の極みだと思います。

B-1 How High The Moon (1954年4月12日録音)
 これまたアップテンポで繰り広げられる快演で、そのスタイルは所謂中間派とかモダンスイングに分類されるものかもしれませんが、レイ・ブラウンのペースは明らかにビバップを発展継承させていますし、そんな云々に拘る必要も無いほど、この名人カルテットの技量と音楽的センスは圧巻!
 バンド編成から、どうしてもミルト・ジャクソンが在籍していたモダン・ジャズ・カルテット=MJQとの比較は避けられないところでしょうが、少なくとも演奏のドライブ感やアドリブの瞬間芸の濃さは、完全にこちらが上でしょうねぇ。
 もちろん、そんな比較なんて、最初から意味が無いことは言うまでもありませんが、それはやっぱりジャズ者の哀しい宿業……。
 閑話休題。
 ヴァイブラフォンとピアノのガチンコ対決も強烈ですが、個人的には終盤で完全にバンドをリードしていくバディ・リッチのドラミングに熱くさせられます。凄過ぎっ!!!

B-2 The Nearness Of You (1953年9月2 or 10日録音)
 お馴染みの優しいメロディが余裕綽々で演じられる時、前曲での興奮と熱狂が絶妙の余韻を残しつつクールダウンさせられるわけですが、流石にセッションの仕切りとアルバム構成をプロデュースしたノーマン・グランツは分かっています♪♪~♪
 もちろん参加したメンバーにしても、おそらくは選曲から演奏のアレンジも含めて、現場優先主義を貫いていたのでしょうから、余計な思惑なんかあろうはずもなく、それは純粋にスイングして、充実のアドリブを披露することに全身全霊を傾けた結果だと思いますが、やはり心置きなく演奏に集中出来る環境は、どんな名人にも必要だと思いますねぇ。
 肝心の仕上がりは、スローテンポの中でダブルタイムも駆使するライオネル・ハンプトンのアドリブが目立ちますが、しかし同時に上手いフェイクでリードするテーマ演奏の和み感は絶品ですし、如何にも「らしい」オスカー・ピーターソのピアノも、その手数の多さがイヤミになっていません。

ということで、物凄いジャズが楽しめるアルバムです。

しかし、これはクレフ~ヴァーヴというレコード会社の賛否両論の特質なんですが、オールスタアセッションというプロデュース方針の所為でしょうか、一気呵成な大量録音と発売にあたってのオリジナルと再発の不統一がファンにとっては泣きの涙……。

個人的にも、ハンプトン&ピーターソン物では最初に買ったがこのアルバムとはいえ、実は当時から売り場には同じメンツによる似たような選曲のアルバムが幾つも並んでいて、完全に???の気分でした。

まあ、その時は親切な中古屋の店主からアドバイスされ、これを入手した経緯が結果オーライだったんですが、後に所謂ディスコグラフィーなんていう資料をみると、確かに演目の重複や再発における収録曲の組み換えが、レコードジャケットのデザイン変更共々、相当にあるんですよねぇ……。

しかし現在ではCDによる集大成5枚組セットも出ていますから、そこから楽しまれるのも王道かと思います。

ただし、これも音楽好き人間の宿業とでも申しましょうか、結局はアナログ盤LPが欲しくなってしまう気持も否定出来ません。

実際、サイケおやじは完全に後追いではありますが、良い出会いがあれば、このあたりをボチボチと集めているのでした。

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年の瀬

2010-12-26 15:03:28 | Weblog

こんな時期に隣国へ緊急出張でござんす。

明日、帰りますんで、よろしくお願い致します。

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妖怪列車の快楽グルーヴ

2010-12-25 15:14:02 | Rock Jazz

■Straight Ahead / Brian Auger's Oblivion Express (Gohst Town / RCA)

一般的にブライアン・オーガーの人気を確定したアルバムではありますが、いきなりの個人的な結論を述べさせていただければ、これは決して最高傑作ではありません。

しかしフュージョンブームが上昇期の1974年に制作発売された意義は本当に大きく、それまでに立脚していたロックジャズの地平から、ニューソウルやクロスオーバーといった当時のアメリカが最先端の新分野を見据えた演奏には、なかなかの魅力があることは確かでしょう。

ここまでの流れでは、前作として人気を集めたアルバム「クローサー・トゥ・イット」が充実した内容共々、特にアメリカを中心にライプの評判も高かったことから新作への期待も大きかったわけですが、そこで快演を披露していたドラマーのゴッドフリー・マクレーンが突如の脱退!?!

必然的にメンバーの交代があり、このアルバム制作セッションはブライラン・オーガー(org,el-p,key,vo)、ジャック・ミルズ(g)、バリー・ディーン(b)、レノックス・レイトン(per)、そして新参加のスティーヴ・フェローン(ds) にゲスト扱いのミルザ・アル・シャリフ(per) という布陣になっています。

A-1 Beginning Again
 重いビートと軽やかなパーカッションが彩るブラジリアンフュージョン的な演奏ですが、もちろん英国産ロックジャズのフィーリングが決して忘れられていないという、これは素敵な傑作トラック! フワフワしたボーカル&コーラスが幾分明確ではない曲メロにジャストミートし、タイトなドラミングに煽られて突っ走るグルーヴが、なんとも心地良い限りなんですねぇ~♪
 そしてブライアン・オーガーのエレピがフュージョンの醍醐味というか、実はロックジャズ王道のアドリブを堪能させてくれますし、続くジャック・ミルズのB級ギターソロも良い感じ♪♪~♪
 こういう分かり易さが、頭でっかちになるプログレや既成のクロスオーバーとは明らかに異なる、まさにオブリヴィオン・エクスプレスの持ち味だと思います。
 
A-2 Bumpin' On Sunset
 ご存じ、ウェス・モンゴメリーの代表作であり、それゆえに濃密なアドリブと腰の据わったアンサンブルが求められる名曲として、このアルバムが世に出た当時から評論家の先生方も挙って絶賛したトラックではありますが、個人的には些か冗漫な感じがしないでもありません。
 確かにレイジーなムードが心地良い倦怠感を呼ぶという雰囲気はするんですがねぇ……。
 オルガンが妙に重苦しく、またリズム隊の一本調子なビートの出し方がイマイチの刺戟では、なんだかなぁ……。
 ちなみにブライアン・オーガーは以前にトリニティを率いていた時にも同曲の録音を残し、それは2ndアルバム「デフィニットリー・ホワット」に収録されていますから、聴き比べも一興かと思いますが、個人的にはそっちが好きです。
 似て非なる演奏ではあるんですけどねぇ……。

B-1 Straight Ahead
 ニューソウルのビートに浮ついたボーカルという、この頃から流行し始めた所謂AOR風の演奏なんですが、やはりブライアン・オーガーのエレピが良いですねぇ~♪ そしてドラムスとベースの躍動的なグルーヴ、さらに如何にものリズムギターも素敵ですよ。
 ちょいと短いのが勿体無いほどですが、流石はアルバムタイトルになった曲だと思います。
 終盤でのエレピソロが新主流派になるのは、ご愛嬌というよりも、本音の吐露!?

B-2 Change
 これまたチャカポコリズムが効いたニューソウル風の演奏ではありますが、ボーカルパートからは1980年代後期のサンタナような産業ロック味が滲み出たりする、なかなか面白い仕上がりが侮れません。
 つまりは狙いが多すぎて的が絞れなかったのかもしれませんが、ジャック・ミルズの今となっては情けないギターソロも憎めませんし、バンドアンサンブルのミエミエの仕掛けとか、これはこれでニンマリしてしまうのがファンの心理じゃないでしょうか。
 贔屓の引き倒しではありますが、後半に出てくるブライアン・オーガーのオルガンに免じて、ここはそう納得しています。

B-3 You'll Stay In My Heart
 オーラスは再びAOR丸出しの歌と演奏とはいえ、これをパクッた歌手やバンドが大勢存在していることを忘れてはならないでしょう。尤もブライアン・オーガーだって、どこからかパクッてきたのは明白なのかもしれませんが……。
 それはそれとして、心地良い曲メロを歌うボーカルと浮遊感に満ちたエレピの素敵な味わいは、一度聴いたら決して忘れられないものだと思います。

ということで、これもまたアメリカを中心に売れまくり、いよいよブライアン・オーガーとオブリヴィオン・エクスプレスは全盛期を迎えたのです。そして以降、強烈に素晴らしいライプ盤を含む傑作アルバムを連続して発表していきます。

しかし今日の歴史では既に明らかになっているとおり、それは決して長続きは……。

ですからファンは、この時期に残れされた音源をひたすらに愛聴するわけですが、このあたりのロックジャズやフュージョンを新たに愛好されんとする皆様にとっても、掛け替えの無いものだと思います。

最後になりましたが、このゲゲゲなイラストのジャケットは当時、私の周囲では妖怪列車と呼んでいたことを付記しておきます。

まさに霊界的なグルーヴは快感♪♪~♪

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スリルとマンネリのライブ音源がマイルスの魅力!?

2010-12-24 15:28:57 | Miles Davis

■Miles Davis Live At Newport 1966 & 1967 (Domino = CD)

結局、サイケおやじは旧弊な人間なので、新譜といっても知っているミュージシャンの音源を優先してしまいます。

例えば本日ご紹介のCDも、様々な新ネタが出回っていた中で、思わずゲットしてしまった悪癖(?)の1枚かもしれませんが、やっばりこれが侮れませんでした。

ご存じ、マイルス・デイビスが1960年代後半に率いていた所謂黄金のクインテットによるライプ音源ですが、モノラルミックスながら、一応はラジオ放送用に録られたということで、音質も普通に聴けるのが嬉しいところ♪♪~♪

☆1966年7月4日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 01 introduction into Gingerbread Boy
 02 All Blues
 03 Stella By Starlight
(incomplete)
 メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という今では夢のクインテットがリアルタイムでやるだけやったっ!
 そんな感じの演奏ではありますが、今となっては微妙なマンネリ感と新鮮な息吹のバランスの良さが、ジャズを聴く楽しみに他ならないと思います。
 まず司会者の短い紹介から間髪を入れずにスタートする「Gingerbread Boy」は、最初の頃にちょいと音が悪いのですが、演奏が進むにつれて改善されていきます。ただし、全体的にベースが前に出たミックスには好き嫌いがあるかもしれません。
 肝心のクインテットは流石の安定感とでも申しましょうか、何時ものとおりのマイルス・デイビスに対し、アグレッシプでミステリアスなウェイン・ショーター、それに呼応するリズム隊は、やっぱりスリルがありますねぇ~♪ もちろんマンネリ気味の心地良さとしてではありますが、未だ伝統芸能になっていなかったモダンジャズの黄金期は確実に素晴らしいっ! 
 ですから続く「All Blues」にしても、イントロから蠢くリズム隊のジャズグルーヴから例によってワルツタイムのブルースがポリリズムに変化しつつ、アドリブパートではストレートな個人技の応酬へと展開する流れは、マイルス・デイビスの如何にも「らしい」味わいとウェイン・ショーターの無理難題が絶妙のコントラスト描き、これまたシビれさせせられますし、ハービー・ハンコックのピアノに続き、最終盤に咆哮するマイルス・デイビスのトランペットも良い感じ♪♪~♪
 しかし、このあたりを、なんだぁ……、またかよ……。
 なぁ~んで言ってはいけませんよねぇ。
 居直ってしまえば、これほどのモダンジャズを演じるバンドが、他にあるでしょうか!?
 と思わず熱くなったところで始まるのが、お待ちかねの「Stella By Starligh」ですから、そのクールな瞬間が本当に素敵です。
 とにかくマイルス・デイビスのトランペットが緊張感と歌心の巧みな融合で、素晴らしいの一言! そしてテンポアップして白熱するアドリブの本筋では、トニー・ウィリアムスの爆発も必然ならば、突進するロン・カーターの4ビートウォーキング! それに引っ張られて破天荒なショーター節を存分に披露する、このテナーサックスの異才も、流石に本領発揮というところでしょうか。
 あぁ、この暗黙の了解が、たまりませんねぇ~~♪
 しかし残念ながら、ハービー・ハンコックのパートに入ってのフェードアウトが未練を残します。

☆1967年7月2日、ニューポートジャズ祭でのライプ
 04 Gingerbread Boy
 05 Footprints
 06 'Round Midnight
(incomplete)
 こちらは1年後、同じメンツによる演奏ながら、結論から言えば、自由度がグッとアップした過激な4ビートジャズが楽しめます。
 なにしろ「Gingerbread Boy」からして、前年のバージョンに比べるとツッコミが露骨になり、ブッ飛ばすマイルス・デイビス、奇々怪々なウェイン・ショーター、ドシャメシャ寸前のトニー・ウィリアムス、彷徨うロン・カーターに何んとか纏めようと奮戦するハービー・ハンコックという5人組各々の思惑が交錯している感じでしょうか。
 う~ん、熱いですねぇ~♪
 ちなみに気になる音質は、前年のソースよりは幾分良好ですから、これもジャズ者ならば普通に聴けるレベルだと思います。
 そして特筆すべきは、1960年代後半から特徴的となるマイルス・デイビスのライプならではの連続演奏が既に始まっていることで、「Gingerbread Boy」のラストテーマから瞬時に突入していく「Footprints」でのテーマアサンブルの即興的な構成力は、これまた暗黙の了解と所謂チームワークの表れでしょう。
 もちろんリズム隊の変幻自在ぶりは、さらに複雑多岐になっているようですが、フロントでアドリブを演じる主役を矢鱈に翻弄するような意地悪はやっていませんから、この時期が、もしかしたら黄金のクインテットの全盛期だったのかもしれません。
 う~ん、ハービー・ハンコックのミステリアスなフィーリンミグが、実に良いですねぇ~♪
 それゆえに続く「'Round Midnigh」は、まさに白眉の名演!
 マイルス・デイビスが十八番の不安定な思わせぶりを存分に発揮するテーマメロディのフェイクはオープントランペットによるものですが、そのサスペンス風味は些かの緩みもありません。忽ちロン・カーターの力強い4ビートを呼び込み、それに呼応するハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムスが臨機応変の伴奏ですからねぇ~♪
 もちろん「お約束」のブリッジパートではバンドが一丸となった激情、そこからグッと抜けだしていくウェイン・ショーターの狂ったようなスイング感も凄過ぎますよっ! 当然ながらクールで熱いバッキングは、このリズム隊ならではの魅力でしょう。
 しかし、残念ながら、このトラックも良いところでフェードアウト……。
 実に勿体無いかぎりです。

☆1967年11月1日、フィンランドでのライプ
 07 introduction into Footprints
 08 'Round Midnight
(incomplete)
 これはボーナストラック扱いになっていますが、もちろん黄金のクインテットによる1967年秋巡業時のライプ音源で、一応はステレオミックスという感じでしょうか。どうやらこれもラジオ用録音らしく、音質はそれなりに良好です。
 まず司会者のメンバー紹介と観客の拍手歓声から、期待感と暖かい雰囲気がいっぱい♪♪~♪ それを打ち破るが如き突撃モードの「Footprints」が始まる衝撃も、たまりませんねぇ~♪ 僅か4ヵ月前の演奏だったトラック「05」との比較では、こちらの方がギスギスしたムードが濃厚になり、加えて原曲の持つミステリアスな味わいが意味深な過激さに変換されているように感じます。特にリズム隊のツッコミが意地悪ですよねぇ。
 しかしマイスル・デイビスはともかく、ウェイン・ショーターは作者の強みというか、悠々自適に浮遊感満点のフレーズを積み重ね、リズム隊を必死の境地に追い込んでいく逆煽りが見事! まさに黄金のクインテットならではの瞬間芸じゃないでしょうか。
 実は正直、全く分からなく事さえあるサイケおやじです。
 しかしハービー・ハンコックのアドリブからは、そうした意味不明なものを翻訳し、分かったような気分にさせてくれるプロ意識を感じますねぇ~♪ ある意味では確信犯的な疑似フリーと言うべきなんでしょうが、そういう雰囲気の作り方がハービー・ハンコックの真骨頂だと思うほどです。
 そして続く「'Round Midnight」が、これまた名演!
 未練を残す前曲の最終パートから、いきなりマイルス・デイビスが例の如く思わせぶりを演じれば、流石に親分のクセを知りつくしているリズム隊が絶妙のサポートを演じてくれるあたりの阿吽の呼吸が、必ずやジャズ者の琴線に触れるでしょう。
 こうして熱いブリッジからウェイン・ショーターがトニー・ウィリアムスとの対決姿勢を鮮明にした激しいアドリブを展開する流れこそ、ファンが最も聴きたい部分のはずなんですが、残念ながら、ここでもフェードアウト……。
 う~ん、欲求不満が増幅しますっ!

ということで、どのパートも、最後は必ず満足させてくれないという、なかなか罪作りなブツではありますが、とにかく全盛期だった黄金のクインテットを楽しめる事には間違いありません。

ちなみに、このブツのウリは裏ジャケットに大きく記載された「All Tracks Previously Unissued」という事になっていますが、部分的には既出の音源も含まれています。

しかし、音質もそれなりに良好ですし、なによりも以前に出回っていたものよりは、リマスターに統一感があるんじゃないでしょうか。

あぁ、それにしても最初に書いたとおり、サイケおやじの音楽鑑賞は堂々巡りというか、何時も同じ場所に停滞しているようで、ちょいと自嘲……。もはや居直ることも出来ない境遇ではありますが、その中から少しでも優良な再発&復刻盤を発見することが、ひとつの楽しみになっているのでした。

コメント (2)
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とても不幸な朝の幸せ

2010-12-23 15:31:56 | 歌謡曲

とても不幸な朝が来た / 黛ジュン (フィリップス)

芸能人が私生活のあれこれを報道されるのは、それも仕事の内ではありますが、行き過ぎると……。しかし歌の世界では、そうした現実と仕事がリンクした中で生まれた名曲名唱は確かにあって、それが本日のご紹介です。

歌っている黛ジュンは説明不要、我国歌謡界において女性ポップス系ではトップの存在として昭和40年代が全盛期だったと思いますが、その彼女の人気が下降線に向かいつつあったのが、昭和45(1970)年の結婚でした。

お相手は以前から交際していたベース奏者の江藤勲!?

これは当時、ちょいとした驚きがありましたですねぇ。

何故かといえば、江藤勲はスタジオセッションの世界では当時、我国で最も売れっ子だったと言われるほどの名手として現在は知られていますが、その頃はレコードにクレジットされることもなく、また縁の下の力持ちに注目するという音楽的な風習がありませんでした。

まあ、今となっては、例えば東芝制作の歌謡ポップスあたりで顕著な重低音が効いたサウンドの要を演じていたのが、おそらくは江藤勲であったでしょうし、時にはGSや初期ニューロックのレコーディングにも活躍していた事が明らかになっているとはいえ、リアルタイムでは黛ジュンともあろうトップスタアが、名も無い(?)ベース奏者と結婚するという現実を受け入れらないファンが多かったと思います。

そして当然ながら、芸能マスコミも同時期から、黛ジュンについては歌よりも私生活を報道する事が多くなっていた記憶がありますねぇ。

もちろん最初は新婚生活のあれこれだったものが、翌年になると、どうも夫婦仲が……。

そんなこんなの「お約束」が、芸能活動の一環として取り沙汰されるのですから、スタアは辛いよ……、なんでしょうかねぇ……。人気が下降線となるのも自然の流れだったように思います。

で、そうした中ではレコード会社の移籍もあり、確か結婚当初は引退すると言っていた彼女がフィリップスと契約し、本格的に歌手活動を再開したのが昭和46(1971)年で、その夏に発売されたのが、この強烈なシングル曲でした。

まず、曲タイトルが凄いですよねぇ~~。

そして歌詞の内容が、それに劣らず、激ヤバ!?

2年前に愛し合い、結婚したふたりが、今は別居しているんですが、久々に逢うことになった時、既に女は心を決めているのです。

それは完全なる別れなんですが、もちろん未練が……。

で、とにかく夜の6時に会って懐かしみ、7時になって、あれこれ話し合い……。

9時から後の幸せは♪♪~♪

そうして一夜を過ごし、始発電車が走る頃、寝ている男に黙って部屋をさる女……。

別れることは決めていても、抱かれた温もりに揺らぐ女心の哀しみが、とても不幸な朝が来たと歌わせてしまうのですから、たまりません♪♪~♪

作詞の阿久悠にとっても、代表作のひとつでしょうし、中村泰士が書いたメロディが、これまた最高なんですよっ!

いきなりノーザンソウルなブラスと強いビートのイントロから、グッとテンポダウンして粘っこい昭和特有のR&B歌謡曲が始まれば、黛ジュンが持前のパンチの効いた粘っこさで女の未練をたっぷりと表現するのです。

しかも歌謡ポップス本来の魅力というか、洋楽の味わいと歌謡曲のコブシをジャストミートさせるアレンジが葵まさひこ!

あぁ、これで駄作になったら、歌謡曲の神様が激怒すること必至でしょう。

そして既に述べたとおり、当時の黛ジュンの私生活では決して上手くいっていなかったと思われる結婚生活が、この歌と芸能マスコミの報道がリンクすることによって、尚更に強い印象として残るのです。

とにかく、これは昭和歌謡曲史に様々な意味で残るんじゃなんでしょうか。

しかし現実は、あまりに生臭く、エグ味の強い歌詞が問題化したのか、局地的に放送禁止になったと言われている所為もあり、小ヒットだったのが残念……。

ちなみにジャケットも以前の彼女からは想像も出来ないほどのケバケバしさで、リアルタイムで流行の兆しがあったニューソウル調と言えなくもありませんが、こんなにピッチでセクシーな人妻が黛ジュンという現実には、大きなインパクトがありましたですねぇ。

ということで、しかしサイケおやじは大好きな歌!

黛ジュンの中でも、個人的にはベスト10に入れているほどです。

そして云々書くよりも、まずは皆様に、ぜひとも聴いていただきたい昭和歌謡曲の名品なのでした。

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リアルなビートルズに感激のプート

2010-12-22 15:59:49 | Beatles

Ultra Rare Trax 2010 Remaster Vol.2 (TSP / IMP)

先日に続き、今日は「ウルトラ・レア・トラックス」の最新リマスター盤「Vol.2」をご紹介します。

 01 Can't Buy Me Love (1964年1月29日録音 / stereo)
 02 There's A Place (take 3 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 03 There's A Place (take 4 / 1963年2月11日録音 / stereo)
 04 That Means A Lot (1965年2月20日録音 / mono)
 05 Day Tripper 1 (1965年10月16日録音 / stereo)
 06 Day Tripper 2 (1965年10月16日録音 / stereo)
 07 I Am The Walrus (1967年9月5日録音)
 08 Misery (take 1 / 1963年2月11日録音 / mono)
 09 Leave My Kitten Alone (1964年8月14日録音 / mono)
 10 We Can Work It Out (1965年10月20日録音 / stereo)
 11 A Hard Day's Night (1964年4月16日録音 / mono)
 12 Norwegian Wood (take 4 / 1965年10月21日録音 / stereo)

まず、上記の12曲は1988年の「Vol.1」同様、初出時に収録されていたものですが、もちろん流出テープが元ネタですから、音質は抜群! しかも今回のリマスターでは、さらに音圧が高くなり、ブートらしからぬ、否、これがブートの魅力と言うべきでしょうか、とにかくド迫力の歌と演奏が楽しめます。

もちろん「Leave My Kitten Alone」は「アンソロジー 1」と、また「That Means A Lot」は「アンソロジー 2」に収録されたトラックと極めて同じ音源なんですが、その公式盤では些か綺麗に纏まっていたのとは逆というか、こちらは両方ともモノラルミックス云々以前の団子状の音質が、まさにR&Rのエグイ味わいを強調しているように思います。

そして「Can't Buy Me Love」も公式盤「アンソロジー 1」に収録のトラックと同じテイクだと思われますが、なんとっ! こちらはステレオミックスなんですねぇ~♪ しかもスタート前のカウントやスタジオ内の熱い雰囲気が、そのまんま同時録音されたとしか思えない圧巻の仕上がりですから、これをトップに置いたメーカー側の意気込みには納得させられます。

Vol.1」でも述べたとおり、このソースとなった元テープは6巻あったとされますが、その中の音源を様々な意図によって1枚のアルバムに編集する企画の中では、この「Vol.2」はスタジオセッションの生々しさを追及しようとしたのかもしれません。

特にテイクを重ねる「There's A Place」や「Day Tripper」のリアルな臨場感は、まさに20世紀の文化遺産が形作られる瞬間を堪能出来ると思います。

ちなみに「There's A Place」はピアノやハーモニカが未だ入っていませんが、最高に驚くのは「Day Tripper」のステレオミックスで、例えば正規盤「ビートルズ 1」に入っているステレオバージョンは左右に泣き分かれていたミックスに対し、こちらはタンバリンとボーカルが真ん中にあるという、全体的にステレオではありますが、楽器類も含めて真ん中にミックスが寄せられた定位が、なかなか好ましいですよ。

しかし「I Am The Walrus」は極端に左にしか音が入っていないミックスで、これはストリングスやサイドボーカルをダビング前の未完成状態を露わにしていますが、妙にリアルでサイケおやじは大好き♪♪~♪

ですから最初のテイクとされる「Misery」の初々しさ、「We Can Work It Out」の混濁したミックス、さらに幾分ヤケッパチな「A Hard Day's Night」が新鮮に楽しめるのは言わずもがな、当時のビートルズはビジネスや人間関係よりも、歌って演奏する事を第一義にしていたんだなぁ~、と感慨も深まるばかりです。

そして素晴らしいとか、凄いとか、そういうありきたりの言葉では絶対に表現出来ないほどの感動を呼ぶのが、ジョンの弾き語りをメインにした「Norwegian Wood」です。なにしろイントロで2回ほどミスっても止められないテープのおかげで、ナチュラルなジョンの節回しとメロディの展開、歌詞の解釈の微妙な変化が、本当にたまりません♪♪~♪ 最後の最後で、おそらくはプロデューサーのジョージ・マーティンが思わず「Great Fine」と告げるのもムペなるかなっ!

ちなみにミックスはステレオなんですが、真ん中にジョンのボーカルとギター、左にべース、右にシタールが定位した立派な完成品♪♪~♪ これを聴けただけで、このブートの価値があると断言するほどです。

 13 From Me To You (1963年3月5日録音 /stereo)
 14 Can't Buy Me Love (1964年1月29日録音 / stereo)
 15 She's A Woman (take 2 / 1964年10月8日録音 / stereo)
 16 A Hard Day's Night (1964年4月16日録音 / mono)
 17 Day Tripper 1 (1965年10月16日録音 / stereo)
 18 Day Tripper 2 (1965年10月16日録音 / stereo)
 19 Paperback Writer (1966年4月14日録音 /stereo)

上記のトラックは、また例によって元ネタとなった流出テープリールの「#2」をそのまんま、リマスターしたという趣向ですから、ブート製品化された「Vol.1」と「Vol.2」にはダブリ収録というわけですが、それなりに音質が良いですから、まあ、いいか……。

率直に言えば、こうしたブートの世界に踏み込んでいるファンには、これはこれで嬉しいはずです。

ということで、正規盤よりも音が良いブートも確かに存在するという証明のひとつが、このシリーズでしょう。

このあたりからブートの奥の細道へと進まれるのも、OKかもしれませんねぇ~♪

う~ん、それにしても、この時期……。

ジャケットのジョンの柔らかな微笑みが、胸に迫ります。

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