前回(その2)は、雅楽の三つの形態と雅楽とオーケストラの大きな違い、雅楽の歴史について、 簡単に触れました。込み入っているので、なかなか理解しづらいところでありますが、6月27日雅楽の演奏会とそのプロデューサーの解説を見聞きしまして、私なりに理解したところをお話ししたいと思います。
雅楽には主に、「管弦」「舞楽」「歌謡」の三つの形態を代表的なものがあり、それらを見ることが出来ました。「管弦」は、壱腰調(いちこっちょう):“レ”ではじまるもので演奏を聴きました。これは、他の調は各季節しか使えませんが、これは一年中使えるとのことでした。Yooさんのコメントで、君が代が壱腰調(いちこっちょう)で歌われると言うものがありましたが、君が代は季節を問わず歌われるので、壱腰調(いちこっちょう)は当然のものと言えるかも知れません。楽器について、その楽器の並び順ですが、客席から見て、前に三鼓(打楽器)が、その後ろに両舷(弦楽器)が後ろに菅楽器の順番に並びます。
オーケストラの並びは、客席に近い所にバイオリン等弦楽器、その後ろにフルートなど管楽器、後ろにティンパニーなど打楽器の配置になっていて、明らかに異なっています。
演奏終了後に行う聴衆の拍手するタイミングは、クラッシックの場合は、聴衆は慣れていますが、雅楽の場合は、前列の右端で演奏している打楽器の奏者がお辞儀をするのを合図に聴衆が
拍手をします。その際に、奏者全員が背筋を伸ばして正座していたのも興味深いものがありました。
「舞楽」とは、舞のことです。
それも二つあります。舞台の左から4名で出て来て、舞う左舞(さまい)でこれは、中国からきたもので、ボールをたたいてイギリスのポロというスポーツを模した舞で、騎馬でマレッ
トと言うスティックを持って、プレイをするような舞を行います。ポロと言う競技も四名で戦うもので同じ4名で舞います。左舞では、毬打(ぎっちょう)とうスティックを右手で持って舞います。左利きの人を左毬打(ひだりぎっちょう)と言いますが、そこからきているようです。
右舞は、舞台の右から2名で出てきて、舞うもので高麗(朝鮮)から来た舞です。これも金属製の短い棒を持って舞います。
すなわち、前回お話ししましたが、雅楽の由来は、朝鮮半島や中国大陸などアジア大陸の諸国からもたらされた音楽や舞ですが、時の政権が840年律令「樂制改革」を発した結果、音楽をまとめて一つのものにした訳で、二つの舞もそれぞれの音楽のものと思われます。舞についても、それぞれの文化を否定せず、尊重した結果、二種類の舞になったと勝手ながら私は推察しております。
「歌謡」についてですが、朗詠二星(ろうえいじせい)と言い、織姫様と彦星さまの年に一度、七夕の日にお会いになると言う話を歌にしている。構成は、一の句、二の句、三の句で、1オクターブずつ上がって行くので、腹式呼吸をして発生していないと、歌っていけなくなります。『二の句を告げない。』と言い方がありますが、活きずまったことの表現に使われる語源となっているようです。
今回の歌謡について、年に一度だけしか会えない織姫様と彦星様の本当の話をプロデューサーが申されていました。お二人は、機織りの仕事、牧童の仕事を熱心にやっているので、近所の人々が天帝にお願いをして結婚させてもらったが、結婚後二人は仲が良くて、朝になっても起きて来なくて、仕事に出てこないので、近所の人は、天帝に頼んで、天の川をつくり、一年に一度だけ合わせることに天帝はしたとのことでありました。今まで、織姫様と彦星の話の解釈とは大きく離れていたことに、私も含めて当日の会場にいた人々は驚いていたようです。
雅楽とオーケストラの違いは何か?について、前回(その2)でオーケストラには指揮者がいるが、それとは違い雅楽には指揮者がいない。それで、よく演奏がされるものかと不思議な感じがしたと記述しましたが、当日の演奏の場面を見ていたが演奏者同士の 阿吽 ( あうん ) の呼吸によって演奏されていたことを目の当たりにしまして、驚きました
しかしながら、先ほど言いましたが、拍手のタイミングの合図を送るのが打楽器奏者であるので、それが影の指揮者と勝手に思いました。常日頃、オーケストラの奏者が指揮者の方を見ていないような感じを私はいだいておりますが、仕事仲間でコントラバスの奏者に『奏者は指揮者を見ていないのではないか?』と質問したが、『瞬時に指揮者をみている。』との回答が返ってきた。ある意味、阿吽の呼吸が働いているのではないかと勝手に推測した。
ここで、雅楽とオーケストラの違いを私なりに理解しましたものを下表にまとめました。
今回はこの辺でおわりにします。
雅楽とオーケストラの違い
| 雅楽 | オーケストラ | 備考 |
指揮者 | いない。拍手のタイミングの合図をする打楽器の奏者がいる。 | いる。バイオリン奏者のコンサートマスタがいる。 | 下線部の奏者が影の指揮者か? |
舞う | あり。 | なし。 | 奏者は兼ねる。 |
歌う | あり。 | なし。 | 奏者は兼ねて、1~3の句で、それぞれ最初は独唱で、その後斉唱になる。 |
楽器の並び(配置) | 前列に打楽器、真ん中に弦楽器、後方に管楽器。 | 前列に弦楽器、真ん中に管楽器、後方に打楽器 | 両者とも、前列に影の指揮者がいるのが共通点か? |
次回は、日本を題材にしたオペラ『Only The Sound Remains』(和名;余韻)について、お話ししたいと思います。
以上
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