遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

対露北方領土交渉も平和条約締結も経済支援も凍結すべき

2019-05-01 01:01:01 | ロシア全般
 昨年の9月12日、ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの壇上で、安倍晋三首相に突如「前提条件なしで年末までに平和条約を締結しよう」と提案したプーチン大統領。
 そして、11月。安倍首相は、プーチン氏と「日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速化」することで合意するという北方領土に関する日露間の交渉の積み重ねの歴史を打消し時計の針を、1956年10月まで戻してしまいました。
 つまり、実質的に「4島返還」の立場から「2島返還」に譲歩する歴史的転換をしたのです。
 「日ソ共同宣言」を基にした北方領土交渉の進行は、プーチン氏の主張でしたが、2005年11月の来日時には、領土を返さなくても確実に日本企業はロシアに投資するという自信をもった態度を示し、2016年12月の来日時には、北方4島で「特別な制度」の下での共同経済活動実現へ協議を進めることで合意、領土交渉の棚上げに変遷してきていました。

 そして、昨年 9月のウラジオストクの東方経済フォーラムを経て、11月のシンガポールでの首脳会談での日本側の譲歩への転換。
 勿論外交手腕では強かなロシアがこの機を逃すはずはなく、その後更にゴールポストを動かし、いまや返還はゼロ島に。

 
G20 大阪 北方領土 覚悟の譲歩 露の厳しい反応想定外 (4/30 読売朝刊)

安倍外交の行方

 「日露平和条約交渉の勢いは失われた」
 ロシアのプーチン大統領のそんな発言が報じられてから4日後の3月19日。安倍首相は首相官邸で、長年ロシアと関わってきた鈴木宗男・元衆院議員に「できることからやっていこうと思います」と話しかけた。交渉が長期化するとみて、まずは経済協力などで日露関係を前進させる考えを示したものだった。

 6月に大阪で開催される
主要20か国・地域(G20)首脳会議にあわせた日露首脳会談で、北方領土問題を含む平和条約交渉を一気に大枠合意まで持ち込む━━。
 
昨年9月にプーチン氏が突如「年内に前提条件なしで平和条約を結ぼう」と提案して以来、日本政府内ではそんな早期決着のシナリオが検討されてきた

 60年以上動かなかった領土間題が進展するかもしれないという高揚感の中、
首相は昨年11月、重要なカードを切った。プーチン氏と「日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速化」することで合意したのだ。
 日ソ共同宣言には平和条約締結後、北方領土のうち歯舞群島と色丹島の2島を日本へ引き渡すことが明記されている。国後、択捉両島についての言及はない。
宣言を基礎とすることは実質的に、「4島返還」の立場からの譲歩を意味した
 
公式の場では、北方領土に対して「日本固有の領土」との表現も影を潜めた。ロシアへの配慮だった。
 野党は「(歴代政権による領土交渉の)努力を後退させ、時計の針を戻してしまった」(立憲民主党・枝野代表)と批判した。
 
首相を支持してきた保守層もこの譲歩に反発している。外務省を中心に、安倍政権は尖閣諸島(沖縄県)や竹島(島根県)で一歩も譲らない姿勢を強調してきたが、「領土に対する日本の立場はダブルスタンダード(二重基準)だという、国際社会への誤ったメッセージにつながりかねない」と懸念の声も漏れる。
 首相が批判覚悟で強気の賭けに出られたのは、野党の弱体化などで、「安倍1強」と呼ばれる盤石な政治基盤があったからだ。
 
想定外だったのは、ロシア側の厳しい反応だ。
 交渉責任者に任命された河野、ラブロフ両外相による1月の会談では、
ラブロフ氏が「第2次世界大戦の結果」として4島の主権はロシアにあると主張。プーチン氏の側近とされるセルゲイ・イワノブ大統領特別代表は2月に色丹島を訪問し、「北方領土が返還されれば、米国のミサイル防衛システムが展開される」との懸念を表明した。
 「ロシア人島民の96%が日本への引き渡しに反対」というロシア側の調査も公表された。
 
対露政策の練り直しを迫られた日本政府は、2016年にロシア側に提案した「新しいアプローチ」に立ち返る方針だ。経済協力などで時間をかけて信頼を醸成し、領土問題の解決につなげていくものだ。G20にあわせた首脳会談では、北方領土での共同経済活動の早期開始や、資源開発、インフラ整備分野での経済協力などを打ち出すことが検討されている。
 現時点で、日露交渉のすれ違いは大きい。政府高官はこう振り返る。
 「ロシアはプーチン氏の意向ですべてが動く国ではなかった。主権や安全保障といった国家の根幹に関わることに対する国内の抵抗は想像以上だった」

当面は現状維持か 東大先端科学技術研究センター特任助教 小泉悠氏

 
安倍政権による日露平和条約交渉は、「4島返還」から「2島返還」へと譲歩したことが従来と異なる。他に選択肢がないと考えての賭けだったが、ロシア側に足元をみられ、うまく運んでいない
 日本側には、中国へのけん制で日露が歩調を合わせられるとの読みがあった。ロシアが領土問題で軟化するとみた根拠の一つだが、中国との長い国境を抱え、決定的な関係悪化を避けたいという
ロシアの「対中脅威認識」を、日本は見誤ったといえる。
 ロシアには米国への強い不信がある。日本は米国との協調が外交・安全保障の基本だ。
ロシアは「信頼醸成」を求めるが、究極的には日米安保条約の破棄を迫っているに等しい。北方領土については、当面は戦略的に現状を許容し、日露関係を良好に管理していくという選択肢を取らざるをえないのではないか。

 「(歴代政権による領土交渉の)努力を後退させ、時計の針を戻してしまった」との立憲民主党・枝野代表の指摘はあたっている。
 首相を支持してきた保守層もこの譲歩に反発しているし、外務省を中心に、尖閣諸島や竹島の領土に対する日本の一歩も譲らない姿勢とのダブルスタンダードは、「国際社会への誤ったメッセージにつながりかねない」との声を産んでいるのだそうです。

 東大先端科学技術研究センター特任助教・小泉悠氏は、ロシアの「対中脅威認識」を、日本は見誤ったと指摘しておられます。
 中国との長い国境を抱え、中国へのけん制で日露が歩調を合わせられるとの読みが間違っていたと。
 おもいおこせば、太平洋戦争時も、当時は平和条約を締結しているロシアが参戦するとは思わず、むしろ調停役を期待する自己都合の思い込み判断がありました。その失敗の再生です。

 対露政策の練り直しを迫られた日本政府は、2016年にロシア側に提案した「新しいアプローチ」に立ち返る方針で、経済協力などで時間をかけて信頼を醸成し、領土問題の解決につなげていくのだとか。

 未だ懲りていませし、眼も醒めていませんね。
 領土を還すつもりはさらさらなく、経済支援だけを得ようと言う戦術に、すっぽり嵌められたままです。
 何故か!
 一部企業の、対露投資での"小利"を得ることに引きずられ、国家の主権を売り渡そうとしているのです。

 小泉特任教授が指摘されている通りで、ロシアは「信頼醸成」を求めるが、究極的には日米安保条約の破棄を迫っているに等しい。北方領土については、当面は戦略的に現状を許容し、日露関係を良好に管理していくという選択肢を取らざるをえないのです。
 台所が火の車のロシア。
 「2島返還プラスアルファー」は、今は霧散し、ゼロ島で経済支援のただどり戦術となったロシアに、平和条約を締結するメリットは、私企業の小利はあるかもしれませんが、国家の主権の毀損という大義を失います。
 領土交渉も、平和条約も、経済支援も凍結するしかありません。森元首相の縁と言われ安倍首相が引き継いだとされるプーチン氏との関係は、詐欺にあったということに目覚める時です。



 # 冒頭の画像は、ウラジオストクの東方経済フォーラムでの、安倍、習近平、プーチンの各氏




  ミヤマカラマツの果実


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写真素材のピクスタ


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交


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