goo blog サービス終了のお知らせ 

遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

AIIBは、過剰生産設備を抱えた中国の国内矛盾解消と海外勢力圏拡大戦略

2015-03-27 23:30:00 | EEZ 全般
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)へ参加する国の勢いが、英国の参加をきっかけに雪崩現象を起こしています。
 成長するアジアへの投資のおこぼれにあずかるのに乗り遅れてはならないと、創設メンバーの参加締切期日を前にしたパニック現象と言ってよいでしょう。
 距離を置いていた米国も、「世界銀行」や「アジア開発銀行」との共同出資を提案し始めていますが...。

 
豪首相、AIIBに「参加したい」…透明性条件 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
 韓国とトルコ、中国主導のAIIBに参加表明 - WSJ
 カナダがAIIB加入を検討、米日はG7で「仲間はずれ」に - 日中新聞
 米・共同出資事業を提案、中国主導AIIBにNO!?(産経新聞) - goo ニュース

 中国がAIIBを創設する狙いは何なのか。ご承知の諸兄は多いことと存じ間が、解りやすくまとめた記事があります。
 

中国はAIIBで何を狙うのか 拓殖大学総長・渡辺利夫 (3/27 産経 【正論】)

 
現在の中国経済のありようを端的に表現する用語法は「国家資本主義」(ステートキャピタリズム)である。これを担う主体の一つが、中央政府の直接的管轄下の国有企業群である。「央企」と呼ばれる。120社に満たないこの央企が国有企業15万社の利潤総額ならびに納税総額の6割前後を占め、国家と共産党独裁のための財政的基盤を形成する。

≪高い投資依存と過剰生産≫
 央企の経営幹部には共産党指導部に連なる人々が座し、厚い財政・金融支援を受けて投資拡大を継続する特権的企業集団である。中国が圧倒的な投資依存経済となったのも央企の投資のゆえである。
 もう1つの投資主体が地方政府である。中国の地方政府は単なる行政単位ではない。傘下の国有企業、銀行、開発業者を束ねる利益共同体である。地方政府は企業投資やインフラ投資、銀行融資に関与し、外資系企業の導入にも大いなる力を発揮している。シャドーバンキングとして知られる理財商品を開発して大量の資金を吸収し、これを不動産・インフラ投資に回すのも地方政府である。
 資源、エネルギー、通信、鉄道、金融などの
基幹部門における央企の投資に地方政府による不動産・インフラ投資が加わって、中国は先進国のいずれもが過去に達成したことのない極度に高い投資依存率の国となった


 その半面が家計消費という最終需要の低迷である。
最終需要の裏付けのない投資拡大はいずれ限界を迎える。
中国は所得分配の最も不平等な国の一つである。可処分所得に占める最終消費比率の高い低所得者層に所得が薄くしか分配されないために家計消費が盛り上がらないのである。胡錦濤政権は階層間で均衡の取れた「和諧社会」の実現を求めたものの、この間、所得分配は逆に不平等化してしまった。
 
高い投資依存の帰結が過剰生産能力の顕在化である。とりわけリーマン・ショック後の大規模な景気刺激策は深刻化していた鉄鋼、電解アルミ、鉄合金、コークス、自動車などの過剰生産をもはや放置できない状態
としてしまった。

≪窮地脱出のための海外戦略≫
 指導部もこの事態を憂慮し「発展方式の転換」が胡政権以来のスローガンとなった。3月15日に閉幕した全人代(全国人民代表大会)で李克強首相が表明した「新常態」とは、要するに投資依存型の経済成長のこれ以上の追求は不可能であり、7%という近年の中国には例のない低成長率を「常態」(ノーマル)だと認識しようという提案である。記者会見で
李首相はしかし、7%といえども実現は容易ではない旨を発言
した。
 その意味するところは、一方には、
央企と地方政府という強固な利益集団の投資拡大衝動を抑制することは難しく、また成長鈍化にともなう雇用機会減少への国民の不満
に火を点(つ)けてはならないという事情がある。他方には、投資依存経済をこれ以上放置すれば、資本ストック調整という反動不況リスクがますます高まることへの恐れが強い。ぎりぎりの妥協が7%なのであろう。
 
窮地を脱するための方途が、習近平政権によって打ち出された海外戦略である。輸出と外資導入によって積み上げられた4兆ドルという突出した外貨準備を原資として、拡大の一途を辿(たど)るアジアのインフラ建設需要に応じるための国際投資銀行の創設を図り、これを中国の過剰生産能力のはけ口とし、併せて中国企業の海外進出への道を開こうという戦略
である。
 「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の設立が急がれた理由である。昨年7月に合意された、BRICS銀行と通称される「新開発銀行」(NDB)も同様である。

≪スキを突かれた日米の不覚≫
 AIIBの資本規模は1000億ドル、出資額は参加国の経済規模に応じるとされ、中国の出資規模と発言権が際だって大きいものとなろう。AIIBには、東南アジア、中央アジア、中東の国々に加えて、先進7カ国(G7)からも英国に続いて独仏伊が参加を表明した。
国内的矛盾の解消という不可避の政策課題の解決策を、中国の勢力圏の拡大につなげるというしたたかさ
を習近平政権はみせつけたのである。
 世界銀行やアジア開発銀行(ADB)の
高いハードルの融資基準に「中国基準」をもって臨み、周辺諸国のインフラ建設需要に迅速に対応することをもって旧来の国際金融秩序に挑戦するという戦略
があらわである。

 
環境劣化と所得分配の不平等化を続ける中国が、巨大な「国家資本」をもって新たな秩序形成者として登場
するというのも奇妙な構図だが、それゆえにこそ中国の力量を軽視してはならない。
 中国の膨張、日米の力量の相対的減衰をこれほど端的に示した事例は近年ない。
オバマ政権の「内向き志向」、遅すぎた安倍晋三政権の登場のスキをみごとに突かれてしまったのである。かかる帰結にいたらしめた日米の指導者の自省は徹底的でなければなるまい。(わたなべ としお)

 中国経済の高度成長をけん引したのは、安価な労働力や固定費で世界の工場に君臨した輸出と、政府の財政出動の投資であることは諸兄がご承知の通りです。
 また、地方政府が競って成長の点数稼ぎ競争をして、投資バブルが進み、シャドーバンキングの理財商品で資金をあつめ、バブル崩壊、金融破綻が懸念されていることは衆知のことですね。
 そこで中国政府は引き締めを図ろうとしていますね。
 政府と海外からの投資依存経済が、内需の消費者需要が伸びてこなければ、生産能力や、不動産に余剰が生じてくるのは当然です。

 その国内の突き当たっている難題の解決策は、海外の需要を取り込むこと。成長するアジアの需要を、余っている生産能力と資金で、有利な条件で取り込んで、国内の行きづまりの解消と、貸付援助国への覇権を拡大しようという一石二鳥の戦略が、AIIB!

 アジアの資金需要は、現存の国際金融機関の投資能力を超えるとも言われ、審査が厳しく時間もかかる現状では、新規参入の余地は十分にあるし、競争条件を緩和しシェアを高めることは、十分可能です。
 がしかし、条件緩和での投資は、不良債権の拡大に繋がり、シャドーバンキングの破綻危惧を海外に広げ、投資参加者にリスク分散することになります。日米が懸念する所以ですね。

 中国の拒否権が話題になっていて、中国は否定していますが、出資比率で発言権が左右される仕組みで、中国が過半数の出資をするというのであれば、主導権は中国が持つことはあきらかで、投資の利益は中国へ、リスクは参加国で分担となることは、素人の遊爺でも解る話です。
 いま雪崩を打って参加している国々も、プロが居るので百も承知での参加でしょうが、みんなで渡れば怖くないということでしょうか。それが、リーマンショクなどの世界不況を招いた原因とは、忘れてしまったのでしょうか。

 日本にとっては、中国の独占主導であったAIIBが、先進諸国が参加することで、そのぶんは緩和されること、参加した先進諸国が、中国の戦略の強かさを思い知ることになることはメリットだと、遊爺は考えますが、いかがでしょう。
 日本は、淡々と現状の国際金融機関や日本独自のアジア諸国の開発援助を続けていけばよいでしょう。
 「安物買いの銭失い」といいます。中国の援助を受ければどうなるかは、アフリカやアジアの国々は良く知っています。単独ではなく、AIIBの衣で隠した中国の援助。
 日本流の援助や投資(価格条件だけではない総合力)で、十分に戦っていけるでしょう。バブル崩壊、金融破綻を経験した日本の知恵を活かす時です。



 # 冒頭の画像は、AIIBについて「ADB(アジア開発銀行)と補完関係にある。中国当局も協調したいといっており、条件を満たせば協調融資をしていく」と語る、中尾武彦ADB総裁
  アジア開銀総裁、アジア投資銀と協調融資を検討:日本経済新聞




  この花の名前は、ヤナギハナガサ


↓よろしかったら、お願いします。






Fotolia






 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月26日(木)のつぶやき | トップ | 安倍首相訪米 戦後70年の日... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

EEZ 全般」カテゴリの最新記事