遊爺雑記帳

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台湾の半導体業界は侵攻を防ぐ「シリコンの盾」か、それとも狙われる標的か 米国が半導体の対中輸出規制を強化

2022-10-14 01:33:55 | 米中新冷戦時代
 米商務省は10月7日、先端半導体や半導体製造装置の対中輸出を認可制にすると発表。トランプ政権時代から先端技術の対中輸出は制限を受けてきたが、従来の規則を大幅に強化した。理由は、米国製の技術が中国に軍事利用されるのを防ぐため。
 中国の半導体企業株が暴落したのだそうです。
 
 半導体を制する者が、世界の産業を制するといっても過言ではない今日。新型コロナの世界的蔓延に伴い、半導体のサプライチェーンが麻痺し、各方面に多大な影響が及んでいることは、衆知のこと。
 その半導体の生産の鍵を握っているのが台湾とは、諸兄がご承知の通りです。
 
 習近平が、台湾併合を目指しているのは、国共内戦で未決着の台湾併合の毛沢東が未達成の核心を、習近平が達成することで、毛沢東と並び称される実績を得たいため。
 台湾の半導体製造を制する、新冷戦について、元産経新聞の中国駐在記者だった、福島香織さんが、近況を解説していただいています。
 
台湾の半導体業界は侵攻を防ぐ「シリコンの盾」か、それとも狙われる標的か 米国が半導体の対中輸出規制を強化、台湾にも大きな影響 | JBpress (ジェイビープレス) 2022.10.13(木) 福島 香織:ジャーナリスト

 10月10日、中国の半導体企業株が暴落した。中国半導体企業25社をもとにしたグローバル中国半導体指標は7%下落。中国最大の半導体ファウンドリ(半導体受託製造企業)、SIMC(中芯国際集成電路製造)も香港株式市場の株価が2.7%下落した。上海復旦マイクロエレクロニクスは16%以上下落した。

 
理由は言うまでもなく、米国が打ち出した先端半導体やその製造装置の対中輸出に関する追加規制のせいだ。

中国による軍事利用を阻止
 
米商務省は10月7日、先端半導体や半導体製造装置の対中輸出を認可制にすると発表。トランプ政権時代から先端技術の対中輸出は制限を受けてきたが、従来の規則を大幅に強化した。米国製の技術が中国に軍事利用されるのを防ぐためだ。

 今回の追加規制では、AIやスーパーコンピュータなどに使われる先端半導体および製造装置や、スマートフォンやパソコン、データサーバなどの基本的な演算処理用半導体を製造する装置も対象となる。
企業が中国に先端半導体製品と設備を輸出するには特別な許可証が必要になる

 9月にすでに米エヌヴィディア(NVIDIA)や米AMDは、中国やロシアのスーパーコンピュータに製品が使用されるとして、米国政府から先端半導体の対中ロ輸出禁止命令を受けていたが、今回の発表によってこの措置がルール化された格好だ。

 
ニューヨーク・タイムズは、米政府高官のコメントを引用する形で、大部分の輸出許可証申請の基準は極めて厳しく、同時に米国は同盟国の関連企業に対して輸出された商品についても逐次評価し、それらハイテク製品が中国に利用されるのを防ぐつもりだ、としていた

 また、中国科大訊飛(アイフライテック)や大華技術(ダーファ)、メグビーなど
中国企業のハイテク・AI製品を米国や同盟国の企業が使用することもさらに厳しく制限することになった。これは2019年に米商務省のエンティティリストにすでに入っている企業であり、中国当局がウイグル人に対する監視強化、弾圧に利用する監視カメラなどの技術を提供していると批判されている。

 
このほか、米商務省は中国トップのフラッシュメモリーチップメーカー、長江ストレージ(YMTC)など31社を、米製品の最終用途が確認できない輸出先として「未検証エンドユーザーリスト」に追加した。これら企業と取引したり、投資したりする場合、米企業は追加のデューデリジェンスを行い、認可申請を求められる可能性がある。

 
ブルームバーグによれば、目下、米国の複数の半導体メーカーが14nm(ナノメートル)以下の先端半導体製造装置の対中輸出禁止命令を米商務省から受けている。つまり、米国は中国半導体産業を14nm以下の先端半導体市場から徹底的に排除しようというつもりらしい

「米商務省先端コンピューター半導体に関する新たな対中輸出管理製造」のガイドラインによれば、米国は半導体技術、設備の対中輸出を制限するほか、米国企業と個人に対して許可なく中国の施設で集積回路の開発と生産に参与してはならない、としている。この規定は10月12日から発効した。

挫折した中国の半導体「完全国産化」
 
中国の習近平政権は7年前に「中国製造2025」を打ち出し、半導体の完全国産化を目指していたが、事実上これは失敗に終わった

 中国の技術革新の本質は、トライアンドエラーの積み重ねで自ら開発していくものはなく、金の力にまかせた技術や人材の買収、引き抜きに支えられていたため、米国が戦略的に中国企業や中国人材を半導体業界からデカップリングしようと動くと、すぐに躓(つまず)くことになったのだ。

 また、不正や腐敗が当たり前となっている中国産業界の特定の分野に、国策として潤沢な資金が流れると、その金に群がる有象無象の「なんちゃって半導体企業」が資金を食いつぶす現象も起きた。

 結果的に
2015年に「中国製造2025」が打ち出されてからも、中国の半導体産業界の完全国産化はほとんど進展がなく、トランプ政権が登場し、米中関係の悪化が始まった2017年以降は中国半導体企業の倒産ラッシュが起きた。2021年の中国の半導体企業倒産数は3420社。2022年の1~8月期ですでに3470社が倒産している(「企査査」データ)。

 
中国半導体産業界はすでに氷河期を迎えつつあるそこに今回のような米国の追加規制を受けて、先端半導体や製造設備などの禁輸が徹底されれば、比較的ローテク半導体を使用する中国の自動車、ロボット、家電、消費電子産業までも大きな影響を受けるだろうこれら製品は市場シェア50%以上が中国製なので、世界中で製品の欠乏が起きるかもしれない。痛みに耐えねばならないのは中国企業だけでなく、米国企業も含めた世界の関連業界であり、消費者たちだろう。

 実際、世界最大手ファウンドリ企業の
台湾TSMCの株価も、双十節(中華民国建国記念日)休み明けの10月11日に8.33%暴落した。米国企業も中国企業も、高性能コンピュータの半導体チップのほとんどをTSMCに委託製造している。米国がスーパーコンピュータ関連半導体市場を囲い込み、中国企業をデカップリングしていくとなると、中国が将来的に伸びしろがある市場だととみて積極的に投資してきたTSMCにとっても大きな痛手となる。

「シリコンの盾」の効果は?
 グローバル化と中国ハイテク産業問題を長期に研究してきた
米ヴァサー大学の周宇教授は米メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「これ(米国の今回の措置)は中国のハイテク産業だけでなく、国際的な半導体産業チェーン全体にも損害を与え、そして半導体産業グローバルチェーンの組み換え、再構築を引き起こすだろう」と指摘している。

 その再構築の鍵を握るのは、当然TSMCをはじめとする台湾半導体産業の今後の動向となろう。

 
ここで気になるのが、台湾の安全保障とTSMCを中心とする台湾の半導体産業の関係性だ。つまりTSMCはじめ台湾の半導体産業が中国市場と切り離されることは台湾の安全保障にとって吉なのか凶なのか。米国と中国の狭間でどのような選択が、最も台湾国益にとってプラスなのか、という問題だ。

 
TSMCは米中ハイテク戦争の狭間にあって、世界ファウンドリ市場の6割を占め、今にいたるまで中国市場から撤退するか否かについては曖昧な態度を貫いているその主な理由は、半導体産業で中国との関係を維持していくことが、台湾の国家安全にプラスになる、という発想がひとつある

 TSMCの会長で創業者の張忠謀が先日、米国CBSのテレビ番組「60ミニッツ」に出演した際、その発言が世界の注目を集めた。

 司会者のレスリー・スタアが「台湾人が半導体産業に、いわゆる『シリコンの盾』としての影響力に期待するのはなぜなのか。なぜ、半導体産業によって習近平の台湾武力侵攻を防げられると思うのか?」と質問した。すると
張忠謀は「TSMCは世界各国に半導体を提供しており、もし“誰か(中国)”が経済的な幸福を主要な目標とするならば、武力侵攻をすまいと自己抑制するだろう」と語った。

 スタアがさらに「しかし、もしその誰かの主要目標が
台湾を侵攻し“一つの中国”の下、TSMCを国有化することであったらどうだろう?」と問いかけると張忠謀は率直に言った。「もし戦争が起きれば、すべてが破壊されるだろう。すべてが滅亡する」

 世界のハイテク産業を支える半導体の大量生産を請け負う
TSMCなどの企業が台湾に存在することは、米国が台湾を絶対に中国に渡したくない主要な理由の1つである。

 台湾は米国との経済的結びつきを強化することで、断交後も台湾関係法という形で台湾の安全を保障することを米国に認めさせた。その考え方は、近年、台湾が半導体産業の中心となることでさらに強化されている。
台湾が中国に統一され、TSMCはじめ台湾の半導体産業が中国の手に落ちれば、米中ハイテク戦争の形勢は米国不利に陥るかもしれない「シリコンの盾」は、米国に台湾を守らせるという意味では、間違いなく有効だ

優先すべきは経済利益より国家安全
 
だが一方で台湾に米中ハイテク戦争の行方のカギとなる半導体産業があるからこそ、習近平はリスクを冒しても台湾統一を急ごうとしている、という見方もある

 まもなく北京で始まる第20回中国共産党大会で、仮に習近平体制が継続する形となれば、習近平は自分の指導基盤を固めるために台湾統一のタイムリミットを宣言するかもしれない。そうなれば、台湾海峡有事はかつてないほど現実味のある危機として認識されるようになるだろう。台湾に成熟した半導体産業がなければ、習近平は焦って台湾を手に入れようと考えなかったかもしれない。

 台湾の半導体産業をつぶせば、世界の産業は混乱に陥る。それを避けるには、台湾は大人しく、中国の特別行政区になれ、と言う人も出てくる。「シリコンの盾」というより、狙われる弱点、グローバル経済のアキレス腱と言うこともできるだろう。

 
張忠謀のロジックの前提は、中国が経済発展を重視していれば、台湾を戦争に巻き込まない、ということだが、習近平が、まさにそういう経済重視の考えがあるのか、という点が大いに問題だ。戦争をせずに一緒に金儲けしよう、と商人に呼び掛ければうまくいくが、相手が根っからの盗賊だったら? 平和に商売するように見せかけて近づき、最終的にはすべてを奪った上で殺害するかもしれない。

 中国市場に巨額投資しているEVメーカー大手
テスラのイーロン・マスクCEOは、英フィナンシャル・タイムズ紙で、「(台湾有事が起きれば)影響は半導体サプライチェーンのみならず世界経済全体の3割が失われる」などと発言し、(そうした戦争を避けるために)「台湾は中国の特別行政区にすべきだ」と主張し、物議をかもした。だが、この発言の背後にあるのは、経済のグローバリズムでは、軍事力をもった覇権国家の侵略意欲を食い止めることはできず、「シリコンの盾」など幻想である、という真理だ。

 となると、
国家にとって最大の優先事項は経済利益ではなく軍事的優位を守り切ることであり米国が軍事的優位を守るために半導体産業にそれなりの犠牲を強いることは妥当な判断、ということになる

 米中対立の狭間にある台湾半導体産業の苦境は、日本の企業も大いに共感するところがあろう。だが、すでに答えは導き出されている。
米中対立によって半導体産業チェーンの組み換えが進むならば、日本にとっても「シリコンの盾」を取り戻すチャンスであるが、その前提条件としては、民間企業も技術者も、経済利益より国家安全を優先させた決断が求められるということだろう。

 ニューヨーク・タイムズは、米政府高官のコメントを引用する形で、大部分の輸出許可証申請の基準は極めて厳しく、同時に米国は同盟国の関連企業に対して輸出された商品についても逐次評価し、それらハイテク製品が中国に利用されるのを防ぐつもりだ、としていたのだそうです。

 ブルームバーグによれば、米国は中国半導体産業を14nm以下の先端半導体市場から徹底的に排除しようというつもりらしいと、福島さん。
 「米商務省先端コンピューター半導体に関する新たな対中輸出管理製造」のガイドラインによれば、米国は半導体技術、設備の対中輸出を制限するほか、米国企業と個人に対して許可なく中国の施設で集積回路の開発と生産に参与してはならない、としているのだそうです。

 中国半導体産業界はすでに氷河期を迎えつつある。そこに今回のような米国の追加規制を受けて、先端半導体や製造設備などの禁輸が徹底されれば、比較的ローテク半導体を使用する中国の自動車、ロボット、家電、消費電子産業までも大きな影響を受けるだろう。これら製品は市場シェア50%以上が中国製なので、世界中で製品の欠乏が起きるかもしれない。痛みに耐えねばならないのは中国企業だけでなく、米国企業も含めた世界の関連業界であり、消費者たちだろうと、福島さん。

 米国企業も中国企業も、高性能コンピュータの半導体チップのほとんどをTSMCに委託製造している。米国がスーパーコンピュータ関連半導体市場を囲い込み、中国企業をデカップリングしていくとなると、中国が将来的に伸びしろがある市場だととみて積極的に投資してきたTSMCにとっても大きな痛手となる。

 米ヴァサー大学の周宇教授は米メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「これ(米国の今回の措置)は中国のハイテク産業だけでなく、国際的な半導体産業チェーン全体にも損害を与え、そして半導体産業グローバルチェーンの組み換え、再構築を引き起こすだろう」と指摘している。
 その再構築の鍵を握るのは、当然TSMCをはじめとする台湾半導体産業の今後の動向となろうと、福島さん。
 ここで気になるのが、台湾の安全保障とTSMCを中心とする台湾の半導体産業の関係性だ。つまりTSMCはじめ台湾の半導体産業が中国市場と切り離されることは台湾の安全保障にとって吉なのか凶なのか。米国と中国の狭間でどのような選択が、最も台湾国益にとってプラスなのか、という問題だと。

 TSMCは米中ハイテク戦争の狭間にあって、世界ファウンドリ市場の6割を占め、今にいたるまで中国市場から撤退するか否かについては曖昧な態度を貫いている。その主な理由は、半導体産業で中国との関係を維持していくことが、台湾の国家安全にプラスになる、という発想がひとつあると、福島さん。

 世界のハイテク産業を支える半導体の大量生産を請け負うTSMCなどの企業が台湾に存在することは、米国が台湾を絶対に中国に渡したくない主要な理由の1つである。
 台湾が中国に統一され、TSMCはじめ台湾の半導体産業が中国の手に落ちれば、米中ハイテク戦争の形勢は米国不利に陥るかもしれない。「シリコンの盾」は、米国に台湾を守らせるという意味では、間違いなく有効だと。

 だが一方で、台湾に米中ハイテク戦争の行方のカギとなる半導体産業があるからこそ、習近平はリスクを冒しても台湾統一を急ごうとしている、という見方もあると、福島さん。

 TSMC・張忠謀のロジックの前提は、中国が経済発展を重視していれば、台湾を戦争に巻き込まない、ということだが、習近平が、まさにそういう経済重視の考えがあるのか、という点が大いに問題だ。戦争をせずに一緒に金儲けしよう、と商人に呼び掛ければうまくいくが、相手が根っからの盗賊だったら? と。

 テスラのイーロン・マスクCEOは、英フィナンシャル・タイムズ紙で、「(台湾有事が起きれば)影響は半導体サプライチェーンのみならず世界経済全体の3割が失われる」などと発言し、(そうした戦争を避けるために)「台湾は中国の特別行政区にすべきだ」と主張し、物議をかもしたのだそうです。
 だが、この発言の背後にあるのは、経済のグローバリズムでは、軍事力をもった覇権国家の侵略意欲を食い止めることはできず、「シリコンの盾」など幻想である、という真理だと、福島さん。
 国家にとって最大の優先事項は経済利益ではなく軍事的優位を守り切ることであり、米国が軍事的優位を守るために半導体産業にそれなりの犠牲を強いることは妥当な判断、ということになると。
 米中対立によって半導体産業チェーンの組み換えが進むならば、日本にとっても「シリコンの盾」を取り戻すチャンスであるが、その前提条件としては、民間企業も技術者も、経済利益より国家安全を優先させた決断が求められるということだろうと。

 TSMCは、中国の台湾侵攻に備える意味もあるのか、日本や米国での工場建設を進めていますね。

 クマガジン「台湾の半導体大手『TSMC』がやってくる~沸騰する熊本の最前線~」 - クマロク! - NHK

 【ビジネス解読】半導体の巨人に迫る苦悩の選択 TSMC米新工場に補助金 中国事業拡大を禁じる条件 - 産経ニュース



 # 冒頭の画像は、TSMCの菊陽町の新工場建設現場




  チャノキの花
 

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