
極東開発に含まれる、北方領土と周辺の社会基盤を整備する「クリル発展計画」も縮小は避けられないのだと。
財政危機に備え原油が高い時期に輸出に伴う収入を積み立てた準備基金が、「このままでは1年で底をつく」と、シルアノブ財務相が語っているのだそうです。
余談ですが、ルーブル安も平行して進んでいる為、銀行が勧めたドル建ての住宅ローンの支払いが高騰し騒動も生じている。
ロシア 通貨安でローン3倍に、銀行に抗議の人々殺到 - エキサイトニュース
【モスクワ=緒方賢一】ロシアのプーチン政権の最重要政策である極東開発が減速している。原油価格の下落により財政事情が悪化しているためだ。極東発展省は今月、長期の開発計画の予算削減を表明し、日本が返還を求める北方領土の開発投資も減額される見通しだ。
■予算2割削減
極東発展省は今月中旬、2014~25年を対象年とした極東とバイカル湖周辺の「発展計画」に関し、第1期(14~20年)の予算を当初の3460億ルーブル(約5000億円)から2割削減する方針を打ち出した。第1期の予算は、企業誘致のために、用地の造成をはじめ電力や水の供給など基盤整備に充てる資金だ。
ロシアは「発展計画」で、日本や中国、韓国などから製造業を誘致して、極東を原材料の供給地から生産と貿易の拠点に育てようとの未来図を描いている。柱の一つが、進出企業に税を優遇し通関手続きなどを簡素化する「先進発展地区」で、15年に沿海地方やサバ共和国などの9か所を指定した。
極東発展省は本紙の取材に対し、1月中旬までに21社と「先進発展地区」への進出協定を結んだと成果を説明する。ただし多くは国内企業で、期待する外資はハバロフスクで野菜の温室栽培を始める日本のプラント大手「日揮」とシンガポール企業の2社にとどまる。
「発展計画」には、北方領土と周辺の社会基盤を整備する「クリル発展計画」も含まれる。産業を振興し人口を増やすため16年から25年までの10年で政府と民間の資金を約700億ルーブル(約1000億円)投入する計画だが、縮小は避けられない情勢だ。
■ビザ新制度も遅れ
他の事業も遅れている。ウラジオストクとその周辺を「自由港」に指定し、外国人が空港や港で8日間まで滞在できるビザを発行する法律が、15年10月に施行された。だが、経済紙「コメルサント」によると、新制度の運用手順を定めた政令がまだなく、ビザ発行用の施設も整備されていない。
足踏みの主因は財政悪化だ。ロシア政府の歳入の約半分は石油、天然ガスの輸出税と採掘税が占める。政府は原油の平均価格を1バレル=50ドルと想定し、16年の予算を組んだ。現在、原油価格は30ドル前後の水準だ。政府は昨年、すでに10%の歳出削減を決めたが、それだけでは収まりそうにない。シルアノブ財務相は16日、財政危機に備え原油が高い時期に輸出に伴う収入を積み立てた準備基金が「このままでは1年で底をつく」と述べ、危機感を示した。
平和条約と北方領土露外椙別問題と強調
【モスクワ=緒方賢一】ロシアのラブロフ外相は26日、モスクワで記者会見を開き、日本が返還を求めている北方領土に関し、「平和条約(の締結)は領土問題の解決と同義語ではない」と述べ、日本との間で進めているのは領土交渉ではないと強調した。
ロシアは北方領土について「第2次大戦の結果、ロシア(ソ連)領になった」と主張している。ラブロフ氏は会見で、「大戦の結果を認めなければ前へ進むことはできない」と述べ、原則的な立場を示した。
旧い話ですが、「クリル発展計画」には韓国企業が意欲を示しているとの話がありましたが、進展はないのですね。
北方領土の開発は韓国へ ( その他国際情勢 ) - 時の旅人Yoshipyuta - Yahoo!ブログ
極東開発がプーチン政権の最重要政策なのは、資源輸出に頼るロシア経済の構造改革と同時に、枯渇する現在の主力ガス田に代わる、北極圏や極東の資源開発も迫られていることは、再三述べてきたことですのでここでは繰り返しません。
ただでさえ、日本や韓国、中国の投資に期待したシベリアや極東開発が、原油価格の大幅下落で減速に追い込まれることは、目の前の財政悪化・国内経済減速と共に、将来への対策も遅れるダブルパンチを受けているのですね。
北方領土交渉では、ソ連時代からこれまで、両国政府間で交渉が重ねられてきました。
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北方領土交渉経緯
■日ソ共同宣言
1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名
北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて平和条約の交渉を行うという合意
■日ソ共同声明(1991年)
1991年4月海部総理とゴルバチョフ大統領により署名された。
北方四島が、平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることが初めて確認された。
日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。
■東京宣言(1993年)
1993年10月、細川総理とエリツィン大統領により署名された。
領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題と位置づけるとともに、領土問題解決のための交渉指針が示された。
また、日ソ間のすべての国際約束が、日露間で引き続き適用されることを確認した。
■クラスノヤルスク合意(1997年)
1997年11月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致。
■川奈合意(1998年)
1998年4月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致。
■イルクーツク声明(2001年)
2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された。
日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認した。
■日露行動計画(2003年)
2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された。日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認した。
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ソ連経済が苦境にあったエリツィン時代、4島返還に向けた交渉が進展したことは、諸兄がご承知の通りですが、今、まさに当時と同様の苦境に陥っているロシア経済。
日本の支援が急務なのです。それが切実な証拠が、ラブロフ外相のつよがり発言といえるでしょう。
また、大戦の結果を認めろと言いますが、それはこちらからそっくりお返しする言葉で、サンフランシスコ条約(千島列島は放棄するが、4島は日本領)をロシアも認めろとなります。それとも、両国間の、領土合意条約のポーツマス条約に立ち戻って仕切り直しするかですね。
ウクライナ進出に伴う制裁でも孤立して苦しいロシア・プーチン政権。崖っぷちに立たされる危機です。
プーチン大統領との接近が、G7へのオブザーバ参加も視野に入れて交渉が進められていますね。
対露関係では、かつてない優位(日露戦争で実質勝利した時以来?)な状況にあります。この機を捉えて、しかし焦らず、交渉を進めていただき、成果をあげていただきたい。
対韓国外交での失政続きの外務省ですが、ここは挽回のチャンスと、奮闘を期待します。
# 冒頭の画像は、通貨安でローンが3倍になり銀行に殺到する抗議の人々

政府広報(北方領土問題) - YouTube
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