映画で楽しむ世界史

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絵葉書のような「ゲーテの恋」

2011-11-30 12:19:40 | 舞台はドイツ・オーストリア
絵葉書のような「ゲーテの恋」

久しぶりのドイツ映画。ゲーテの若き日の彷徨を描いた
「若きウェルテルの悩み」の映画化と考えていいだろう。

18世紀末のドイツの雰囲気はよく出ていて、
絵葉書やプロマイド写真のような出来上がり。但し・・・それだけ。

しかしゲーテといえばシラーと並びドイツ人が誇る大文豪、ドイツの至るところに彼らの銅像がある。

彼らが煽った「シュトゥルム・ウントドランク」=疾風怒濤」の風潮は、
流行現象として「『太陽の季節』的」若者の暴走であったかもしれないが、

彼らの成長に合わせるかのようにドイツ人の国民意識覚醒に繋がり、
やがててんでばらばらのドイツは「統一」へ向かう。

と考えれば、この映画、もう少し当時の社会情勢を(フランス革命前後)、
そしてゲーテの生誕から老後までを踏まえて完成させて欲しかった。

例えば、この恋の舞台となったのは、ドイツ中西部ヴェッラーの町。

この町、田舎町なのだが素性はれっきとした帝国都市で、
神聖ローマ帝国の帝国最高法院(ウィーンの皇帝直属の最高裁判所と並ぶ権威をもつ)があり、

元来弁護士になるはずだったゲーテは、この法院で法律実務の実習をするためにここに来たのである。
実際には、実習はサボリ続けだったようだけれど。(ここは坂井栄八郎著「ドイツ歴史の旅」による)

そのほかにも、ワイマール公国での「活躍」など、
豊富な題材を単純なラブ・ストーリーにしてしまっては勿体ない。
(了)

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