映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

「ジーザス・クライスト・スーパースター」か「パッション」か

2010-12-26 11:36:13 | 舞台はトルコ・中近東

キリストの受難劇のミュージカル化

 

宗教という言葉に真面目な人は、新約聖書のクライマックス部分、キリスト最後の7日間をブロードウェイミュージカルにして演じる、あるいはそれを映画にするなんて、ほんとにいいのかしらと思ってしまうだろうが・・・。

 

 これがなかなか良く出来ている。

「裏切り者」ユダの視線を軸にし、エルサレム神殿の大司祭カイアファやローマの総督ピラトも絡ませ、ひとりの人間として神や民衆の狭間で苦悩するイエスや彼を支えるマグダマのマリアなどの姿を描く。

 全て音楽と歌のみでストーリーが進行するロックミュージカルであるが、旋律と歌詞がよくマッチしていて聴きやすい。ローマ遺跡の残る砂漠でのロケが人物の動きを浮き上がらせる。その芸術性が高く評価され、興行的にも大成功を収めた理由が分かるような気がする。

 

 このミュージカルは、当初から敬虔なクリスチャンやキリスト教根本主義者らから「聖書に忠実ではない」「神に対する冒涜だ」などと批判も受け、ブロードウェイ初日には、キリスト教やユダヤ教信徒のデモで劇場周辺は騒然となったという。

映画になってからも映画館が爆破や放火の対象にされるなどの騒ぎも起こった。しかしブロードウェイのオリジナルキャストを揃えたこの作品の評価は高く、第31回ゴールデングローブ賞作品賞にノミネートされた。日本での公開は1973年12月(リバイバル上映1984年)。

 

 

 しかし考えてみれば、キリスト教が「三位一体」を根本教義とすると言うことは・・・

その「人間部分」が人々の興味の対象になる、絵にも小説にも描かれ、劇にもなり、映画にもなり(「偉大な生涯の物語」「最後の誘惑」など)・・・といったことは当たり前。いろんな創作物の被写体になることは覚悟せねばならない。

古代、中世の長い間、その後になってもキリスト教会や王権の力でこれを抑えつけて来たが、いつまでもそうは行くまいから・・・ルネッサンス。

 

このミュージカル映画に刺激されたかどうか、メル・ギブソンがくそ真面目な・・・聖書の一言一句に忠実に、しかも原典アラム語で、映画「パッション」を作って、これまた全米で大ヒットしたと言う。しかし日本では流行らなかった。私見ではメル・ギブソンは凄惨なシーンをやりすぎで、むしろミュージカルの方が心に残る。

 


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