プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

釜石防波堤による津波被害の拡大

2014-01-04 11:55:52 | 日記
 防波堤が津波被害を拡大した、そんな事実が震災時にあったとのことです。(以下、引用・参照は『朝日新聞』)岩手県釜石市の釜石湾の入り口には、湾口防波堤が造られています。震災では同湾内(街の中心部)での被害は減らしましたが、この防波堤から反射した津波が、隣の両石湾へ到達して、両石での被害を拡大しています。

実はこの防波堤が造られる1978年当時、東北大学が、跳ね返る波の影響を模型で実験、遡上した海水が峠を越えるとの結果が出ました。地元の人はこうした被害を心配し、2011年には再調査も考えていました。しかし、震災が起こり、3月11日に両石を襲った津波で集落はほぼ壊滅状態、45人の住民が犠牲になっています。

同地区の方々は、この防波堤によって両石湾での被害が拡大したかどうか、防潮堤がなかった場合の影響はどうだったのか、県に対して検証するよう求めましたが、県は都合の悪い検証結果を隠蔽していたそうです。県が「資料は存在しない」、「湾口防波堤がない場合の影響は調べていない」と繰り返したシミュレーションでは、「両石漁港海岸の浸水面積は・・・減る」、「近くの2ヶ所の海岸でも・・・浸水面積は小さくなる」、湾口防波堤がない方が「跳ね返る『反射波』なくなる分、両石湾岸の集落の被害は減る」との結果が出ていました。

 この釜石湾口防波堤は、国の直轄事業で造られた巨大防波堤で、(世界最大の)水深63メートル、総事業費は約1,200億円もの巨額の公共事業によるものです。この「巨大防波堤」が、(減災となった場所と被害を拡大した場所などを勘案し、どれだけ)本当に津波被害を減らしたか、それとも逆に被害を拡大してしまったか、きちんとした(県はしていたけれど隠していた)検証を、すべきだと思います。

 しかしながら、国(建設省)は(両石湾など他の地域への悪影響を無視し)「市街地に波が到達するのを6分遅らせ、浸水域を減らした」として、同防波堤の再建を決め、現在(490億円掛けた)復旧工事が進んでいます。正しく、「公共工事」ありきです。実は県が2011年10月にシミュレーション結果を公表していたのですが、それは「県が沿岸に防潮堤を整備すれば、両石漁港海岸の・・・浸水面積を・・・(1ヘクタール)減らせる」というものです。

あくまで、「巨大防波堤」の再建が前提で、その必要性への疑念はありません。被害が減ったとされる市街地の方々には不満はないのでしょうが、被害が拡大した地域の方々には、(自らの生命・財産に危害の及ぶ話ですから)どうにも納得の行き難い、(何とも不公平な)防波堤の再建ではないかと思います・・・

P.S. 被災地の災害復旧事業には、「環境アセスメント」や「費用対効果」を検証するルールは当て嵌まらないそうです。勿論、そうしたルールに縛られていては、迅速な復旧・復興はなりませんから、こうした枠を外すことは大切だと思います。ただ、被災地で復興事業を手掛けるゼネコン幹部からも「震災前のものとは全然違う(例えば、防潮堤だと以前は5mだったものを15mにする)ものを大量に造るのに、こんな簡単な手続きで進めて良いのか。疑問に感じる」との声が出ています。本当に大切で必要な物は良いのですが、「復旧・復興」の名の下に、不必要な、或いは減災に寄与しないものが、野放図に造られていってはいないか懸念されます・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成26年1月4日)